5 / 78
第一章 アズリエルとの出会い
2.ダメ天使・アズリエル
しおりを挟む俺はそんなことを言いつつも、少なからず期待はしている。
このノートに何か隠された能力があることを信じて!
俺はとりあえず右端のページを開く。
すると、やはり普通のノートではありえないような特殊な装飾が施されている。
何やらバイクのメーターのようなものがある。
針は3を指していて、プルプルと震えている。
0~10までの数字があり、0の部分の背景は緑色で、10に近付くにつれて色は赤に変わっている。
それと、10の部分にドクロマークが付いている。
色んな常識から察するに、メーターの針が10を指せば、俺は死ぬんだろう。
って何冷静に分析してるんだ!
一体なんだよこれ!
俺は口を歪ませながらノートの左末端を見ると、そこにはメーターではない装飾がある。
「俺の名前と、パラメーター?! それに設定記入欄ってなんだ!」
『はいはい~。そこはノベルさんのステータス情報が記されている箇所になりまして』
「それはわかるよ! 伊達にラノベは読んでないからね! この設定記入欄ってなに?!」
今までの異世界展開から逸脱している!
俺はもうこの世界の設定を把握するのをやめた!
今までだったら、「どうせこう言うことだろ?」ってラノベを読み進めていたが、今回はなにも分からん!
『あれ、女神様からは説明しなくていいって聞いてましたけど。ラノベヲタクだから』
「ヲタクって言うな! いや、流石に説明いるわこれは! アズリエル、説明してもらっていいかな?」
『はぁ、分かりましたよ準備しますって。ラノベヲタクでも分からないことはあるんですねぇ。』
「ヲタクって言うな! ラノベ好きって言い直せ!」
『ふーん。ぷいぷいっ』
俺はぷんぷん怒って空を見上げると、アズリエルは『あれってどこ置いたっけ?』と呟いて何かをガラガラと持ってくる音を立てる。
事務所から遠隔操作してるのか知らんけど、なんかのコードが机に当たる音とかストローでズビズビ何かを飲む音を立てるな!
世界観どうなってんだよ!
『はいはーい。では、ノベルメイカーの説明しますね』
ペラリと何かを捲る音が俺の頭の中に響く。
恐らくだが、俺に語りかけるためのマイク的なやつに紙が当たったな?
「おいアズリエル。まさかだとは思うが、ノベルメイカーの説明書を開いてないだろうな?」
カサカサって何かを擦る音がする。
御名答! ってことか!
『なななな、な訳ないでしょう! アズちゃんは天界に棲む天使ですよ! 知識とか爆発するレベルで持っているのです! そもそも、知らないものを使うわけないでしょう!』
「その動揺っぷりが怪しすぎる!」
『べ、別にいいじゃないですか! それが一番強くて危険な武器なんですよ! ラノベヲタクだったら使いこなせるでしょうって女神様が』
「ヲタクって言うんじゃねぇ!」
はぁはぁはぁ!
なんで異世界転生してこんなに疲れんといけんのだ!
こんなことしてても時間の無駄だ、なんでもいいからこのノートの性能を聞こうじゃないか!
「だーもういい! とりあえず、安全に正確に説明してくれよアズリエル! 扱いを誤るとワンチャン死ぬんだからな!」
『分かってますって! これだからノベルヲタクは急からしい』
ぬぉぉぉぉ!
っていうのはもう抑えろ。
俺は27歳の立派な大人だ!
鎮めろ、鎮まるのだ俺!
「で、まずはこの左端のページから説明してくれ」
『それは、ノベルさんのステータス情報ですよ。上から名前・年齢・体力・攻撃力・防御力・魔力・敏捷性・魅力の6つのステータス分類があります』
確かに、アズリエルの言った通り、ステータス情報が事細かく記されている。
ラノベではよくあるステータス表示法だな。
ってか、俺の今の歳は17歳なのか。
10歳も若返ってるのは非常にラッキーなことだ。
老衰や病気のリスクも少ない、一番伸び代が大きい年頃だしな。
『それと、ステータス画面の下にあるのは、設定記入欄です。そこに、ペンの赤インクでしたいことを書けば、設定として世界が変動します』
え、今なんて言った?
設定変動?!
「なな、マジかよ! そんなことできるのかよこのノート!」
『そうみたいですね』
そうみたいですねって!
やっぱりこの武器を使ったことないんじゃないかよ!
『とりあえず、そこの説明は終わりです。右端のページを見てください』
「お、おう」
と、俺は右端のページを開くと、バイクのメーターのようなものがある。
それに、メーターの下に何やら箇条書き用の下線があるな?
『そこは、矛盾メーターです。この世界に矛盾が生じると自動的に矛盾メーターが上がります。それで、10になると持ち主の体が焼け落ちて死に至るっぽいですね』
ぽいって言うなよ!
それって一大事だろう!
「っ……まぁ合点はいった。つまり、その矛盾メーターってのは設定変動の上限を設けるためのものだろう」
『へぇ。そうなんですか?』
俺に聞くなよダメ天使!
お前が持ち込んだものだろうが!
「とにかく、俺が設定記入欄に『HPを無限にする』って書いた後に『HPを10%消費してダメージを与える魔法を持つ』とか書いたら当然矛盾が生じるだろ? あまりにも強すぎる能力とかを書きまくると、世界の均衡が乱れて矛盾……エラーが生じるって仕組みだと思う。どうなんだアズリエル?」
『そうなんじゃないですかね? えぇ』
アズリエルはあくびをして、クッキーみたいなお菓子をぽりぽりと頬張ってそう言う。
彼女の姿は見えないが、声で何をしてるかくらいは分かるぞ!
こいつ、真面目に仕事する気ないだろ!
「おいアズリエル! 真面目に仕事しろ! 俺、マジで死ぬかもなんだぞ!」
『そんなん言うんだったら、一回お試しで使ってみたらいいじゃないですか。設定記入欄に新たな設定を書いて』
「むぅ、確かにそれもそうだな」
俺はペンを握り、赤インクをノックして出す。
人生はじめての魔法が、これか。
はぁ、最初だったら火炎弾とか氷弾とか撃ってみたかったものだ。
しかし、どのような設定を加えてみようか。
あまりにぶっ飛んだやつだとエラーが起きてしまうか?
『とりあえず無敵になるとかにしたらどうですか?』
アズリエルはずびずびとストローで何かを飲みながら言う。
「……いいけど、大丈夫なんだろうな? 一発で矛盾メーターがMAXになって、俺が消し炭になったらどう責任を取ってくれるんだ?」
『大丈夫ですって。そんくらいは矛盾とは言いませんから』
アズリエルは眠そうにそう言う。
まぁ確かに、無敵ってのはラノベにしてはありきたりな設定だよな。
まずは無敵って書いて、どれくらいの矛盾レベルになるかを試しておくのも意味ありげか。
俺はアズリエルの提案に乗っかり、赤ペンで設定記入欄に『ノベルは無敵になる』と書いた。
すると、突然ノートは大きな音を立てて震えだし、赤く光り始めたのだ!
「うえっはぁ?!」
『あ、ヤバイです! 早く無敵って情報を削除してください!』
ノートはだんだん熱を帯び始め、悪役の秘密基地が爆発する前のような音を立てるのだ!
「はっ、無敵くらいなら何にもならんって言ってただろアズリエル!」
『かもしれないって言い忘れてました!』
「ってめぇ!」
俺は熱くなるノートを地面に置いて、矛盾メーターを見る!
「矛盾メーターが9を指してるぞ! やりやがったなアズリエル!」
『だったら、無敵ってのはダメなんじゃないですかね~!』
「『かね~』じゃねぇよ! どうすればいいアズリエル!」
『無敵って書いたじゃないですか! それが矛盾点であるとメーターの下に記されてるハズです! 2以上カウントが増える設定を書くと、そこに表示されるみたいです! その部分に緑色のインクで【無敵は間違い】って書いてください!』
「なっ、そんなことで治るんだろうな! これで死んだら末代まで呪ってやるからな!」
俺は急いで『矛盾点:無敵』と書かれた欄に緑インクで斜線を引き、隣に『無敵は間違い』と書いた!
すると、アラートは消え、ノートから熱が引いていった。
メーターも9から3に戻り、とりあえず矛盾は消えたようだが……。
「おいダメ天使」
『はひっ?!』
机の上からペットボトルが落ちたような音が脳内に響き渡る。
こんだけダメダメな情報を送りつけてきやがったんだ。
どうせ、机の上は超絶汚いんだろうなぁ。
「頼む。頼むからちゃんとしてくれ。このままじゃ、俺、すぐ死ぬからな? な?」
『ご、ごめんなさい……バリボリッ』
「菓子を食うなこのクソガキがぁ!」
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
JC💋フェラ
山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない
AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。
かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。
俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。
*書籍化に際してタイトルを変更いたしました!
NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~
ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。
城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。
速人は気づく。
この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ!
この世界の攻略法を俺は知っている!
そして自分のステータスを見て気づく。
そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ!
こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。
一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。
そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。
順調に強くなっていく中速人は気づく。
俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。
更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる