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第一章 チート勇者の存在
3.女神・フィローラ
しおりを挟む……急に目の前に現れた女性はそう言うと、ベッドの上に座る俺の手を急に取ってギュッと握って来た。
や、柔らかい!
どんな女を抱いた時よりも手は柔らかく、布団などよりもふかふかで気持ちが良い!
『どうか、どうか私の願いを叶えてくださいませ、勇者・ギルディアよ! ううっ……!!」
と、透けた姿のフィローラ様は俺の胸に飛び込んで来る!
ちょ、何だってんだ!
「フィローラ様! 一体どうされたのですか?! 【夜明け】の女神様は、確かユウマ様の付き添いの女神様だったと聞きましたよ!」
え、そうなのか?!
た、確かに、赤髪は女神・フィローラの姿の象徴とされるってのは有名な話だが。
てかそもそも、フィローラって言う女神は伝説上の人物で天女として空から見守ってるとか何とか……。
『はい、その通りでございます。私は勇者・ユウマの転生に携わった者です。丁度、二週間前に彼をこの世界に召喚し、最高神様から【ユウマを援護せよ】と任務を受けました。そして、私の恩恵の力【明けぬ夜は無い|《フィローラ・ディルシウスカー》】を与えて居ました。ユウマは私の恩恵の力の事を、チートだとかガチャがどうとか言って居ましたが……』
フィローラ様は涙ながらにクロフィアに答えると、腫れた目を俺に向けて唇を弱く噛んで見せた。
……成る程、何か事件の匂いがしやがる。
「フィローラ様、今ユウマって野郎はどこに居るんだ?」
俺は赤い髪を顔から払って彼女を慰めようとすると、クロフィアは焦って俺の手を止めさせようとする。
『良いのです、勇者・クロフィア。私もたまには慰めて欲しいのです』
「……フィローラ様、もしかして心が読めるんですか?」
『えぇ。或る程度は気迫やオーラで分かりますよ、貴方は今、怒って居ますね?』
「え、いいや……」
『……成る程、これは失礼しました、クロフィア。すぐに退きますね』
「べ、別に怒ってないし」
フィローラ様は何かを察した様に俺から離れると、くしゃくしゃになった顔を拭って俺の方に笑顔を見せた。
「……それで、フィローラ様。何故ユウマって芋男の側では無く、俺達の所へ? 何か有ったんだろう?」
『はい。貴方が予想している通りの事です。クロフィアはまだ状況を把握しきれて居ない様なので、説明しますね』
と、フィローラ様は掌を胸に当てて、目を瞑る。
光差す、突然目の前が明るくなり、そして俺達は何も見えなく成って行く!
「ちょ、どう言う事ですかフィローラ様!」
クロフィアが見えなく成って数秒後、フィローラ様は白い景色の中から囁く様に俺達に向けてこう告げた。
『……勇者・ユウマは慢心を極めました。そして、満たされぬ欲を劔とし、私の心臓を七度も貫通させたのです。……私は死に絶え、女神の恩恵の力で在る【明けぬ夜は無い】を奪われてしまいました』
つづく。
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