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07.すれ違う二人の心と狂乱の終焉
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ーー明け方になり、窓から差し込む柔らかい光で、智宏は目を覚ました。
急いで隣を見たが、そこには四肢を拘束されて、尿道にブジーを入れられたままの春太がいる。自分自身も裸のままベッドに拘束されていると理解した智宏は、なんとか拘束具を外そうとしたが、ビクともしない。
「……夢じゃない」
少し動いた智宏は、後孔への違和感を覚えた。何かが挿れられていると分かると、恐怖心が心の中を支配し始めた。しかし、催淫剤がまだ効いた状態では、その違和感さえ少し気持ちがいいものとして脳内が処理しようとしてしまう。頭を上げて下半身を見れば、陰茎も硬く勃った状態だった。
昨日たくさん射精させられたばかりだというのに、催淫剤のせいで精巣は活発に動き、精子の量産を始めている。この状態のまま、また富田や蕪木が来てしまったら、昨日の晩のように男たちに好き勝手にされてしまう。そう思った智宏は、焦りを感じながら春太に声を掛けた。
「は、……春太、……春太!」
春太はかなり深く眠っているらしく、何度か呼んだが反応がない。焦った智宏はさらに呼びかけを続けると、10分ほどして春太が目を覚ました。
「……ん」
ぼんやりと開いた瞳は潤んでおり、赤くなった頬でこちらを見られると、智宏は昨日の晩の春太とのセックスを思い出してしまった。春太の後孔に入れながら乳首を揉まれた、あの感覚。それはゾクゾクとした快感を躯体に這わせ、智宏の陰茎はまたピクピクと反応を始めた。
「……っ、……」
「……智宏?」
「春太……、起きた?」
智宏はできるだけ性欲を抑え込み、春太との会話に集中する。
「……うん」
春太も身体の異常には気付いているが、智宏と違って昨日一回も射精させてもらえていないため、智宏よりも性を欲していた。
「……、春太……こんなバイトだって知らなくて、誘ってごめん……」
智宏の目に涙がジワリと浮かんだ。
「智宏……、泣かないで……僕は、怒ってないよ……」
「……春太、本当にごめん……」
「あのね……。蕪木さんが言ってたんだけど……、仕事が終わって智宏と話して、二人とも帰りたいって言うのなら考えてあげるって言ってた……」
「えっ、じゃあ、二人で帰りたいって言おう!」
「……」
春太が黙る。智宏は黙り込んでしまった春太に、どう声をかけたらいいのか迷ったが、再度声を掛けた。
「……春太、二人で一緒に帰ろう?」
「ぼ……僕、帰りたくない……」
智宏は春太の言葉に目を丸くした。何故あんなに酷いことをされて、帰りたくないと言うのか、全く理解できなかった。
「……な、……なん、で……」
「……ごめんな……さい、僕……、智宏が……好きなんだ……。こんなの……気持ち悪いよね……。でも、僕……ずっと智宏に抱かれたかったから、昨日……嬉しかった……。だけど、智宏は……、こういうの嫌いだと思うし……。気持ち悪い僕は、ここに残る…………」
ひっくひっくと肩を震わせながら春太が泣く。
言葉を失った智宏は、何も言い返せず、なんと返事をしたらいいのかを必死に考える。しかし、その沈黙の間に春太はもっと強く泣き出した。
「……無理に、返事しなくて、いい……、から。……僕が頭がおかしいだけ、だから……」
そう言うと、春太は何度も嗚咽しながらポロポロと涙を零して向こうを向いてしまった。突然ぶつけられた感情に戸惑い、自分が春太のことをどう思っているのかさえ分からなくなった。いつも一緒にいるのが当たり前で、離れるとかそんなことを考えたことすらもなく、考えようとする度に思考が追いつかなくなる。
お互いが黙ってしまい、この沈黙の間、春太はずっと泣いている。
暫くすると、その沈黙を破るノックがし、富田が大きなバッグを持ってずかずかと部屋に入ってきた。
「あぁ、二人とも起きていましたか……、おや? なんで春太くんは泣いているんですか?」
智宏が何の返事もできないままいると、富田は智宏のベッドに腰掛け、話しかけた。
「さては、喧嘩でもしましたね?」
富田はふふ、と笑い、智宏の陰茎をぎゅっと握る。
「……っ!」
急に握られたその手は大きく、拘束された智宏は為す術もないまま、その手で扱かれた。富田の手にはピンク色の催淫剤がたっぷりと塗りつけてあり、それをローション代わりにして扱かれると、すぐに快感が訪れる。
「……ぁっ、ん……っ!」
感じたくないのに、感じてはいけないのに、扱かれて躯体が熱くなる。
「……とっ、智宏にさわんないで!!」
聞いたこともないような大きな声で春太が叫ぶ。
「僕のことは何してもいいからっ、お願いだから……っ!!」
春太は泣きながら富田を制止しようとして更に大きな声を出す。
「おやおや、泣き虫くんは、そんなに智宏が好きなんですねぇ……」
富田は泣きながら睨む春太に、智宏の陰茎がもっとよく見えるように、座った位置をずらした。懇願する春太の声に逆らい、富田は智宏の陰茎をゆっくりと扱き出した。
「……っ、あっ……、んっ」
智宏は一生懸命身体を捩ったが、富田にキツく握られた陰茎は催淫剤が巡り、扱かれる度に快感が走る。
「春太、ほら……見て下さい。智宏は気持ち良さそうにしていますよ……」
「や、やめて! お願いだから……っ、僕にしていいから……っ!」
クスクスと笑いながら、富田は春太に見せつけるよう、智宏を扱き上げる。感じてしまう自分の身体を春太に見せたくない智宏は、必死に春太に声をかけた。
「んっ……、あ……。……は、春太……っ、見るな……っ……」
今度は智宏が春太と反対方向に顔を向け、二人の気持ちはバラバラになってゆく。
「春太くん……、本当に何をしてもいいんですか?」
「智宏を離してくれるなら……、僕はどうなってもいい……」
春太は必死だった。智宏だけ助けたいという気持ちが大きく、智宏に抱かれたいなどと思ってしまう自分は消えていなくなればいいと思っていた。
「分かりました……」
富田はベッドから立ち上がると、春太のベッドに腰掛けた。智宏は、自分が感じてしまった姿を春太に見られたことから、恥ずかしくて春太の方に顔を戻せない。
「さてと、言われたことをしないと……、怒られるのは嫌ですからね……」
富田はそう言うと、持ってきたバッグから注射器を2本取り出す。それはレストランで使われた物と同じく、針がなく細長いものと、とても大きいものだった。咄嗟に春太は何をされるのかを予想して、言葉を失った。
「さてと、先にコレを抜いてあげましょうね……」
尿道に挿れられていたブジーのリングが、富田の指にかけられ、ズル……と少し抜ける。春太は尿道の中から全身に走った刺激で口を大きく開いたが、声が出せない程の快感が訪れ、そのままドライでイってしまった。身体がガクガクと震え、弓形にしなった胸の双丘までもが震えている。
「おやおや、何も教えていないのにドライでイけるなんて、春太くんは素晴らしいですね……。少し、智宏に見せつけてやりましょうか、春太の身体がとても淫乱だっていうことを……」
富田の言葉を聞き、智宏は焦って春太の方を向いたが、そこにはブジーを出し挿れされて身体をくねらせる春太がいた。春太は智宏と目が合うと、艶のある涙声で言葉を吐く。
「……あっ、ん……っ、……見て、智宏……。僕……、こういうのが……好きなの……だから、僕を……き、嫌いになって……か、帰って……」
智宏は必死に叫ぶ。
「……ッ、春太! ダメだ! 置いてなんて帰れない……ッ!!」
「智宏……、春太くんはこういうのが気持ちいいと言っているんですよ……、受け入れてあげないと、ね……」
富田は智宏の方に春太の陰茎を傾かせると、そこに挿入っているブジーをゆっくり出し挿れして見せた。
「……っ、あっ、あ……っ、ぁあん……」
切なそうに喘ぐ春太に、智宏はどう声をかけたらいいのか分からず、また黙り込んでしまった。ただ、目の前で行われる情事からは、心配という気持ちもあり、目が離せなくなっている。
「春太くん、智宏が感じている姿を見てくれていますよ。良かったですね……」
富田はそう言いながらブジーを抜き、細い注射器を手に取ると、智宏に説明し始めた。
「智宏……これは、春太くんが大好きなお注射です。これからイチゴ味の飲み物を春太くんに飲んで貰うんですよ……」
智宏は何がなんだか分からないままに、ただただ目が離せず、そのまま見ているしかなかった。
「でも、飲むのは口ではなく、ココですけどね……」
春太の尿道の先に注射器が当てられ、富田が中に注入してゆく。
「あっ、ぁああっ、ぁあああああああッ!!」
春太はまた身体を反らせ、ビクビクと痙攣するかのように全身を震わせる。富田はさっと次の注射器を取り出すと、何も言わぬまま、後孔から拡張器を外しすぐに注入した。
「……ッ!! あ……ッ、ぁああああッ、ぁああ……ッ!!」
注入が終わると、春太の息はすぐに荒くなり、勃起した陰茎への刺激を求め腰が動いていた。
「出てしまわないように、栓もまたしましょうね……」
富田は、ブジーを智宏に見せつけるように前に翳すと、また春太の尿道にそれをゆっくりと沈めてゆく。
「あっ、やっ……、なか、やだぁ……」
「いやではなく、コレが好きでしょう? ……春太くんはとてもいやらしい子ですからね……」
富田はくつくつと笑いながら、ブジーをまたクチュリクチュリと出し挿れする。
「……んっ、そこ、へ……、へんに、なる……」
「いくらでも変になっていいんですよ、いっぱい気持ちよくしてあげましょうね……」
智宏の目の前で、春太はブジーが挿入った陰茎を扱かれ、気持ち良さそうに喘いでいる。春太は、何かが吹っ切れたように快感を享受し、富田の手の動きに合わせて腰が動く。
「さて、春太……、今日のお仕事の準備をしましょうね……」
「……は、い」
富田は春太の脚の拘束具を外すと、自身のベルトを外し、下着をずらして大きくなった陰茎を露わにした。春太は嫌がりもせず、昨日智宏に何度も突かれた小さな後孔でそれを受け止めようとしている。目の前で春太が犯されそうになっている状況に、智宏は声を上げた。
「……は、春太……ッ、やだよ!! ……やめようよッ、こんな、こと……ッ!」
智宏は涙ながらに声をかけたが、富田は止まることなく、智宏の目の前で春太に深く挿入した。
「……っ、ぁああ……っ、ぁあっ!」
春太はとても感じているらしく、突かれる度に腰が動いている。
「あぁ……、とてもいい。まだ、この大きさには慣れていないからキツいくらいだ……。ただね、今日の客は大きい人が多いと蕪木に言われまして……、慣らしてこいと仰せつかったので……。愉しみましょう、春太くん……」
富田はそう言いながら春太の脚を大きく開かせ、まるで、中に打ち込むように挿入を繰り返している。パン!パン!という大きな肌音が響き、艶めかしい春太の喘ぎ声を聞いていると、智宏までもが変な気持ちになってきていた。
「あっ、あ、あ、ぁあっ、あんっ、んあっ、あっ……」
昨日何度も春太に挿れ、気持ちよくなった自分自身の行動を振り返り、自分は違うと言うような素振りをした己を呪う智宏がいた。自分は確かに昨日、春太に挿入してしまったというのに、今更何を考えていたのか……。
春太が挿入されているのを見て、催淫剤が塗られた陰茎と、刺激を欲しがる乳首がわななく。
変な薬のせいで性欲が昂ぶっているのか、春太を欲しているのか、自分では判断がつかない。しかし、今の状況は春太が犠牲になって、智宏を守ってくれたことは間違いない。ただ、あまりにも気持ち良さそうに喘いでいる春太を見ると、この状態を止めていいものなのかも分からなくなる。
「智宏……、帰るという選択肢がありますよ。どうしますか……?」
富田が意地悪く聞く。
「……二人で帰る」
智宏は意見を曲げずに答えた。
「……あっ、あっ、……ぼ、く……、かえんなっ、……い……んあっ」
春太は犯され、喘ぎながらも答えた。
「あぁ……、春太の中は熱い……、挿れたお薬が、私にも効いてきたようです……」
催淫剤を注入した後孔に、生で挿入したせいで、富田にも催淫剤が効いてきている。肌音が早くなり、突かれている春太の喘ぎ声も、ピストンに合わせて早くなっている。
「あっ、あっ、ああっ、あ、あっ、あっ、あ、あ、ああっ……」
挿入され喘ぐ春太を見て、智宏は自分の陰茎が反応していることをどう捉えたらいいのか、グルグルと考えていた。ただ、春太が欲しがっているのは自分自身だと知りながらも、あまりにも刺激的な光景は、ただただ智宏の興奮を煽る。
「ああっ、あっ、あっ、んあっ、ぁあっ、あ、あっ」
春太の口から漏れる艶めいた声が部屋に響く。智宏は四肢の拘束で耳を塞ぐ事も出来ず、だからと言って目を離すこともできず、いつしか鈴口から先走りが溢れ始めていた。
「んっ、っあ、あ、あ……ッ、やっ、い……いっちゃ…………ッ!!」
春太は仰け反り、精液が出せないままに、またドライでイった。ビクビクと全身を震わせ、はぁはぁと息をする姿は妖艶で、それを見ていた智宏の欲情は昂ぶっている。
富田は、そんな智宏を見逃す訳がなかった。催淫剤が効いている富田は、智宏の陰茎が反応して先走りが出ているところを視認すると、智宏に声を掛けた。
「智宏……、ずいぶんと興奮してしまっていますね……」
「……っ、ち、ちがっ……」
智宏は咄嗟に言葉を返したが、硬く勃起して蜜を零す陰茎では、あまりに説得力に欠ける。富田はゆっくりと春太から陰茎を引き抜くと、すぐに智宏のベッドに座った。
「やっ! 富田さ……っ、智宏にさわんない、で……ッ!!」
春太がまた大きな声で制止しようとしたが、催淫剤の影響を受けた富田が止まる訳がない。
「ぁあ……、こんなに興奮してしまっている。智宏のココはとてもエッチですねぇ……」
またも富田は智宏の陰茎を扱き出した。溢れ出した蜜を全体に塗りつけられ、催淫剤と蜜が混ざり合うと、グチュグチュとした音を立てる。
「素直に受け入れた方がいいですよ……」
「や……っ、やめろ……っ! ……っ! あっ!!」
心だけは必死に抵抗するも、気持ちよすぎておかしくなりそうな程に、快感が全身を駆け抜ける。富田は智宏の陰茎を口に含むと、ジュポジュポと音を立てながら口淫した。
「んあ……っ、ぁあ……ッ、……っ」
「やだ……っ! とみ、た……さ……、おね、がっ……、やだぁ……ッ!!」
溢れ出る涙を零しながら、春太は何度も富田の行動を止めようと声を掛けるが、それは既に無駄な行動だった。催淫剤はとても強力で、動き出した富田が止まる筈はない。
富田は智宏に挿入されている拡張器を手に持つと、口淫しながらそれをゆっくり動かし始めた。小さめのものが挿入っているとはいえ、拡張器で一晩じっくり広げられた後孔は、ズルリズルリと動かされるとピリリとした刺激が身体を走り抜ける。
「んん……っ、ん……っ、んあ……っ」
催淫剤はこの刺激を快感へと繋げてゆき、智宏の脳へ、その刺激を快感だと知らせている。富田は口淫をやめると、バッグから催淫剤入りのローションを出し、智宏の陰茎から後孔までにそれをトロトロとかけた。
「富田さ……ッ!! やだぁああ……ッ! ともひ、ろ……ッ!!」
春太が叫んでいるが智宏は声が出せず……、薬が効いた今となっては、呼吸をするのが精一杯だった。
そのとき、パァン!!という音と共に富田がベッドから横に落ちた。
「商品に手をつけるとはッ! 何事ですかッ!!」
そこには、手の平を掲げ、鬼のような形相で立っている蕪木がいた。
蕪木は富田の首元を掴むと、片手で更に頬を打つ。蕪木はそのまま急いで智宏のベッドに上がると、拡張器を抜き、拘束具を外した。そして、そのまま春太のところへも行き、春太の拘束具やブジーも手早く外す。
「こんなことになってしまうとは……、二人とも、本当にすまないことをしました……」
蕪木は春太を抱き寄せると、そのまま智宏のベッドに座らせ、二人を抱き寄せながら頭を下げた。
「確かに私は、春太の拡張を富田に指示しました……。しかし、きちんとゴムをつけろとも言ったのですが……、本当に申し訳ありません……」
蕪木はそのまま振り向くと、富田に言う。
「富田、ここから出て行きなさい……」
富田はフラフラしていたが、やってしまったことが理解できたのか、一礼すると部屋を出て行った。
智宏は、ここで烈火の如く怒りだした。
「なんなんだよ……ッ!! 騙してこんなことしてっ! なんなんだよッ!!」
叫んで暴れる智宏が、これ以上怒ったりしないよう、春太は智宏に抱きついた。
「騙している……、しかし、最初にサインして頂いた紙には……」
蕪木はそこまで言いかけると、言葉を止め、優しい声で二人に言葉をかけた。
「温かいシャワーを用意しましょう。そこで身体を清めたら、車を出しますので、二人で帰っていいですよ……」
そこで春太がまたも反対した。
「僕は……、残ります……」
智宏はまたその言葉に慌て、春太に声をかける。
「は……っ、春太……、なぁ、帰ろう……?」
「僕は頭のおかしい人だから……」
そこまでのやりとりを聞くと、蕪木が智宏に声を掛けた。
「春太が帰りたくないと言っているのは、春太が智宏に身体の関係を望んでしまっているからです。でも、智宏にとって春太がどんな思考を持っていても、だいじなお友達であって欲しいと思います……」
蕪木の言葉を受けて、ボソリボソリと智宏が言葉を紡ぐ。
「身体のことは、まだよく分かんないけど……。俺はさっき……春太が犯されるの見て、春太を手放したくない……って、思った……。あと、正直に言えば……興奮しちゃった俺もいて……、俺も頭ヤバいんじゃないかって思ってる……」
蕪木は、智宏の言葉を聞き遂げると、春太を智宏に引き寄せ、にっこりとした笑顔で声を掛けた。
「カップル成立ですね……。シャワーを浴びて、帰りの準備をしてください」
智宏と春太は一瞬顔を見合わせると、しっかりと抱き合い、二人とも泣き始めた。春太は、智宏が助かり少し自分が受け入れて貰えた感情を涙にし、智宏は春太が助かったことに涙している。
まだ二人の歩幅は違うが、お互いがお互いを想い合っているのは確かなことだ。
「タオルを用意してきます……」
抱き合って泣く二人を背にし、そっと扉を出た蕪木は、ポツリと独り言を吐いた。
「私もここに来たとき、智宏のように想ってくれる人が一緒だったらよかった……。ふふ、春太が羨ましいですが、急いで次の子を手配しなければ……」
蕪木はふぅ……、と大きな溜息を吐くと、そのまま歩き出した。
~つづく~
急いで隣を見たが、そこには四肢を拘束されて、尿道にブジーを入れられたままの春太がいる。自分自身も裸のままベッドに拘束されていると理解した智宏は、なんとか拘束具を外そうとしたが、ビクともしない。
「……夢じゃない」
少し動いた智宏は、後孔への違和感を覚えた。何かが挿れられていると分かると、恐怖心が心の中を支配し始めた。しかし、催淫剤がまだ効いた状態では、その違和感さえ少し気持ちがいいものとして脳内が処理しようとしてしまう。頭を上げて下半身を見れば、陰茎も硬く勃った状態だった。
昨日たくさん射精させられたばかりだというのに、催淫剤のせいで精巣は活発に動き、精子の量産を始めている。この状態のまま、また富田や蕪木が来てしまったら、昨日の晩のように男たちに好き勝手にされてしまう。そう思った智宏は、焦りを感じながら春太に声を掛けた。
「は、……春太、……春太!」
春太はかなり深く眠っているらしく、何度か呼んだが反応がない。焦った智宏はさらに呼びかけを続けると、10分ほどして春太が目を覚ました。
「……ん」
ぼんやりと開いた瞳は潤んでおり、赤くなった頬でこちらを見られると、智宏は昨日の晩の春太とのセックスを思い出してしまった。春太の後孔に入れながら乳首を揉まれた、あの感覚。それはゾクゾクとした快感を躯体に這わせ、智宏の陰茎はまたピクピクと反応を始めた。
「……っ、……」
「……智宏?」
「春太……、起きた?」
智宏はできるだけ性欲を抑え込み、春太との会話に集中する。
「……うん」
春太も身体の異常には気付いているが、智宏と違って昨日一回も射精させてもらえていないため、智宏よりも性を欲していた。
「……、春太……こんなバイトだって知らなくて、誘ってごめん……」
智宏の目に涙がジワリと浮かんだ。
「智宏……、泣かないで……僕は、怒ってないよ……」
「……春太、本当にごめん……」
「あのね……。蕪木さんが言ってたんだけど……、仕事が終わって智宏と話して、二人とも帰りたいって言うのなら考えてあげるって言ってた……」
「えっ、じゃあ、二人で帰りたいって言おう!」
「……」
春太が黙る。智宏は黙り込んでしまった春太に、どう声をかけたらいいのか迷ったが、再度声を掛けた。
「……春太、二人で一緒に帰ろう?」
「ぼ……僕、帰りたくない……」
智宏は春太の言葉に目を丸くした。何故あんなに酷いことをされて、帰りたくないと言うのか、全く理解できなかった。
「……な、……なん、で……」
「……ごめんな……さい、僕……、智宏が……好きなんだ……。こんなの……気持ち悪いよね……。でも、僕……ずっと智宏に抱かれたかったから、昨日……嬉しかった……。だけど、智宏は……、こういうの嫌いだと思うし……。気持ち悪い僕は、ここに残る…………」
ひっくひっくと肩を震わせながら春太が泣く。
言葉を失った智宏は、何も言い返せず、なんと返事をしたらいいのかを必死に考える。しかし、その沈黙の間に春太はもっと強く泣き出した。
「……無理に、返事しなくて、いい……、から。……僕が頭がおかしいだけ、だから……」
そう言うと、春太は何度も嗚咽しながらポロポロと涙を零して向こうを向いてしまった。突然ぶつけられた感情に戸惑い、自分が春太のことをどう思っているのかさえ分からなくなった。いつも一緒にいるのが当たり前で、離れるとかそんなことを考えたことすらもなく、考えようとする度に思考が追いつかなくなる。
お互いが黙ってしまい、この沈黙の間、春太はずっと泣いている。
暫くすると、その沈黙を破るノックがし、富田が大きなバッグを持ってずかずかと部屋に入ってきた。
「あぁ、二人とも起きていましたか……、おや? なんで春太くんは泣いているんですか?」
智宏が何の返事もできないままいると、富田は智宏のベッドに腰掛け、話しかけた。
「さては、喧嘩でもしましたね?」
富田はふふ、と笑い、智宏の陰茎をぎゅっと握る。
「……っ!」
急に握られたその手は大きく、拘束された智宏は為す術もないまま、その手で扱かれた。富田の手にはピンク色の催淫剤がたっぷりと塗りつけてあり、それをローション代わりにして扱かれると、すぐに快感が訪れる。
「……ぁっ、ん……っ!」
感じたくないのに、感じてはいけないのに、扱かれて躯体が熱くなる。
「……とっ、智宏にさわんないで!!」
聞いたこともないような大きな声で春太が叫ぶ。
「僕のことは何してもいいからっ、お願いだから……っ!!」
春太は泣きながら富田を制止しようとして更に大きな声を出す。
「おやおや、泣き虫くんは、そんなに智宏が好きなんですねぇ……」
富田は泣きながら睨む春太に、智宏の陰茎がもっとよく見えるように、座った位置をずらした。懇願する春太の声に逆らい、富田は智宏の陰茎をゆっくりと扱き出した。
「……っ、あっ……、んっ」
智宏は一生懸命身体を捩ったが、富田にキツく握られた陰茎は催淫剤が巡り、扱かれる度に快感が走る。
「春太、ほら……見て下さい。智宏は気持ち良さそうにしていますよ……」
「や、やめて! お願いだから……っ、僕にしていいから……っ!」
クスクスと笑いながら、富田は春太に見せつけるよう、智宏を扱き上げる。感じてしまう自分の身体を春太に見せたくない智宏は、必死に春太に声をかけた。
「んっ……、あ……。……は、春太……っ、見るな……っ……」
今度は智宏が春太と反対方向に顔を向け、二人の気持ちはバラバラになってゆく。
「春太くん……、本当に何をしてもいいんですか?」
「智宏を離してくれるなら……、僕はどうなってもいい……」
春太は必死だった。智宏だけ助けたいという気持ちが大きく、智宏に抱かれたいなどと思ってしまう自分は消えていなくなればいいと思っていた。
「分かりました……」
富田はベッドから立ち上がると、春太のベッドに腰掛けた。智宏は、自分が感じてしまった姿を春太に見られたことから、恥ずかしくて春太の方に顔を戻せない。
「さてと、言われたことをしないと……、怒られるのは嫌ですからね……」
富田はそう言うと、持ってきたバッグから注射器を2本取り出す。それはレストランで使われた物と同じく、針がなく細長いものと、とても大きいものだった。咄嗟に春太は何をされるのかを予想して、言葉を失った。
「さてと、先にコレを抜いてあげましょうね……」
尿道に挿れられていたブジーのリングが、富田の指にかけられ、ズル……と少し抜ける。春太は尿道の中から全身に走った刺激で口を大きく開いたが、声が出せない程の快感が訪れ、そのままドライでイってしまった。身体がガクガクと震え、弓形にしなった胸の双丘までもが震えている。
「おやおや、何も教えていないのにドライでイけるなんて、春太くんは素晴らしいですね……。少し、智宏に見せつけてやりましょうか、春太の身体がとても淫乱だっていうことを……」
富田の言葉を聞き、智宏は焦って春太の方を向いたが、そこにはブジーを出し挿れされて身体をくねらせる春太がいた。春太は智宏と目が合うと、艶のある涙声で言葉を吐く。
「……あっ、ん……っ、……見て、智宏……。僕……、こういうのが……好きなの……だから、僕を……き、嫌いになって……か、帰って……」
智宏は必死に叫ぶ。
「……ッ、春太! ダメだ! 置いてなんて帰れない……ッ!!」
「智宏……、春太くんはこういうのが気持ちいいと言っているんですよ……、受け入れてあげないと、ね……」
富田は智宏の方に春太の陰茎を傾かせると、そこに挿入っているブジーをゆっくり出し挿れして見せた。
「……っ、あっ、あ……っ、ぁあん……」
切なそうに喘ぐ春太に、智宏はどう声をかけたらいいのか分からず、また黙り込んでしまった。ただ、目の前で行われる情事からは、心配という気持ちもあり、目が離せなくなっている。
「春太くん、智宏が感じている姿を見てくれていますよ。良かったですね……」
富田はそう言いながらブジーを抜き、細い注射器を手に取ると、智宏に説明し始めた。
「智宏……これは、春太くんが大好きなお注射です。これからイチゴ味の飲み物を春太くんに飲んで貰うんですよ……」
智宏は何がなんだか分からないままに、ただただ目が離せず、そのまま見ているしかなかった。
「でも、飲むのは口ではなく、ココですけどね……」
春太の尿道の先に注射器が当てられ、富田が中に注入してゆく。
「あっ、ぁああっ、ぁあああああああッ!!」
春太はまた身体を反らせ、ビクビクと痙攣するかのように全身を震わせる。富田はさっと次の注射器を取り出すと、何も言わぬまま、後孔から拡張器を外しすぐに注入した。
「……ッ!! あ……ッ、ぁああああッ、ぁああ……ッ!!」
注入が終わると、春太の息はすぐに荒くなり、勃起した陰茎への刺激を求め腰が動いていた。
「出てしまわないように、栓もまたしましょうね……」
富田は、ブジーを智宏に見せつけるように前に翳すと、また春太の尿道にそれをゆっくりと沈めてゆく。
「あっ、やっ……、なか、やだぁ……」
「いやではなく、コレが好きでしょう? ……春太くんはとてもいやらしい子ですからね……」
富田はくつくつと笑いながら、ブジーをまたクチュリクチュリと出し挿れする。
「……んっ、そこ、へ……、へんに、なる……」
「いくらでも変になっていいんですよ、いっぱい気持ちよくしてあげましょうね……」
智宏の目の前で、春太はブジーが挿入った陰茎を扱かれ、気持ち良さそうに喘いでいる。春太は、何かが吹っ切れたように快感を享受し、富田の手の動きに合わせて腰が動く。
「さて、春太……、今日のお仕事の準備をしましょうね……」
「……は、い」
富田は春太の脚の拘束具を外すと、自身のベルトを外し、下着をずらして大きくなった陰茎を露わにした。春太は嫌がりもせず、昨日智宏に何度も突かれた小さな後孔でそれを受け止めようとしている。目の前で春太が犯されそうになっている状況に、智宏は声を上げた。
「……は、春太……ッ、やだよ!! ……やめようよッ、こんな、こと……ッ!」
智宏は涙ながらに声をかけたが、富田は止まることなく、智宏の目の前で春太に深く挿入した。
「……っ、ぁああ……っ、ぁあっ!」
春太はとても感じているらしく、突かれる度に腰が動いている。
「あぁ……、とてもいい。まだ、この大きさには慣れていないからキツいくらいだ……。ただね、今日の客は大きい人が多いと蕪木に言われまして……、慣らしてこいと仰せつかったので……。愉しみましょう、春太くん……」
富田はそう言いながら春太の脚を大きく開かせ、まるで、中に打ち込むように挿入を繰り返している。パン!パン!という大きな肌音が響き、艶めかしい春太の喘ぎ声を聞いていると、智宏までもが変な気持ちになってきていた。
「あっ、あ、あ、ぁあっ、あんっ、んあっ、あっ……」
昨日何度も春太に挿れ、気持ちよくなった自分自身の行動を振り返り、自分は違うと言うような素振りをした己を呪う智宏がいた。自分は確かに昨日、春太に挿入してしまったというのに、今更何を考えていたのか……。
春太が挿入されているのを見て、催淫剤が塗られた陰茎と、刺激を欲しがる乳首がわななく。
変な薬のせいで性欲が昂ぶっているのか、春太を欲しているのか、自分では判断がつかない。しかし、今の状況は春太が犠牲になって、智宏を守ってくれたことは間違いない。ただ、あまりにも気持ち良さそうに喘いでいる春太を見ると、この状態を止めていいものなのかも分からなくなる。
「智宏……、帰るという選択肢がありますよ。どうしますか……?」
富田が意地悪く聞く。
「……二人で帰る」
智宏は意見を曲げずに答えた。
「……あっ、あっ、……ぼ、く……、かえんなっ、……い……んあっ」
春太は犯され、喘ぎながらも答えた。
「あぁ……、春太の中は熱い……、挿れたお薬が、私にも効いてきたようです……」
催淫剤を注入した後孔に、生で挿入したせいで、富田にも催淫剤が効いてきている。肌音が早くなり、突かれている春太の喘ぎ声も、ピストンに合わせて早くなっている。
「あっ、あっ、ああっ、あ、あっ、あっ、あ、あ、ああっ……」
挿入され喘ぐ春太を見て、智宏は自分の陰茎が反応していることをどう捉えたらいいのか、グルグルと考えていた。ただ、春太が欲しがっているのは自分自身だと知りながらも、あまりにも刺激的な光景は、ただただ智宏の興奮を煽る。
「ああっ、あっ、あっ、んあっ、ぁあっ、あ、あっ」
春太の口から漏れる艶めいた声が部屋に響く。智宏は四肢の拘束で耳を塞ぐ事も出来ず、だからと言って目を離すこともできず、いつしか鈴口から先走りが溢れ始めていた。
「んっ、っあ、あ、あ……ッ、やっ、い……いっちゃ…………ッ!!」
春太は仰け反り、精液が出せないままに、またドライでイった。ビクビクと全身を震わせ、はぁはぁと息をする姿は妖艶で、それを見ていた智宏の欲情は昂ぶっている。
富田は、そんな智宏を見逃す訳がなかった。催淫剤が効いている富田は、智宏の陰茎が反応して先走りが出ているところを視認すると、智宏に声を掛けた。
「智宏……、ずいぶんと興奮してしまっていますね……」
「……っ、ち、ちがっ……」
智宏は咄嗟に言葉を返したが、硬く勃起して蜜を零す陰茎では、あまりに説得力に欠ける。富田はゆっくりと春太から陰茎を引き抜くと、すぐに智宏のベッドに座った。
「やっ! 富田さ……っ、智宏にさわんない、で……ッ!!」
春太がまた大きな声で制止しようとしたが、催淫剤の影響を受けた富田が止まる訳がない。
「ぁあ……、こんなに興奮してしまっている。智宏のココはとてもエッチですねぇ……」
またも富田は智宏の陰茎を扱き出した。溢れ出した蜜を全体に塗りつけられ、催淫剤と蜜が混ざり合うと、グチュグチュとした音を立てる。
「素直に受け入れた方がいいですよ……」
「や……っ、やめろ……っ! ……っ! あっ!!」
心だけは必死に抵抗するも、気持ちよすぎておかしくなりそうな程に、快感が全身を駆け抜ける。富田は智宏の陰茎を口に含むと、ジュポジュポと音を立てながら口淫した。
「んあ……っ、ぁあ……ッ、……っ」
「やだ……っ! とみ、た……さ……、おね、がっ……、やだぁ……ッ!!」
溢れ出る涙を零しながら、春太は何度も富田の行動を止めようと声を掛けるが、それは既に無駄な行動だった。催淫剤はとても強力で、動き出した富田が止まる筈はない。
富田は智宏に挿入されている拡張器を手に持つと、口淫しながらそれをゆっくり動かし始めた。小さめのものが挿入っているとはいえ、拡張器で一晩じっくり広げられた後孔は、ズルリズルリと動かされるとピリリとした刺激が身体を走り抜ける。
「んん……っ、ん……っ、んあ……っ」
催淫剤はこの刺激を快感へと繋げてゆき、智宏の脳へ、その刺激を快感だと知らせている。富田は口淫をやめると、バッグから催淫剤入りのローションを出し、智宏の陰茎から後孔までにそれをトロトロとかけた。
「富田さ……ッ!! やだぁああ……ッ! ともひ、ろ……ッ!!」
春太が叫んでいるが智宏は声が出せず……、薬が効いた今となっては、呼吸をするのが精一杯だった。
そのとき、パァン!!という音と共に富田がベッドから横に落ちた。
「商品に手をつけるとはッ! 何事ですかッ!!」
そこには、手の平を掲げ、鬼のような形相で立っている蕪木がいた。
蕪木は富田の首元を掴むと、片手で更に頬を打つ。蕪木はそのまま急いで智宏のベッドに上がると、拡張器を抜き、拘束具を外した。そして、そのまま春太のところへも行き、春太の拘束具やブジーも手早く外す。
「こんなことになってしまうとは……、二人とも、本当にすまないことをしました……」
蕪木は春太を抱き寄せると、そのまま智宏のベッドに座らせ、二人を抱き寄せながら頭を下げた。
「確かに私は、春太の拡張を富田に指示しました……。しかし、きちんとゴムをつけろとも言ったのですが……、本当に申し訳ありません……」
蕪木はそのまま振り向くと、富田に言う。
「富田、ここから出て行きなさい……」
富田はフラフラしていたが、やってしまったことが理解できたのか、一礼すると部屋を出て行った。
智宏は、ここで烈火の如く怒りだした。
「なんなんだよ……ッ!! 騙してこんなことしてっ! なんなんだよッ!!」
叫んで暴れる智宏が、これ以上怒ったりしないよう、春太は智宏に抱きついた。
「騙している……、しかし、最初にサインして頂いた紙には……」
蕪木はそこまで言いかけると、言葉を止め、優しい声で二人に言葉をかけた。
「温かいシャワーを用意しましょう。そこで身体を清めたら、車を出しますので、二人で帰っていいですよ……」
そこで春太がまたも反対した。
「僕は……、残ります……」
智宏はまたその言葉に慌て、春太に声をかける。
「は……っ、春太……、なぁ、帰ろう……?」
「僕は頭のおかしい人だから……」
そこまでのやりとりを聞くと、蕪木が智宏に声を掛けた。
「春太が帰りたくないと言っているのは、春太が智宏に身体の関係を望んでしまっているからです。でも、智宏にとって春太がどんな思考を持っていても、だいじなお友達であって欲しいと思います……」
蕪木の言葉を受けて、ボソリボソリと智宏が言葉を紡ぐ。
「身体のことは、まだよく分かんないけど……。俺はさっき……春太が犯されるの見て、春太を手放したくない……って、思った……。あと、正直に言えば……興奮しちゃった俺もいて……、俺も頭ヤバいんじゃないかって思ってる……」
蕪木は、智宏の言葉を聞き遂げると、春太を智宏に引き寄せ、にっこりとした笑顔で声を掛けた。
「カップル成立ですね……。シャワーを浴びて、帰りの準備をしてください」
智宏と春太は一瞬顔を見合わせると、しっかりと抱き合い、二人とも泣き始めた。春太は、智宏が助かり少し自分が受け入れて貰えた感情を涙にし、智宏は春太が助かったことに涙している。
まだ二人の歩幅は違うが、お互いがお互いを想い合っているのは確かなことだ。
「タオルを用意してきます……」
抱き合って泣く二人を背にし、そっと扉を出た蕪木は、ポツリと独り言を吐いた。
「私もここに来たとき、智宏のように想ってくれる人が一緒だったらよかった……。ふふ、春太が羨ましいですが、急いで次の子を手配しなければ……」
蕪木はふぅ……、と大きな溜息を吐くと、そのまま歩き出した。
~つづく~
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