タイトル: 「鏡の迷宮」

第九章：罠と疑惑

迷宮の深部に近づくにつれ、試練はますます過酷になっていった。次の部屋にたどり着いた一行は、広間の中央に置かれた円形の台座を目にする。その周囲には文字が刻まれており、ひとつの意味深な問いが浮かび上がっていた。

「誰が最も罪深いか。」

「罪深い？」遥がつぶやく。

蓮が文字を読み解く。「ここでは、互いの過去を暴露し、最も罪を重ねた者を選ばなければならないようだ。」

その言葉に全員が凍り付いた。過去をさらけ出し、仲間の中から「最も罪深い者」を選ぶ……それは残酷な試練だった。

「これは罠だ。」陸が低い声で言う。「こんなものに答えれば、内部崩壊を招くだけだ。」

だが、選択を拒めば迷宮から進むことはできない。追い詰められた状況の中、蓮が意を決して語り始める。

「……俺は、研究のために嘘をついたことがある。歴史資料を改ざんして、論文を認めさせた。罪だと言われればその通りだ。」

次に陸が口を開いた。「俺は刑事だが、過去に犯人をでっち上げたことがある。結果的に真犯人が見つかったから良かったが、正しい行いだったとは思っていない。」

重い沈黙が続く中、茉莉が震える声で語り出す。「私は……この村に災いをもたらした張本人。鏡を持ち出し、村を捨てた。それが私の罪。」

最後に千鶴が口を開いた。「私は……姉を見捨てた。助けを呼ぶ声を聞こえないふりをして、逃げたんだ……」

全員が自らの罪を告白し終えた時、蓮が声を絞り出した。「誰か一人を選ぶなんて、無理だ……」

だが、その瞬間、広間が揺れ始める。文字が赤く光り、台座の上に新たな言葉が浮かび上がる。

「罪深い者は己を知る。」

そして、もうひとつの欠けたピースが台座の中央に現れる。だがそのピースを掴もうとした瞬間、遥が突如叫んだ。

「待って！罠かもしれない！」

だが、声は届かず、陸がピースに触れた瞬間、部屋全体が暗転。何かが蠢く気配が漂い始めた。