SSSランクの異世界料理人〜美味ければ美味いほど強くなる〜

5話 岸 彰人

 男の名前は岸きし 彰人あきと。

 彼が料理の才能を開花させたのは小学五年生の頃だった。

 家庭科の調理実習で作った鮭のムニエルを食べた校長は彰人の才能に目をつけ、知り合いの料理人に紹介した。



「君が彰人くんだね。」

「はい。」

「校長先生が君の料理が素晴らしいと言うから、今日は作ってもらってもいいかい？」

「わかりました。」



 彰人は鮭のムニエルを作った。


 それを食べた料理人は彰人が高校生になったと同時ににシェフを引退した。

 そして、彰人はその引退と同時にシェフとなった。





「ミジュダン三つ星のレストランのシェフの君が引退とはね……。」

「そんなにガッカリしないでください。彰人の料理を食べたあの日から今日という日を一番待ち望んでいたのは私なのですから。」



 引退したシェフの名前は熊田くまだ 達郎たつろう。10代の頃から二つ星のフレンチのレストランのスーシェフ(副料理長)を任されたまさに料理界に天才児だった。

 しかし、そこから20年弱、二つ星から成長できずにいた。

 だが、彰人の料理を食べたその年に達郎は三つ星となった。あの時に口にした料理を追いかけていたら三つ星になれたと達郎は言う。



「彰人、あいつは天才です。」

「ほぉ、天才児と呼ばれた君が天才というのか。いやね、私も天才とは思うものの、君との差がわからないのだが、彰人くんは何が優れているのかね。」

「彼の食材に対するアプローチは天才で変態的なのです。」

「アプローチというと…。」


 彰人は食材の声を聞いているかのように、その食材を見極めて、寸分の間違いもなく調理し食材のポテンシャルを限界まで上げることができるとのことだ。



「つまり、彼にはセオリーというものが存在しない。食材によって、彰人は調理法を変えるため、彼の調理は1度だって同じだったことがない。そんな化け物が目の前に現れたんだから、引退しない方がおかしいじゃないですか。」

「それほどまでだったのか。」

「彼は世界を変えますよ。」