上 下
16 / 24

16話

しおりを挟む
 能力が解放された私は魔物の眉間を火球で撃ち抜けるほどになっていた。
 それでも、この力でも一国を倒せるとは思えない。リリーの話は誇張されているのか。それともまだ上の段階があるのか……。
 両親兄弟が殺され知識が失われてしまった今の私には知るよしもない。

「それにしてもすごい魔法だね髪の色が変わるなんて始めてみたよ」

「身体強化の魔法なんだけど一度使うと、いつ元の髪色に戻るか分からないから躊躇したのよ」と言って少し時間を貰ったことにたいして嘘の言い訳をした。
 しばらく魔物を狩っていると、下に降りる階段が見えてきた。

「けっこう奥に来ちゃったね。そろそろ戻った方が懸命だ」
 ロルカはここは初心者が来るような場所じゃないし荷物も一杯だと自分達の背中にしょった素材を見せる。
 ロルカとホォスの背負わせた素材はもう少し余裕があるように見える。

「まだ、稼ぎが少ないわ。下に降りてみましょう」

「何言ってんだい、ソロでこれだけ稼げればすごいよ。しかも今日が初仕事なんだから。それに下に降りるのは反対だ」

「地下に行けばもっと稼げるんでしょ?」

「まあ、あんたならソロでも地下二階くらいは行けるだろうけど私は付き合わないよ。ソロ狩りなんてバカのすることだからね」

 ロルカはホォスの研修で低賃金でやっているだけであって、もし二階へ行くなら正規の料金をもらうと念を押された。
 当然正規の値段は金貨10枚だ。
 採算が絶対にとれないと言うので私は下に降りるのを諦めたその時、地下から他の探索者パーティーが上がってきた。

「おいおい、女だらけのパーティーかよ」
 下の階から5人組の粗野な男たちが現れ、私たちを見て舌舐めずりをする。
 3人は人間で残りの二人は獣人だ。

「まずい、逃げるよ」
 ロルカがそう言ったときにはすでに私たちの周りを男たちが固めてとうせんぼをしていた。

「おいおい、どこに行く気だよロルカさんよ」
 回収屋の二人獣人がナイフを抜いて私たちの逃走経路を塞ぐ。

「ヒヒヒ、リーダー、俺あの獣人の子供もらって良いでやすか?」
 人間の男がズボンの服の上から股をいじりながらこちらに来る。その手には当たり前のように剣が握られていた。

「相変わらずてめぇは幼女趣味だな。まあ良い好きにしろ俺はこの赤髪のべっぴんを相手にするからよ」

「なんなのあなたたちは」

「E級のひよッ子に名乗る名前はないが、俺の名前を叫びながらヒィヒィ言わせるために教えてやるよ。俺はC級探索者のゴンズイ様だ」

「話にならないわね、私が聞いてるのはなんで道を塞ぐのかってことよ」

「そりゃ、お前達に俺たちの下の相手をさせるためだろうが」
 ゴンズイがそう言うと周りの男達は笑いながらズボンを脱ぐ。こちらに反撃する手段がないと思っているのでしょう。
 実際武器を持っているのは私とロルカだけでしかも得物は短剣だ。

「こういう連中は殺しても罪に問われない?」

「罪に問われないがやめた方がいい、素直にしたがって可愛がってもらえば殺されないですむ可能性もある」

「そう分かったわ」

「へへへ、そうだよ命が惜しければ物分かりが良くないとな」
 私たちの会話を聞いていた男たちが観念したと思い込んで武器をしまう。

「ファイヤーブラスト」
 五本の指に火球を作りそれを男達に向かい投げつける。火球はバチバチと音を立て男達の股にぶら下がる汚いモノを粉砕した。

「っひぎゃああ」
 男達は声にならない声をあげ転げ回り地面を血で汚す。

「さて、許しを乞うなら今よ」
 私は再び指先に五つの火球を作る。

「ひゃ、ややめてくれ。魔が差したんだ許してくれ」

「それが許しを乞う姿?」

 男達は服を脱ぐと全裸になり土下座をする。この世界では全裸土下座は”全て自分が悪かった、あなたには絶対に逆らわない”と言う意味を持つ。

「良いわ立ちなさい」

「す、すみませんでした」
 頭を下げる男達に私は全力の火球を放った。
 男達は一瞬で弾け飛び死んだ。
 きっと自分も死んだと言うことすら分からないで死んだろう。
 謝らなければジワジワ殺していただけだから謝ってよかったわねと私は誰もいない空間に言葉を投げ掛けた。

 



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……

水上
恋愛
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、縁談の話を聞いて喜んでいた。 相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。 思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。 しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。 それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。 彼女と、彼女を溺愛している両親は、ヘレンこそが、ウィリアム王子にふさわしいと言い出し、とんでもない手段に出るのだった。 それは、妹のヘレンが私に成りすまして、王子に近づくというものだった。 私たちはそっくりの双子だから、確かに見た目で判断するのは難しい。 でも、そんなバカなこと、成功するはずがないがないと思っていた。 しかし、ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。 一方、私は王子を騙そうとした罪で捕らえられてしまう。 すべて、ヘレンと両親の思惑通りに事が進んでいた。 しかし、そんなヘレンの幸せは、いつまでも続くことはなかった。 彼女は幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。 ※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

婚約破棄が成立したので遠慮はやめます

カレイ
恋愛
 婚約破棄を喰らった侯爵令嬢が、それを逆手に遠慮をやめ、思ったことをそのまま口に出していく話。

処理中です...