集団転移ですよ。

休憩室での会話

「なんだか突っ込みどころ満載で質問どころじゃなかったでしょ？」

　買ってきたポップコーンキャラメル味に手を突っ込みながら早瀬君が笑う。自分もそうだったんだろうね。因みに早瀬君の赤ちゃんは保育所にお預かりだって。僕達がこの世界になれるまで早瀬君はアドバイザーとして通ってくれるのでその間は優先的に保育所に入れるらしい。なんか福利厚生が社会に根付いてる？

「街並みというか、店の外観と業種があってない気がして違和感すごいけどいろんな店があって便利そうだね。そうだ、コンビニはあるの？」

　そういえばコンビニだけは見てないな。

「あー、コンビニはあるけど24時間やってないんだ。夜は酒場が開いてるからそっちだね。酒場でも大抵の物は手に入るよ。」

「お菓子も？」

「お弁当やティッシュなんかも？」

「ある。でもお菓子はお皿で貰うしジュースは水筒に入れてもらう。因みにティッシュはないよ超高級品。普通は布で代用だから。」

　これに僕らは驚いたけど、考えてみたらプラスチック製品は僕らが持ち込んだものしかないのでそうなるらしい。

「あ、今持ってる水筒やペットボトルは貴重品になるよ。お弁当箱や雨ガッパも。石油製品は無いから。」

　……そうなんだ……それもそうか。え、でも困るよね？僕らの回りは石油精製だらけだよ？

「うんうん。服もストレッチタイプは無いからジャージとかはもう替えがきかないよ。」

　だからこういう綿素材とか織物製品ね。と自分の着てる服をつまんで見せてくれる。一緒にいても窮屈そうとは思わなかったから気づかなかった。でもある程度は生地の織り方でなんとかなるか？ほら編み物でよくあるゴム編みとか。

「でもそんなに困らないよ？魔法が存在してるから。」

　そうだ！魔法！魅惑ファンタジーな世界！僕らの意識は一瞬にして魔法にもっていかれた。

「あ、二人ともいきなり目が輝いた。」

　ケラケラ笑う早瀬君は、やっぱり魔法は楽しみだよねと同意してくれる。来週からは午後に魔法の授業が始まるのだ。……と一緒に高校の一般教養も午前にあるのだが。

「それにしても、異世界に来ても数学とか……。」

　ナオのぼやきは生徒全員のぼやきだ。

「でも英語、現代社会、体育はないよ？」

　そう、もう英語は必要ない。何故なら、僕らには全て翻訳されているから！翻訳されて見えたり聞こえたりしてるのでもう必要ないのだ。そして現代社会は異世界にいることで異世界の常識や歴史を知る方を優先された。体育は……この社会は体力勝負の社会とだけ伝えられた。つまり生きるだけで自然と体が鍛えられると。
　はぁ…とため息が漏れた。

「大丈夫だよ～、体力をカバーする魔法を覚えれば～。二人とも風の資質あったよね？風魔法で体を浮かせて動けば楽になるよ。」

　聞けば早瀬君が馬に自分で跨がれるのは風魔法で体を持ち上げているから、赤ちゃんを長時間抱っこできるのも赤ちゃんを浮かせる事もあるからだとか。

「まぁ二人とも魔法は本気で覚えた方が良いよ。」

　ん？早瀬君の声が真剣な声色になった？