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第一章 アズリエルとの出会い

2.ダメ天使・アズリエル

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 俺はそんなことを言いつつも、少なからず期待はしている。
 このノートに何か隠された能力があることを信じて!

 俺はとりあえず右端のページを開く。
 すると、やはり普通のノートではありえないような特殊な装飾が施されている。
 何やらバイクのメーターのようなものがある。
 針は3を指していて、プルプルと震えている。
 0~10までの数字があり、0の部分の背景は緑色で、10に近付くにつれて色は赤に変わっている。
 それと、10の部分にドクロマークが付いている。
 色んな常識から察するに、メーターの針が10を指せば、俺は死ぬんだろう。
 って何冷静に分析してるんだ!
 一体なんだよこれ!

 俺は口を歪ませながらノートの左末端を見ると、そこにはメーターではない装飾がある。

「俺の名前と、パラメーター?! それに設定記入欄ってなんだ!」

『はいはい~。そこはノベルさんのステータス情報が記されている箇所になりまして』

「それはわかるよ! 伊達にラノベは読んでないからね! この設定記入欄ってなに?!」

 今までの異世界展開から逸脱している!
 俺はもうこの世界の設定を把握するのをやめた!
 今までだったら、「どうせこう言うことだろ?」ってラノベを読み進めていたが、今回はなにも分からん!

『あれ、女神様からは説明しなくていいって聞いてましたけど。ラノベヲタクだから』

「ヲタクって言うな! いや、流石に説明いるわこれは! アズリエル、説明してもらっていいかな?」

『はぁ、分かりましたよ準備しますって。ラノベヲタクでも分からないことはあるんですねぇ。』

「ヲタクって言うな! ラノベ好きって言い直せ!」

『ふーん。ぷいぷいっ』

 俺はぷんぷん怒って空を見上げると、アズリエルは『あれってどこ置いたっけ?』と呟いて何かをガラガラと持ってくる音を立てる。
 事務所から遠隔操作してるのか知らんけど、なんかのコードが机に当たる音とかストローでズビズビ何かを飲む音を立てるな!
 世界観どうなってんだよ!

『はいはーい。では、ノベルメイカーの説明しますね』

 ペラリと何かを捲る音が俺の頭の中に響く。
 恐らくだが、俺に語りかけるためのマイク的なやつに紙が当たったな?

「おいアズリエル。まさかだとは思うが、ノベルメイカーの説明書を開いてないだろうな?」

 カサカサって何かを擦る音がする。
 御名答! ってことか!

『なななな、な訳ないでしょう! アズちゃんは天界に棲む天使ですよ! 知識とか爆発するレベルで持っているのです! そもそも、知らないものを使うわけないでしょう!』

「その動揺っぷりが怪しすぎる!」

『べ、別にいいじゃないですか! それが一番強くて危険な武器なんですよ! ラノベヲタクだったら使いこなせるでしょうって女神様が』

「ヲタクって言うんじゃねぇ!」

 はぁはぁはぁ!
 なんで異世界転生してこんなに疲れんといけんのだ!
 こんなことしてても時間の無駄だ、なんでもいいからこのノートの性能を聞こうじゃないか!

「だーもういい! とりあえず、安全に正確に説明してくれよアズリエル! 扱いを誤るとワンチャン死ぬんだからな!」

『分かってますって! これだからノベルヲタクは急からしい』

 ぬぉぉぉぉ!
 っていうのはもう抑えろ。
 俺は27歳の立派な大人だ!
 鎮めろ、鎮まるのだ俺!

「で、まずはこの左端のページから説明してくれ」

『それは、ノベルさんのステータス情報ですよ。上から名前・年齢・体力・攻撃力・防御力・魔力・敏捷性・魅力の6つのステータス分類があります』

 確かに、アズリエルの言った通り、ステータス情報が事細かく記されている。
 ラノベではよくあるステータス表示法だな。
 ってか、俺の今の歳は17歳なのか。
 10歳も若返ってるのは非常にラッキーなことだ。
 老衰や病気のリスクも少ない、一番伸び代が大きい年頃だしな。

『それと、ステータス画面の下にあるのは、設定記入欄です。そこに、ペンの赤インクでしたいことを書けば、設定として世界が変動します』

 え、今なんて言った?
 設定変動?!

「なな、マジかよ! そんなことできるのかよこのノート!」

『そうみたいですね』

 そうみたいですねって!
 やっぱりこの武器を使ったことないんじゃないかよ!

『とりあえず、そこの説明は終わりです。右端のページを見てください』

「お、おう」

 と、俺は右端のページを開くと、バイクのメーターのようなものがある。
 それに、メーターの下に何やら箇条書き用の下線があるな?

『そこは、矛盾メーターです。この世界に矛盾が生じると自動的に矛盾メーターが上がります。それで、10になると持ち主の体が焼け落ちて死に至るっぽいですね』

 ぽいって言うなよ!
 それって一大事だろう!

「っ……まぁ合点はいった。つまり、その矛盾メーターってのは設定変動の上限を設けるためのものだろう」

『へぇ。そうなんですか?』

 俺に聞くなよダメ天使!
 お前が持ち込んだものだろうが!

「とにかく、俺が設定記入欄に『HPを無限にする』って書いた後に『HPを10%消費してダメージを与える魔法を持つ』とか書いたら当然矛盾が生じるだろ? あまりにも強すぎる能力とかを書きまくると、世界の均衡が乱れて矛盾……エラーが生じるって仕組みだと思う。どうなんだアズリエル?」

『そうなんじゃないですかね? えぇ』

 アズリエルはあくびをして、クッキーみたいなお菓子をぽりぽりと頬張ってそう言う。
 彼女の姿は見えないが、声で何をしてるかくらいは分かるぞ!
 こいつ、真面目に仕事する気ないだろ!

「おいアズリエル! 真面目に仕事しろ! 俺、マジで死ぬかもなんだぞ!」

『そんなん言うんだったら、一回お試しで使ってみたらいいじゃないですか。設定記入欄に新たな設定を書いて』

「むぅ、確かにそれもそうだな」

 俺はペンを握り、赤インクをノックして出す。
 人生はじめての魔法が、これか。
 はぁ、最初だったら火炎弾とか氷弾とか撃ってみたかったものだ。

 しかし、どのような設定を加えてみようか。
 あまりにぶっ飛んだやつだとエラーが起きてしまうか?

『とりあえず無敵になるとかにしたらどうですか?』

 アズリエルはずびずびとストローで何かを飲みながら言う。

「……いいけど、大丈夫なんだろうな? 一発で矛盾メーターがMAXになって、俺が消し炭になったらどう責任を取ってくれるんだ?」

『大丈夫ですって。そんくらいは矛盾とは言いませんから』

 アズリエルは眠そうにそう言う。
 まぁ確かに、無敵ってのはラノベにしてはありきたりな設定だよな。
 まずは無敵って書いて、どれくらいの矛盾レベルになるかを試しておくのも意味ありげか。

 俺はアズリエルの提案に乗っかり、赤ペンで設定記入欄に『ノベルは無敵になる』と書いた。
 すると、突然ノートは大きな音を立てて震えだし、赤く光り始めたのだ!

「うえっはぁ?!」

『あ、ヤバイです! 早く無敵って情報を削除してください!』

 ノートはだんだん熱を帯び始め、悪役の秘密基地が爆発する前のような音を立てるのだ!

「はっ、無敵くらいなら何にもならんって言ってただろアズリエル!」

『かもしれないって言い忘れてました!』

「ってめぇ!」

 俺は熱くなるノートを地面に置いて、矛盾メーターを見る!

「矛盾メーターが9を指してるぞ! やりやがったなアズリエル!」

『だったら、無敵ってのはダメなんじゃないですかね~!』

「『かね~』じゃねぇよ! どうすればいいアズリエル!」

『無敵って書いたじゃないですか! それが矛盾点であるとメーターの下に記されてるハズです! 2以上カウントが増える設定を書くと、そこに表示されるみたいです! その部分に緑色のインクで【無敵は間違い】って書いてください!』

「なっ、そんなことで治るんだろうな! これで死んだら末代まで呪ってやるからな!」

 俺は急いで『矛盾点:無敵』と書かれた欄に緑インクで斜線を引き、隣に『無敵は間違い』と書いた!
 すると、アラートは消え、ノートから熱が引いていった。
 メーターも9から3に戻り、とりあえず矛盾は消えたようだが……。

「おいダメ天使」

『はひっ?!』

 机の上からペットボトルが落ちたような音が脳内に響き渡る。
 こんだけダメダメな情報を送りつけてきやがったんだ。
 どうせ、机の上は超絶汚いんだろうなぁ。

「頼む。頼むからちゃんとしてくれ。このままじゃ、俺、すぐ死ぬからな? な?」

『ご、ごめんなさい……バリボリッ』

「菓子を食うなこのクソガキがぁ!」
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