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第ニ章

第32話 防衛準備

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 俺は防衛の準備のため、行動を開始した。

 現在俺のレベルは23になっている。ヨゾラさんは20、ユリアさんは21だ。

 今の俺のステータスはこうだ。

ーーーーー
名前 ユージ
種族 人間Lv23
年齢 19
職業 死霊術士Lv23
HP 792/792
MP 2448/2448
身体能力 32
物理攻撃 32
物理防御 32
魔法攻撃 308
魔法防御 308
ユニークスキル
 死体収納
スキル
 配下作成
 配下解放
 配下回復
 配下探知
 配下情報
配下
 上級アンデッド 144
ーーーーー

 どうやら19歳になったようだ。誕生日はこの世界に来た日らしい。日本にいたころの誕生日ではない。

 あとはやはりMPがぐんぐん増えている。まだまだ配下を増やしても余裕だ。
 魔法攻撃と魔法防御も結構上がっている。魔法攻撃が上がると配下の最大HPと配下回復の回復量が増えるので結構効果がある。

 しかし物理防御が低いのが不安だ。物理攻撃に弱すぎる。魔法防御との差が10倍近くある。やはり職業の補正が無いとかなり不利なようだ。俺も近接職をなにか覚えた方が良い気がするのだが、俺がすぐ覚えられそうな近接職は誰も知らないらしい。年単位の修行をするしか無いようだ。そんなのやってられん。面倒すぎる。

 逆にMPが多いので魔法を覚えて何とかならないかと思い、ユリアさんに魔法の覚え方を聞いてみた。
 魔法使いの職業は、生まれつき以外では、魔法と魔法が起こす現象について勉強してから、魔導書を使って長期間練習したうえで、魔法使いに色々な魔法を近くでたくさん見せてもらうと習得できるそうだ。
 魔法使いは高レベルになると魔導書を作れるようになるが、作るのが難しく非常に貴重なので、普通は手に入らない。それに魔法を見せてもらう必要もあるため、魔法使いになるためには、魔導書を持っている高レベルの魔法使いに弟子入りする必要があるそうだ。魔導書は師匠に貸してもらったり受け継いだりするそうだ。

 うん。予想はしていたが無理だな。

 ユリアさんの師匠は親でもう亡くなっていて、ユリアさんは、例のフレンドリーファイアでやらかしてしまい村を追い出され、その時に親の魔導書は村に取り上げられてしまったので、今は持っていないそうだ。 ・・・重い話だ。

 ちなみにこの世界の魔法は念じるだけで発動する。詠唱などは必要ない。詠唱が必要だったらしゃべれない魔物は魔法を使えないしな。念じると魔法陣が出て、実際に発動するまではタイムラグというか溜め時間がある。溜め時間の長さは魔法によって結構違う。強力な魔法ほど長いことが多いが、早くて強い場合もあるのでまちまちだ。
 敵を狙う必要がある魔法は、発動するまで狙い続ける必要があるので、配下作成のように同時に複数発動はできない。狙っている間に、狙うのを止めたり攻撃をうけて転倒したりすればキャンセルされるので、出が早い魔法や狙う必要のない魔法以外は近接戦闘では使いにくい。
 ヨゾラさんは攻撃されても微動だにせず発動できるので、接近戦でも発動が遅い魔法を使えるけどな。


  それとレベル20で新しくスキルを覚えた。

ーーーーー
配下情報 消費MP1
 配下の一覧や現在のステータスを見ることができる
ーーーーー

 ようやく魔物配下のステータスやスキルが分かった。
 魔物配下のステータスを見て思ったのが、レベルが低いということだ。あとほぼ職業を持っていない。ステータスはそこそこ高い。生まれつき強い感じなのだろう。
 だいたいの魔物はレベル1~5で職業無しだ。レベルは同格以上を殺さないと上がらないので、意図的にレベル上げをしなければこんなものなのだろう。自然に生きていたら同格以上と戦うのは縄張り争いくらいなのかもしれない。普通は格下を狩るか格上に狩られるかだけだしな。

 最高戦力のノワリンは種族レベル8で戦士レベル1の職業を持っていた。アサルトブラックパンサーという種族らしい。かっこいいな。
 持っていたスキルは、

暗視
気配感知
無音移動
バックスタブ
再生
死体喰い
身体強化

 という感じだ。後ろから奇襲するスキルとアンデッドスキルと最後の身体強化は戦士の初期スキルらしい。
 どうやら戦士は最近覚えたようだ。戦士は色々な所をまわって色々な魔物を近接で倒すと覚えるらしいので、野営中や邪魔な魔物がいる時に色々倒していたから覚えたのだろう。配下にする前にも他から移動してきたみたいだったから結構色々な魔物を倒したことがあるのかもしれない。
 身体強化はMPを消費して身体能力を2割くらい上げるスキルだ。割合上昇なので強くなってもずっと使える良スキルだそうだ。ノワリンはさらに強くなっていたらしい。

 他に職業を持っている魔物は、馬のヨカゼが「馬車馬」、つのっちが「ペット」の職業を持っていた。
 ヨカゼは馬車馬のように働かさせられていたんだろう。つのっちはかわいがりすぎたようだ。 ・・・戦闘には関係ないからどうでもいいな。


 そして最近気づいたのだが、なんとギルバーンが職業を習得していた。

 それは詐欺師だ。

 意図的に多くの人を騙すと習得するらしい。
 全然出していなかったので気づくのが遅れた。

 ギルバーンは俺の指示で死霊術士のフリをした。そして現在ギルバーンは、レイライン王国で死霊術士として指名手配されていて、多くの人がギルバーンは死霊術士だと信じている。つまり騙されている。条件を満たしたわけだ。

 俺と違い多くの目撃者がいるギルバーンは噂も広がっていて、このレバニールの町にも噂が聞こえてきている。
 噂の内容は、

 強大な力を持つ闇の王ギルバーンが、多くのアンデッドを引き連れ貴族の城を襲撃した。そして多くの騎士や兵士を強力な魔法で消し飛ばし、城に住む貴族を血祭にあげた。

 というものだ。うん。全然違うような半分あっているような、いい感じに尾ヒレがつきまくっているな。目撃者が結構多いから、目撃者が一部肯定するだけでも、割と信じてしまうのだろう。

 ちなみに俺の噂は、弟子の死霊術士を引き連れているらしいというものだ。名前は伝わっていない。俺はギルバーンの弟子になったようだ。オマケ扱いだ。
 一緒に指名手配されていても俺はほぼ目撃者がいないから、噂にもなりにくいのだろう。侯爵家も俺とギルバーンの関係は知らないから、特に否定もしないだろうしな。

 それと俺はレイライン王国では、黒髪黒目の死んだ目をした男として指名手配されている。
 他に死んだ目の日本人がいたら捕まってしまうな。勘違いで捕まった人がいないか心配だ。まあ普通の職業ならユニークスキルがバレるだけで殺されたりはしないだろう。国や貴族に強制就職させられるだけだな。それも嫌かもしれんが。

 ギルバーンが覚えた詐欺師は、詐欺の幻というスキルを持っていて、騙して信じ込ませた内容の幻影を見せれるらしい。試しにゾンビの幻影を出させたが、透明なモヤが出るだけだった。騙されている人にはゾンビに見えるらしいが、騙されている人がいないので分からなかった。敵が来たら使わせてみよう。
 詐欺師はレベルを上げるとステータス偽装も覚えるらしい。ギルバーンは俺の代わりにやられる役なので、誰かにやられたら、ステータスを偽装して死んだフリさせよう。

 ただ詐欺師は戦闘力は無いし、言葉が通じない魔物は騙せないので、小柄で弱いギルバーンではレベル上げは難しいそうだ。
 しかしスキルを使いまくると職業レベルは上がるらしいので、スキルを24時間使い続けてレベル上げをするよう指示した。普通はMPが足りないが、死体を食べれば回復する。ゴブリンの死体が大量に余っているので、ゴブリンを食べながらスキルを使い続ければレベルが上がるだろう。

 普通はスキルを毎日使っても年1くらいしかレベルが上がらないらしいが、MPを回復しながら24時間使い続ければもっと早いだろう。週1くらいで上がるかもしれない。いやアンデッドはレベルが上がりにくいんだったな。でもそれでも低レベルのうちは月1くらいはいけるかもしれない。

 おっさんがゴブリンを食べながらモヤを出し続ける。
 酷い絵面だ。見たくないので倉庫裏でやれ。

 しかしスキルを使いまくる訓練はアンデッドに向いているかもしれない。暇なやつにはやらせよう。配下達が倒したゴブリンも家の近くに捨てると臭いので俺が収納しているから大量にある。ゴブリンが消費できてちょうどいい。見た目は酷いが。

 仲間の二人が狂人を見るような目でこちらを見ていた。
 いや違うんだよ。レベル上げなんだよ。俺達もよくやってるよね。それと同じだよ。誤解しないでくれよ。

 説明しても微妙な表情だ。なぜだ。


 そして防衛準備にあたり、騎士団長達から意見があった。

 それは組織や指揮命令系統の明確化だ。

 現在配下達には、俺の安全を守れとか俺のために働けとか、フワッとした命令を全員にしていて、細かい命令は思いついたら個別にしている感じだ。
 騎士や兵士は、生前の経験や知識があるので、組織として行動した方が良いことを知っているため、自主的に命令したり従ったりしているが、盗賊や冒険者だった配下たちはそういう知識がなく自己判断で行動する。そのため、騎士や執事が命じてもこっちの方が良いと言って従わないこともあるそうだ。俺が特に上下関係は命じていないからだ。
 アンデッドは演技以外で怒らないので喧嘩になったりはせず、軽く話だけしてすぐどちらかが納得するか諦めるかするそうだ。なので魔物から防衛するだけなら大した問題にはなっていなかった。しかし今後の相手は人間の刺客だ。
 そして魔物達は、配下は仲間だという認識はあるから共闘はするが、俺がこいつに従えと言わないかぎり騎士達の命令にはあまり従わない。

 これでは防衛にあたって組織的な良い動きはできないので、組織の上下関係を明確に決めて従うよう配下全員に命令した方が良いそうだ。
 まあ魔物は組織を理解できないだろうが、野生動物レベルの上下関係は一応理解できる。従うよう言っておけば戦闘や移動関係の命令は理解できる。そうすれば連携できるし、騎士の指揮スキルで強化できるというわけだ。

 今の俺の配下はこんな感じだ。

戦闘員
黒豹 1(ノワリン)
騎士 9(騎士団長、副団長、レオス)
鉄仮面 3(アックス、青髪、ジミー)
兵士 22
盗賊 4
諜報員 1
魔の森の魔物 32
オーク 37
亀 10
計 122

非戦闘員
領主 1(侯爵)
執事 2(執事長、若い執事)
大工 1
詐欺師 1(ギルバーン)
無職 13(荷物持ち、ATM君、料理解体係、農家軍団)
オーク 4(馬車)
その他 3(つのっち、グレイ、ヨカゼ)
計 22

合計 144


 さっそく騎士団長や執事長達に組織案を作ってもらい、配下全員に命令した。
 まず全体のトップが当然俺。俺の直属にノワリン、鉄仮面、諜報員、ギルバーンを配置する。
 戦闘隊の隊長が騎士団長、副長が副団長、その下に騎士、兵士、盗賊、魔物の順だ。
 内政隊の隊長が侯爵、副長が執事長、その下に若い執事、大工、無職の順だ。

 仲間の二人は指揮命令系統に組み込むと逆に混乱しそうなので護衛対象兼友軍扱いだ。
 まあ基本これまでどおり個別に命令もするけどな。


 そして、とりあえず塀と魔物の壁を優先して準備するよう指示した。

 いつ来るか分からない襲撃をじっと待っていても仕方ないので、俺達は普段通りレベル上げと配下集めを行うことにした。戦力アップは重要だからな。

 そしてしばらくレベル上げや配下集めと、同居によるキャッキャウフフなイベントをこなした。
 いや嘘だ。キャッキャウフフというほどのイベントは無かった。ちょっとラフな格好の二人に目がいったり、見えそうで見えない瞬間があったりしただけだ。
 そんなことでも嬉しくなってしまう残念な男のサガを久々に再確認した。若返ったせいだ。きっとそうだ。
 二人は多分俺の視線に気づいただろうが、男冒険者どもに比べればかわいいものなのか、しょうがないわね的な感じのようだ。


 そんなこんなで塀と魔物の壁が完成した。これで一応防衛準備は整ったはずだ。
 そろそろ刺客が来てもおかしくない時期だ。油断せずに気を引き締めよう。


 近づいている不穏な気配とは裏腹に、森は暖かな春の陽気に包まれていた。
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