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第二巻 第三章 第一部 レクイエム
第三十九話 歓喜の歌
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第三十九話
Freude!
エータがバリトン声で叫ぶと、ウサギさん・ネコちゃん・クマさんが一斉に合唱を始める!
Freude!
瞬間、エータの後ろから後光が差し、彼の服が変わって行く!
そして、真っ白い騎士の様な服になるのだ!
金色のリボン、黄がアクセントで、彼の目が輝く!
光背から、さらに翼が生え、羽根が舞い散っていく!
Freude!
Freude!
――エータが歌っている曲は、交響曲第9番第4楽章の『歓喜の歌』である。
白くて優しい結界が広範囲を覆うと、そこから草が生え、花が芽吹く!
炎は消え、まるで楽園の様になっていくのだ!
命の喜びを儚くも綴ったこの歌には、人々を癒す力があるのである!
Freude, schöner Götterfunken, Tochter aus Elysium,Wir betreten feuertrunken, Himmlische, dein Heiligtum!Deine Zauber binden wieder, was die Mode streng geteilt;alle Menschen werden Brüder, wo dein sanfter Flügel weilt.
彼の歌のおかげで、私の魔力は何倍にも膨れ上がり、一時的ではあるが、継続治癒効果が備わる!
リュート君の『性欲の勇者』の力が魔力の底上げであれば、エータの魔法はその魔力の倍増だ!
つまり今の私は、普段の数十倍の力を持つ事になる!
「今だ、テルさん!」
「分かったよ! あぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
私は月に届くまで吠えると、私の周りに赤い光が差し、一帯に煙が立ち上る!
――そして、私の分身が現れたのだ!
「ウィリアム! 行くよ!」
「あぁ、行くよロッシーニ!」
ウィリアムにはなんの説明もしてないが、彼女は目の前に熱り立つレクイエムに目掛けて走り出す!
「「あうぅぅぅぅぅぅぅ!」」
――瞬間、私のファンファーレが鳴り始める!
走り出すと、私の心から音楽が流れるのだ!
白いエータの結界から飛び出ると、ファンファーレの衝撃がレクイエムまで響き届く!
レクイエムの髪が激しく揺れると、
「2人がかりだろうが、私には関係ねぇな! 興に乗ってきたぞ、かかってきやがれ!」
レクイエムは指揮棒を振ると、ボロボロになった人形の口元に、赤い十字架が現れる!
Dies irae,
人形が大声をあげたとともに、十字架が私たちに向けて発射される!
それはまるで流星群のようで、少しだけ目を奪われてしまう。
「赦しを乞え、人狼の王女! 死とは受け入れるものではない、与えられるものなんだよ! 手を組んで跪くならば安らかな死をくれてやるよ!」
「誰が殺されるものかっ! 最強の遺伝子の力、見せてやるっ!」
レクイエムが指揮棒を強く振ると、私たちの方に無数の十字架が降り注ぐのだ!
「エータに十字架が当たらないように、十字架を外に蹴飛ばして!」
「分かったよロッシーニ!」
私たちは地面は蹴り砕き、物凄いスピードで跳ね上がる!
マグマが噴き上がり、衝撃波でファンファーレが一瞬途切れる!
「おらぁぁぁぁっ!」
「こんにゃろぉぉ!」
私とウィリアムはお互いに迫る十字架を蹴ったり弾いたりして避け、レクイエムのところまで辿り着く!
レクイエムの不敵な笑みが見え、私は彼女を睨み付ける。
「レクイエムぅ!」
「おいおい、そんな特攻で私に勝とうってか?」
「うるさいっ!」
目標のレクイエムは目の前だ!
「ロッシーニ! レクイエムを蹴飛ばせぇ!」
ウィリアムは私の腕を掴むと、思いっきり一回転させる!
その勢いで、私は彼女に向かって一直線に飛んでいく!
「トドメだぁぁぁぁっ!」
「軽略だっつってんだろ!」
レクイエムに思い切り蹴り込もうとした瞬間、彼女の真後ろにいた人形が口を開いて奇音を発する!
dies illa,
瞬間、レクイエムの髪をかすめた十字架が、私の肩に突き刺さった!
「がふっ!」
「ロッシーニ!」
空中で滑空するウィリアムにぶつかると、勢いで彼女ごと下に落ちていく!
「甘っちょろいんだよ、この人狼如きが!」
solvet saeclum in favilla: teste David cum Sibylla!
レクイエムが指揮棒を振ると、私を心配したウィリアムの右腕にも十字架が突き刺さる!
「がっ!」
「私と同じ風景が観れると思うなよ、駄作!」
そして、壁のように広がる波紋を前に勢いをかき消されると、レクイエムの指揮棒の振り下げとともに地面に叩き落とされる!
「テルさんっ!」
――瞬間、エータの劇場の合唱が、私たちを包み込むように響き渡る!
Deine Zauber binden wieder, was die Mode streng geteilt;alle Menschen werden Brüder, wo dein sanfter Flügel weilt.
私とウィリアムはエータの白い結界に包み込まれると、刺さっていた十字架は消えて、ゆっくりと地面に降り立った。
貫かれた大穴がみるみる内に塞がり、魔力が再び最大値まで回復する!
――そして、白い結界は消えていった。
「ありがとう、エータ!」
ウィリアムはペッと血の混じった痰を吐き出し、エータの方を振り向く。
「あなたは、エータというんだね」
「う、うん! 二人は一緒のテルさんじゃないの?
「違うよ! 私はロッシーニ! こっちが分身のウィリアムだよエータ! 紹介遅れてごめん!」
「え、えぇ? どこ言う事だよテルさん!」
「後で説明する! とにかく私が分身のウィリアム! よろしくねエータ!」
「え、うん! よろしく!」
ウィリアムは手を振ってみせるが、実際、呑気に話してる暇はない!
レクイエムには一瞬で近づけるが、彼女の魔法をどうにかしない限り、直接攻撃はほぼ不可能であると知った!
「オペラ座に登ろうなどと愚かな! 聖域に踏み入れることはとどのつまり、生の理を破る事に匹敵すんぞ、汚らわしい種族の末裔が!」
レクイエムは指揮棒を私に向けて振り下げると、空気を切り裂く音波が私たちを押しつぶす!
「きゃぁぁぁぁぁっ!」
「ぐうぅぅぅぅぅっ!」
「テルさんたちっ!」
肉が千切れる音を脳で感じ、すぐに岩を蹴り上げて後ろに下がる。
私とウィリアムは、もう既に黒い鎧がボロボロに剥がれている。
今まで戦ってきた中で、ここまで早く鎧が無くなりそうになったのは初めてだ。
それほど、彼女の一撃は強力なのである。
とにかく、時間稼ぎが必要だ!
余裕な表情をレクイエムに、私は挑発しようと口を開く!
しかし、込み上げてくる血反吐を止めるために結局口を紡ぐ。
強がりな私でも、直撃を食らえば弱音を吐きたくなってしまう。
「ロッシーニ! 大丈夫なの!?」
「ウィリアムこそ!」
「私は正直、マジできついよ。近付きようがないんじゃ、私たちじゃ太刀打ちできない!」
私とウィリアムは上を見上げ、高笑いするレクイエムを睨み付ける。
「ほぉれどうしたどうした? お得意の機動力でここまで上がってこいよ地上人!」
レクイエムは油断のあまりに、タクトを置いて肘置きにもたれ掛かる始末だ。
「くっそぉ。とりあえず、レクイエムの攻撃をどうにか躱して、一撃を入れるしか――。ウィリアムはどう思う?」
「ロッシーニの策じゃ勝てないよ。そんなの、対策されてるに決まってるもん。勝てる気が全然しない」
珍しく、ウィリアムは弱音を吐いた。
一体、一体どうすれば勝てるんだ!
Freude!
エータがバリトン声で叫ぶと、ウサギさん・ネコちゃん・クマさんが一斉に合唱を始める!
Freude!
瞬間、エータの後ろから後光が差し、彼の服が変わって行く!
そして、真っ白い騎士の様な服になるのだ!
金色のリボン、黄がアクセントで、彼の目が輝く!
光背から、さらに翼が生え、羽根が舞い散っていく!
Freude!
Freude!
――エータが歌っている曲は、交響曲第9番第4楽章の『歓喜の歌』である。
白くて優しい結界が広範囲を覆うと、そこから草が生え、花が芽吹く!
炎は消え、まるで楽園の様になっていくのだ!
命の喜びを儚くも綴ったこの歌には、人々を癒す力があるのである!
Freude, schöner Götterfunken, Tochter aus Elysium,Wir betreten feuertrunken, Himmlische, dein Heiligtum!Deine Zauber binden wieder, was die Mode streng geteilt;alle Menschen werden Brüder, wo dein sanfter Flügel weilt.
彼の歌のおかげで、私の魔力は何倍にも膨れ上がり、一時的ではあるが、継続治癒効果が備わる!
リュート君の『性欲の勇者』の力が魔力の底上げであれば、エータの魔法はその魔力の倍増だ!
つまり今の私は、普段の数十倍の力を持つ事になる!
「今だ、テルさん!」
「分かったよ! あぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
私は月に届くまで吠えると、私の周りに赤い光が差し、一帯に煙が立ち上る!
――そして、私の分身が現れたのだ!
「ウィリアム! 行くよ!」
「あぁ、行くよロッシーニ!」
ウィリアムにはなんの説明もしてないが、彼女は目の前に熱り立つレクイエムに目掛けて走り出す!
「「あうぅぅぅぅぅぅぅ!」」
――瞬間、私のファンファーレが鳴り始める!
走り出すと、私の心から音楽が流れるのだ!
白いエータの結界から飛び出ると、ファンファーレの衝撃がレクイエムまで響き届く!
レクイエムの髪が激しく揺れると、
「2人がかりだろうが、私には関係ねぇな! 興に乗ってきたぞ、かかってきやがれ!」
レクイエムは指揮棒を振ると、ボロボロになった人形の口元に、赤い十字架が現れる!
Dies irae,
人形が大声をあげたとともに、十字架が私たちに向けて発射される!
それはまるで流星群のようで、少しだけ目を奪われてしまう。
「赦しを乞え、人狼の王女! 死とは受け入れるものではない、与えられるものなんだよ! 手を組んで跪くならば安らかな死をくれてやるよ!」
「誰が殺されるものかっ! 最強の遺伝子の力、見せてやるっ!」
レクイエムが指揮棒を強く振ると、私たちの方に無数の十字架が降り注ぐのだ!
「エータに十字架が当たらないように、十字架を外に蹴飛ばして!」
「分かったよロッシーニ!」
私たちは地面は蹴り砕き、物凄いスピードで跳ね上がる!
マグマが噴き上がり、衝撃波でファンファーレが一瞬途切れる!
「おらぁぁぁぁっ!」
「こんにゃろぉぉ!」
私とウィリアムはお互いに迫る十字架を蹴ったり弾いたりして避け、レクイエムのところまで辿り着く!
レクイエムの不敵な笑みが見え、私は彼女を睨み付ける。
「レクイエムぅ!」
「おいおい、そんな特攻で私に勝とうってか?」
「うるさいっ!」
目標のレクイエムは目の前だ!
「ロッシーニ! レクイエムを蹴飛ばせぇ!」
ウィリアムは私の腕を掴むと、思いっきり一回転させる!
その勢いで、私は彼女に向かって一直線に飛んでいく!
「トドメだぁぁぁぁっ!」
「軽略だっつってんだろ!」
レクイエムに思い切り蹴り込もうとした瞬間、彼女の真後ろにいた人形が口を開いて奇音を発する!
dies illa,
瞬間、レクイエムの髪をかすめた十字架が、私の肩に突き刺さった!
「がふっ!」
「ロッシーニ!」
空中で滑空するウィリアムにぶつかると、勢いで彼女ごと下に落ちていく!
「甘っちょろいんだよ、この人狼如きが!」
solvet saeclum in favilla: teste David cum Sibylla!
レクイエムが指揮棒を振ると、私を心配したウィリアムの右腕にも十字架が突き刺さる!
「がっ!」
「私と同じ風景が観れると思うなよ、駄作!」
そして、壁のように広がる波紋を前に勢いをかき消されると、レクイエムの指揮棒の振り下げとともに地面に叩き落とされる!
「テルさんっ!」
――瞬間、エータの劇場の合唱が、私たちを包み込むように響き渡る!
Deine Zauber binden wieder, was die Mode streng geteilt;alle Menschen werden Brüder, wo dein sanfter Flügel weilt.
私とウィリアムはエータの白い結界に包み込まれると、刺さっていた十字架は消えて、ゆっくりと地面に降り立った。
貫かれた大穴がみるみる内に塞がり、魔力が再び最大値まで回復する!
――そして、白い結界は消えていった。
「ありがとう、エータ!」
ウィリアムはペッと血の混じった痰を吐き出し、エータの方を振り向く。
「あなたは、エータというんだね」
「う、うん! 二人は一緒のテルさんじゃないの?
「違うよ! 私はロッシーニ! こっちが分身のウィリアムだよエータ! 紹介遅れてごめん!」
「え、えぇ? どこ言う事だよテルさん!」
「後で説明する! とにかく私が分身のウィリアム! よろしくねエータ!」
「え、うん! よろしく!」
ウィリアムは手を振ってみせるが、実際、呑気に話してる暇はない!
レクイエムには一瞬で近づけるが、彼女の魔法をどうにかしない限り、直接攻撃はほぼ不可能であると知った!
「オペラ座に登ろうなどと愚かな! 聖域に踏み入れることはとどのつまり、生の理を破る事に匹敵すんぞ、汚らわしい種族の末裔が!」
レクイエムは指揮棒を私に向けて振り下げると、空気を切り裂く音波が私たちを押しつぶす!
「きゃぁぁぁぁぁっ!」
「ぐうぅぅぅぅぅっ!」
「テルさんたちっ!」
肉が千切れる音を脳で感じ、すぐに岩を蹴り上げて後ろに下がる。
私とウィリアムは、もう既に黒い鎧がボロボロに剥がれている。
今まで戦ってきた中で、ここまで早く鎧が無くなりそうになったのは初めてだ。
それほど、彼女の一撃は強力なのである。
とにかく、時間稼ぎが必要だ!
余裕な表情をレクイエムに、私は挑発しようと口を開く!
しかし、込み上げてくる血反吐を止めるために結局口を紡ぐ。
強がりな私でも、直撃を食らえば弱音を吐きたくなってしまう。
「ロッシーニ! 大丈夫なの!?」
「ウィリアムこそ!」
「私は正直、マジできついよ。近付きようがないんじゃ、私たちじゃ太刀打ちできない!」
私とウィリアムは上を見上げ、高笑いするレクイエムを睨み付ける。
「ほぉれどうしたどうした? お得意の機動力でここまで上がってこいよ地上人!」
レクイエムは油断のあまりに、タクトを置いて肘置きにもたれ掛かる始末だ。
「くっそぉ。とりあえず、レクイエムの攻撃をどうにか躱して、一撃を入れるしか――。ウィリアムはどう思う?」
「ロッシーニの策じゃ勝てないよ。そんなの、対策されてるに決まってるもん。勝てる気が全然しない」
珍しく、ウィリアムは弱音を吐いた。
一体、一体どうすれば勝てるんだ!
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