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第七章 ノベルvsイレイザー

59.麻酔

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 ◆

 こうして、俺はイレイザーを麻酔によって鎮めることができた。
 エトルフィンってのは、暴れ出した象なんかに使用する麻酔弾の原材料だ。
 凄いぞ、あの巨大な象を昏睡させるレベルの劇薬だぞ?
 それに、亜人族の体の構造は生物とは異なり、全身が一本の血管みたいなもんだ。
 エトルフィンを撃たれれば一瞬で昏睡状態に陥るだろう。

「しっかし、本当に麻酔が効いてよかったぜ。亜人族は特殊だから効きません! ……だったら俺はもうお手上げだった」

「ぬぅ……。マスイなるものでイレイザーは眠ってしまったのか。これはまた凄い魔法だな。一応、そういう異常状態を受ける魔法には耐性があるはずなのだが」

「魔法じゃねぇ、科学だってばよ。そんなことよりも、そろそろ出て来てもいいんじゃないか? 『イレイザーの妖精さん』よ?」

 俺は倒れたイレイザーの膨れた頬をペシペシ叩く。

 すると、彼の胸のあたりからふわふわと、小さな羽を持った妖精が飛び出して来たのだ!

「うわ、小さい妖精さんです!」

「妖精族は2つの姿を持ってんだよアズリエル。妖精モードと人間モード。ちょうど、あそこで寝てるステイプラーは人間モードなんだよ」

 アズリエルは目をキラキラさせながら、怠そうに飛ぶ妖精を眺める。

「ふぁー。こりゃかなり効いたなぁ」

 俺はあくびをしながらよろよろ飛んでいる妖精を手のひらに乗せる。

「お前がイレイザーと契約している妖精か」

「そうだよ。全く、変な薬を打たれたせいでこっちまで眠たくなってくる」

 その妖精は気怠そうに長い緑色の髪の毛をかく。
 可愛い見た目だが、声色が男だから、誤って好きになったりしたらダメだぞ?

「お前がイレイザーの魔法の使い手だろう? 凄え能力だな、普通だったら主人公レベルの能力だぞそれ?」

「何を言ってるんだか。申し遅れたね、僕の名前はホワイトアウト。君の戦い方は凄いな。こんな展開、全く予想ができなかったよ」

 と、小さな妖精・ホワイトアウトは小さな手で握手を求めて来た。
 ホワイトアウト……あ、修正液か。

「そうだね。まさか僕とイレイザーの無敵コンビを科学の力で負かすとは恐れ入ったよ。約束通り、僕の相棒をルーラーさんのところに連れて行ってくれ。――彼女は今も泣いているんだろう?」

「あぁ。ルーラーの心を救えるのは、もうイレイザーしかいないんだよ。そんじゃ、さっさとイレイザーを叩き起こしてルーラーのところへ――」


 っと、俺は地面に倒れる!
 あ、やっべぇ……流石に無理しすぎた、頭がクラクラして全身に寒気が……。

「きゃぁ! ノベルがやばいです! 完全に死にかけてます!」

「そりゃあ、イレイザーから内臓とか潰されてんだ! おいホワイト! イレイザーよりも先にノベルの回復をしてやってくれ!」

「待ってくれハイライター。僕の魔法は回復魔法なんかじゃない。怪我をした事実を削除する魔法だといつも言っている」

「なんでもいいので早くしてください! ノベルが死んでしまいます!」

 ――俺の周りでガヤガヤうるさいなぁもう。
 お願いです、早く俺を回復させてください!
 こんなところで死にたくないんです!
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