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最終章 ノベルとアズリエル
73.激しい朝、旅立ち
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「起きろアズリエル。朝の5時だ。俺をカナヤの外まで送り出してくれるんだろう?」
「ええっ……はい。分かりました。それじゃ、着替えないとですね」
アズリエルは素っ裸で立ち上がると、俺の方を見て少し顔を赤くする。
それにしても、アズリエルって肌が綺麗だな。
背中に小さな黒い翼が生えてて、それが彼女の美しさを引き上げている。
ちゃんとこのエッチな裸を脳内フォルダに保存しておかねば!
「ちょ、あんまりじろじろ見ないでください! 恥ずかしいじゃないですか!」
「なぁに今更だ。恥ずかしいってのはな、『あぁ、そこです! そこがいいんです!』ってアズリエルが俺に」
「わぁ、バカノベルアホノベル! 再現しないでください!」
「ちょ、まてアズリエル! 俺ってば朝は」
「うわっ! ノベルは本当に性欲が強いですね! 宛らバベルの塔です」
「違うんだって、これはその、男の子にありがちなやつで」
「言い訳は許しません! こうなったら、もう一回戦突入です!」
「えっ、朝からすんの!? あっ、ああ――っ!」
◆
――幸せな朝が訪れた。
飲み会の次の日だから、おそらくみんなはグロッキーで、ギリギリまで起きてくることはないだろう。
イレイザーとルーラーみたく発見される前に、颯爽と宮殿を出よう!
の前に、少しアズリエルとイチャついておきたい。
ありがとうハイライター。
ありがとうイレイザー。
ありがとうルーラー。
ありがとうステイプラー。
ありがとう親父。
ありがとう、みんな。
ありがとう、アズリエル。
俺はみんなのおかげですごく強くなれた!
すごく幸せだった、すごく頑張れた!
だから、俺は絶対に向こうでアニメ化するようなプロの小説家になって、お前ら全員に声優を当ててやる!
だから、それまで待っててくれ。
ありがとう、みんな。
◆
俺とアズリエルはカナヤの門番に問い合わせて、巨大な門を開けてもらった。
俺はここから出て、誰にも気付かれないところで元の世界に帰るつもりだ。
街のど真ん中で俺が突然いなくなったら色々とマズそうだし。
それに、みんなに説明をして別れるってのは小っ恥ずかしくて性に合わない。
俺の大切で愛しい妻だけに送り出してもらえればそれでいいんだ。
「あと500文字で完結なんですね。アズちゃん、やっぱり寂しいです」
「俺もだよ。でも、俺の愛したアズリエルはいつまでも心に残り続ける。それに、そのお腹の中にも俺の子供ができるかもだしな?」
「できてないと困ります! 赤ちゃんが生まれたら、きっとその子はイケメンか美女に決まってます! 安心してください、アズちゃんが絶対に強く育てて見せます!」
「あぁ、楽しみにしてるぜ?」
――空が綺麗だ。
俺が気持ちよく旅立てるようにって神様が配慮してくれたんじゃないか?
ちょうど朝日が昇り、明るい白い光が俺たちを包み込んでくれた。
風はとても優しく、草木はさわさわと歌ってくれている。
あぁ、俺とアズリエルが出会ったときもこんな感じだった。
アズリエルの手は俺から離れ、彼女は笑顔で俺に手を振るのだ。
「いってらっしゃい、あなた」
「あぁ。行ってくるよアズリエル」
ぶー! ぶー! ぶー! ぶー!
なななな、なんだっ!
ノベルメイカーが鳴ってるぞ!
「ど、どうしたんですかこんな時に! 雰囲気ぶち壊しです!」
「俺にもわからん! まさか、矛盾メーターが10になったのか!?」
いや、でもメーターは6を指している!
字数も10万字ほどだ!
何がいけない、何がいけないんだ!
「あ、いけないです! 大切なことを思い出しました!」
「なんだ、なんなんだ! 元の世界に帰る条件が揃ってないんだろう!?」
「その通りです、確か説明書には『矛盾メーターが5以下がクリア条件』だと書いてました!」
まま、ままま、マジかぁぁぁ!
お涙ちょうだい展開で、まさかのこんなオチが待っていようとは!
「今からこの10万字の小説を読むしかない! もう腹は括りきってんだ! ここでグタグタしてたら決意が揺らぎそうになる! そうだ、アズリエル! どこで矛盾メーターが溜まったか覚えてるか?」
「ええ、ええっと……。確か6に上がった時は、イレイザーとの戦闘前です! 銃の発射音を消すために設定を足したとか……」
「あ、それだ! 意味わからん設定を足したから矛盾メーターが上がったんだった!」
――それと、確かルーラーと初めて会った時も矛盾メーターが上がった気がするぞ!
漢字とルビの辻褄が合ってないとか、詠唱を無くすとかそういうくだりで5になった気がする。
あとは、初期設定の3から4に上がった時の謎だ!
確か、初日だ!
カナヤの宿屋に泊まった日、アズリエルから部屋を閉め出されてたあの時だ!
急に天界から召喚されて、めちゃくちゃブチギレてたあの日!
「おいマズいぞアズリエル! 5と6の時は理由を思い出したが、両方とも設定の書き換えだ! しかも、戦闘に関係していることが多い! 今、その設定を削除したら物語が傾いちまう!」
「ええっ?! それじゃ、どうするんですか! このままじゃ、ノベルは帰れないじゃないですか! ――あれ、これはもしかしてアズちゃんからしてみれば好都合的展開なのでは?」
とか言ってんなバカ!
マジで俺の決意が揺らぐからやめてくれ!
思い出せ、思い出せ!
俺が閉め出されていたあの日の違和感だ!
宿屋から放り出された俺は、その日は部屋の前の廊下で寝た!
それから、それから!
ん、待てよ。
「ふふふ、ふはははは! これはもう、実質詰みじゃないですか! ノベルは元の世界へ帰れず、設定を気にするがあまりノベルメイカーを放棄し、アズちゃんと幸せな家庭を築き――」
「おい、ダメ天使」
俺はノベルメイカーのそのページをジッと見て、プルプルと震える。
――俺が閉め出されてる間、アズリエルは一体何をしでかしてくれちゃってるのかな?
「アズリエル。おまえ、初めに会った時よりも胸が大きくないか?」
そう言うと、アズリエルは分かりやすくビクつき、これまでにないくらい目を左右に泳がせた!
「ああっ、あああああっ! えっと、その」
「出会った瞬間と色々と体格が違う気がするんだけど。気のせいか?」
「ううっ、うううっ!」
アズリエルに会った当初は、中学生ロリっ気がムンムンと出てるガキだった!
でも、今は高校生から大人くらいの体格になってる!
天使族だからって、いきなり成長したりはしないよな?
「アズリエル! このページに見覚えはあるか!」
「あわわ、あわわ!」
「懐かしいか、お前の文字でしっかりと書いてるぞ! 『アズちゃんは思い通りのスリーサイズになれる。そして、周りはスリーサイズが変わったことに気付かない』ってな! アズリエルがこれを書いたあと、俺はその日に牢屋にぶち込まれちまったから、お前にノベルメイカーの改稿を任せてたもんな! 全く気付かなかった俺は心底馬鹿だ! 大馬鹿だ畜生丸だ!」
これが、矛盾メーターが3から4に上がった元凶だろどう考えても!
人の身長を自由に変えられるのは、当然御法度だ!
変身スキルを持つとかだったらまだしも、何の設定も無しに変更できる! とか言語道断だ!
そりゃ矛盾メーターも上がるわな!
アズリエルのやつ、異世界転生に託けて、自分の見た目を変えていたと言う事だ。
胸が大きくなってみたい! って願望はわからなくはないが...すまん、アズリエル。
お前の胸、消させてもらう。
「……ってわけだアズリエル。それにしても、可愛いなぁその服装。お気に入りなのか?」
「おお、お気に入りです! だけど、お気に入りなので、宮殿ではあまりこの服は着てないですね、はい!」
「そうだよなぁ、宮殿ではずっとドレスを着てたもんなぁ。仮に、俺がお前の設定を消したとしても、『アズリエルは胸がブカブカの服を着る癖がある』と設定を書き出せば、矛盾は生じないわけだ」
「あわわわわ、ノベル! そんなことしたら、別の矛盾が生じるかもですよ!」
「そうなった時はそうなった時!」
俺はペンを取り出して、白インクをノックして出す!
いくら俺の妻と言えど、アホみたいな行動をし腐ったダメ天使にお仕置きをしなきゃならんみたいだな。
「というか、アズちゃんはノベルのせいであんな早い段階から異世界召喚されてしまったのです! どう考えてもノベルが悪いですよ! あの、本当にやめてください! 忘れたんですか! 今日は黒いスケスケの下着なんです! 昨日着てた勝負下着ですよノベル! ちょーっ!」
「えー? どうしちゃおっかなぁ?」
とか言いながら、俺はアズリエルが書いた黒インクに白インクで上塗りをし、満面のゲス顔を嫁に見せつけた!
すると、アズリエルが着ていた服はどんどんずれ落ち、見た目中学生に戻って行く!
そうそう、最初からアズリエルは超絶ロリ体格だった!
今まで着ていた服が大きいものだから、サイズが合わずにどんどんずり落ちて行く!
「お仕置きだ、我が妻よ! 早く部屋に帰るこったな!」
「うわぁぁ! 鬼畜ですバカですアホノベルです! こぉのうんこ踏みつけ男! 2度とノベルなんて思い出してあげませんから! この、ばかちーん!」
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