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第一章 チート勇者の存在

14.転職!

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 ……光が止んだ。
 少しだけ力が抜けて行く感じがして、まるで射精した後の様にヤル気と根気が奪われる。

 な、なんだこれ?!

「……魔法を掛け終わりました。かなり特殊な職業の為、貴方の一番の素質だった【攻撃力と守備力の高さ】は失われてしまいましたけどね」

「はっ?! 待てよ女神様、俺の体がどんどん縮んでいくじゃねぇか! 何をしたんだ?!」

「はい。貴方は生まれつき肉体で戦う様に加護を受けていました。故に、攻撃職か特攻職として名を馳せていた事も知っています。ただ、ユウマ討伐にはそれは必要ない。貴方にはサポート職になって貰います」

「は、はぁ?! 嘘だろ!」

 俺は立ち上がり、走って姿鏡の前へと行くが、以前よりも踏み込みが弱い!

「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!」



 鏡に映るのが俺?!
 近所のスキル職人のメガネ野郎よりもガリガリの細々じゃねぇか!
 鍛えてた俺の体はどこに行ったんだよ!

 そ、それよりも職業はなんだ!
 サポート職なんて俺、全く興味無いんだけど!



【ギルディア・セクト・アーカムレス】

 性別:♂
 LV.75
 職業:デバッガー
 HP(体力):865
 MP(魔力):702
 ATK(攻撃力):143
 DEF(守備力):129
 SPD(脚力):352
 WIS(知力):920
 LUK(運):642

 努力値(MAX10)
 →レベル5上がる毎に★を貰え、振り分けると自分のステータスの基礎上昇率が上げる。特定の条件達成でランダムなステータスに★を得られる事もある。

 HP(体力):
 MP(魔力):
 ATK(攻撃力):
 DEF(守備力):
 SPD(脚力):
 WIS(知力):
 LUK(運):

 計 20個(レベル★15個+条件達成★5個、未振り分け★20個)

 特異個性

『mjg053nlqm6khcd80』

 wp0egtwg31mPm6742pmjpm4012。
 6ogpd3hdOerkG508mh。



「お、おい女神! 俺の職業、デバッガーって何だよ! 初めて聞いたし、スキル詳細も変だぞ!」

「そりゃそうでしょう。これは『女神スキル』です。私達、女神がこの世界・アンサルトを護る上で用いられるデバッグスキルって訳です。この世界の均衡が崩れる様な危険が出た時、女神はその原因を解決する為に練られた超激レアな代物なので、天界の者しか知り得る事の出来ない物ですから。ちなみに、1500年前の火山噴火を食い止めた事や、800年前に人間達が発案した新型氷結スキルの暴走を食い止めたのも、300年前に魔王の猛襲から人類を守った伝説 『女神伝説』も全て『女神スキル』で成した業です」

「そ、それってつまり、俺は今、女神様と同じくらい強力なスキルを手に入れたって事か?!」

 俺は痩せ細った体を見つめ、力の出ない右腕と左腕の筋肉を瞬間、震わせる。
 ……こんな雑魚そうな体で、女神様と同じくらい強い力を秘めてるだなんて、有り得ない。
 こ、こんな力があれば、俺はユウマおろか、魔王も倒せたりするんじゃ。


「変な考えを巡らせるのは辞めなさいギルディア!」

 と、フィローラ様は俺の髪の毛を引っ張り倒される!
 う、嘘だろ、姉貴の小さな体如きに倒されちまうなんて!

「ギルディア、私は魔王を倒す為にこの力を与えた訳ではありません! あくまで『ユウマを救う』事が一番の目的です! 慢心は人を穢す、そして過信は人間にとって猛毒です! 貴方は賢い、だからこそ私は信じデバッガーと言う職業を与えたのです! 貴方は今、ユウマと同じです! 突然受けた多額の資金に目が眩んで、『力を得た』と勘違いをして自身から滅びへと向かう亡者と一緒! 貴方は弱い、弱いんです!」

「わ、分かったよ。悪かったって……」

「いいえ、分かってない! 青いオーラが出てます! 『これくらいなら大丈夫』、そんな人間の腐った心が、私の心臓を7度も貫いたと言うのに、私の死は無駄だったと言うのですか?!」

 と、姉貴の体から涙が吹き出る。
 そ、そんなに怒らなくても……。


「……すみません、取り乱してしまいました。女神という身で在りながら、人を疑うなんて……。縋る偶像である筈の私が裏切りを恐れるとは、神失格ですね」

 フィローラ様はベッドの上に座り、頭を抱えて溜息を吐く。
 成る程、きっと彼女は疑心暗鬼になっているのだ、人間に対して。
 一度裏切られて、再び同じ生き物の思考を信用するなんて、考えてみれば難しい。
 俺だったら、ユウマみたいな屑鉄なんて叩き斬ってる、増して俺みたいな盆暗男を信用するなど。

「……取り敢えずです。取り敢えず、女神の力はこの世界において最も幅広い物質に対して効力を発揮します。ただし、それは『この世界の物のみ』であり、他世界から訪れた物性や物質には全く干渉し得ません」

「そ、それってつまり、ユウマには効果の無い力って事だろう? 先の話で、デバッガーは『サポート職』だと言ったな? それと話が食い違うが本当に大丈夫なのか?」

「はい、ユウマ自体には干渉はしません。彼に直接攻撃するよりも更に突き刺さるスキルがこの『デバッガースキル』なのですから」

 と、彼女は隣に座るようにとベッドをポンポンと2度叩く。
 表情を見る限り、これからが大事な話なのだろうな。
 ……仕方ない、まだ眠いが聞いてやるか。

「……これから、ユウマを討つ為の必殺の作戦をお伝えします。この作戦は、世界の理から逸脱した、いわゆる『外側の世界からの特攻』の話です。たとえ 理解が出来なくても、最後まで話を聞いてください。ユウマとの決戦の時に全てが分かりますから」

 彼女は俺の耳元に寄って来て、誘惑に似た行動を見せ、俺は少しだけ酔った。
 唇の奥から吐き出されるショートケーキの様な甘い息、そして真実を受け止めながら、俺は逐一 驚きを隠せずに居た。

 ……この世界、そんな事が……。



「貴方達の生きるこの世界は『神から造られた戯場あそびば』です。これを前提として宜しいですね?」
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