上 下
6 / 24

6話

しおりを挟む
 人々の行き交う道をリリーにつれられていくと、一軒の古着屋に連れてこられた。
「古着?」

「うん、どうせダンジョンじゃ汚れるしすぐ汚くなるからね新品はお金の無駄よ」
 そう言うと一枚の古着を私に当てて寸法を見る。
 既製品おしきせは身体のサイズを計らないんだねと聞くと、シャツは大きめに作ってあるので試着する必要はないのだと言う。
 シャツを七点ほど選び店番に渡すと全部で銅貨7枚だった。
 そのままリリーにつれられて行くと既製品を売っている店に着いた。
 そこではショートパンツを三つ買わされた。さらに他の店でバッグやダンジョンで必要な物を買うと、その足で七剣教会へと向かった。

「ようこそ迷えるモグラ達よ今日はどういったご用で?」
 神父様の言葉の意味がこの町に来てようやく分かった。ずっと疑問だったんです、なんでモグラなのかなって。
 ダンジョンに潜るからモグラなんですね。

 私が一人で納得しているとリリーがさっさと手続きをしていく。

「では、こちらへ」
 入信持参金を持っていくと教会の七剣十字の前で神父は私を跪かさせる。
 真言を唱えると七剣十字から光が私に注がれ体を包む。

「怖がることはありません、あなたに加護を与えて下さっているのです」

 光が消えると七剣十字の前にペンダントタグが現れ文字が刻まれる。
 そこには私の名前とランクが刻まれている。

 私の偽名は看破されること無くスティアでランクはFランク。
 そのペンダントタグを神父から渡され、私は探索者になった。
 このペンダントタグ は七剣教会でお金の出し入れや実績を記録する物で本人以外は使用できないのだと言う。

「あなたの働きに神のご加護があらんことを」
 私たちは一礼をして教会の外に出た。
 ちなみに素材買い取りは教会の後ろにある建物で行われる。
 リリーはそこに私を連れて行くと受付や待合所を案内してくれた。
 待合所ではあのモヒカンたちが居たので挨拶をすると、みっともない声を出して驚いていた。

「あんた達、食事の代金払ってないでしょ!」
 リリーが無銭飲食をした三人の男に怒る。

「ああ、すまないお金あるとお思ったんだが、どこがですられたみたいなんだ。すまねぇ」

「まあ、いいけど。ツケておくからちゃんと一言いってよね」

「ああ、悪い……」

「あんたら、ちゃんとお金は払いなさいよね」
 私がそう言うと「火で燃やさないでぇ!」と言ってブルブルと震えて奥に逃げて行った。
 
「スティア、火ってなに?」

「これのこと」
 私が指から火を出すと、リリーはすごい形相で私を奥へと引っ張った。

「それを誰かに見せた?」

「この町に来てからだと、あのバカ三人とたぶんローブを着た男だけよ」

「あなたのことをアルツハイゼン王国の者が探してるわ」
 リリーの口から出た言葉に私の頭は疑問符で埋め尽くされた。
 バルトブルグ王国なら分からなくもない。だけど親戚縁者もいないアルツハイゼン王国がなぜ?
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……

水上
恋愛
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、縁談の話を聞いて喜んでいた。 相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。 思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。 しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。 それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。 彼女と、彼女を溺愛している両親は、ヘレンこそが、ウィリアム王子にふさわしいと言い出し、とんでもない手段に出るのだった。 それは、妹のヘレンが私に成りすまして、王子に近づくというものだった。 私たちはそっくりの双子だから、確かに見た目で判断するのは難しい。 でも、そんなバカなこと、成功するはずがないがないと思っていた。 しかし、ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。 一方、私は王子を騙そうとした罪で捕らえられてしまう。 すべて、ヘレンと両親の思惑通りに事が進んでいた。 しかし、そんなヘレンの幸せは、いつまでも続くことはなかった。 彼女は幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。 ※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

婚約破棄が成立したので遠慮はやめます

カレイ
恋愛
 婚約破棄を喰らった侯爵令嬢が、それを逆手に遠慮をやめ、思ったことをそのまま口に出していく話。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

処理中です...