集団転移ですよ。

楽しい準備

　僕はグレーのドームテントにしてナオは同じテントのキャメル色だ。理由は自立式だから。自立式だからなに？って思うよね？でもね、自立式ならそのテントが入れ物として捉えてもらえるもので、テントの中に物を入れたまましまえばアイテム数が稼げるのだ。そう！あのバグのあるアイテムバッグ！最大限使って、更には一々組み立てる手間も省けるという利点があるのです！

　「じゃあ、ここにテーブル置いて～マットはここで～、着替えの袋はここ。」

　今僕らは買い込んできたものを部屋で組み立てたテントに配置している。大きさは僕らは2人が伸び伸び寝れるくらいの幅だ。そしてこちらの人間が使うのが前提で作られた物なので高さも十分ある。
　……ええ、立てるんです。準備運動出来るくらいです。だから小さなちゃぶ台、クッション、寝る為のマット、カラーボックス等がある。

　え？急に家具あるだろう？ええ、有ります。だって普通に見覚えのあるカラーボックス980円（税なし）が売ってたんだもん。色々便利だから買うよね。一番下にはゴミ箱用の箱を入れて真ん中には着替えとタオル。上は懐中電灯やナイフを。
　配置が済んで一度外から見るとだいぶ余裕がある。このあともう一度出て絨毯と簡易釜戸を買って来るのだけど、全部あの面白本屋紛いのお店で買ったからお金にも余裕が有るのでもう少し何かあっても良いかも？

　そんな事を思ってしまった結果、冒険とは何でしょうか？と首を傾げたくなる物が置かれてしまった。寝るのが大好きなナオのテントにはフカフカの抱き枕（シャチの縫いぐるみともいう。）僕のテントには座椅子と編み物用具一式。……後悔はない。


　「なかなか良いテントだな。」

　その日の夜、泊まりにきたサイールがまだ出しっぱなしにしてあったテントを見てそう言ってくれた。そしてペロッと入り口の垂れ幕を捲ると…黙ってしまった。

　「いや、リラックスも必要かなぁ～って思って…本当はお布団入れようとも思ったんだけど、汚れも気になって……。」

　冒険中に使うには快適性が高いかと思って言い訳をゴニョゴニョ言ってたんだけどよく考えたらサイール達が用意してくれたこの間のテントの方が段違いに快適性特化だったと思い出した。
　そしてサイールがそっと置いてくれたのは魔石内蔵型の照明！

　「暗いと目を悪くする」って言いながらテントの中様と外様に傘のついたトーチ型？の照明を数個くれた。

　「え、でも」と僕は“今回の用意は自分でする事”というお約束事を気にして呟いたけどサイールが柔らかく小さく「俺はプレゼントを渡しただけだ。」と笑ったので最大限に利用させてもらう事にした。