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第一巻 第二章 魔王軍殲滅戦線
第二十六話 性欲には抗えぬ
しおりを挟む月明かりが美しい夜。
2人の性に飢えた猛獣が、今ベッドの上で横たわっている。
カノンの淡い唇が近づくにつれ、鼻息が荒いことが分かった。
――カノンとのキスなんて、もう最高峰のご褒美じゃないか。
最初は何をすればいい、キスした後、すぐベロ入れたらダメだよな!?
こういうの初めてすぎて、何をすればいいのか分からない!
くそ、ネットで事前に調べておけば良かった!
「リュート」
彼女の厭らしい声で、俺のエクスカリバーは天を突く勢いで上がっていく!
うおぉ、こうなったら、行くところまでイッてやるぞ!
と、突然ガラガラとスライドドアが開く音が。
「あっ」
声を漏らしたのは、アイネだった!
俺は寝転がり、カノンは俺の上に乗っている。
この状況を見たアイネは、なんの声もあげずにただずっとこちらを見ていた。
「ちょ、ちょ! 違うのアイネ! これはその、転けたらちょうど一回転してこうなっちゃっただけだから!」
おいおい、一回転の必要性はなんだ。
もう弁解できないだろこの状況。
アイネはびっくりするほど表情を変えず、恥ずかしがりも笑ったりも焦ったりもしなかった。
この子の頭の中で、多分一番いい方法を算出しているのだろう。
「アイネ~! リュート君は起きてるぅ?」
「早くリュート様が起きるといいですわね」
この声、テルとアリアだ!
恐らく、カノンが帰ってこないものだから、様子を見にきたのだ!
この状況を見られたら、なんかよく分からんけど、色々やばい気がする!
カノンは完全に脳内コンピュータがぶっ壊れてブルブルと震えている!
恥ずかしさが許容量オーバーして思考停止しているのだ!
「はぁ、こんなことだと思った。私が先にドアを開けたことを感謝して」
とアイネは俺たちに呟くと、
「リュート、まだ寝てる。カノンはこっちにはいなかった」
と、テルたちの方に向かって証言してくれている。
「え~? じゃあ、カノンはどこに行ったんだろう? エータの成長を見せたかったのにー、ぶー」
「カノンったら、もしかしてお花摘みで気張っていらっしゃるのかしら?」
「アリア。上品と下品が入り混じってる」
テルとアリアの声が遠のいて行く。
俺たちはなんとか事なきを得たのだが、
「お幸せに!」
と、アイネはウインクをしてサムズアップを見せる。
トンとスライドドアが閉まると、俺たちはもう一度見つめ合った。
しかし、先ほどのように沸騰した思考はなく、咳払いをしながらカノンは椅子に座ると、顔をベッドに叩きつけて動かなくなった。
完全に、オーバーヒートしたな、こりゃ。
「リュート。私を魔法で八つ裂きにして」
「……」
――正直、カノンがここまで積極的にくるとは夢にも思わなかった。
よくよく考えてみれば、俺は何十時間も風呂に入っていない。
今度、またチャンスがあったときには、ちゃんと風呂に入った状態でありたいものだ。
可愛かった。
本当に美しいと思った。
恐らく俺は、この美女とのエッチのチャンスを一生悔やみながら生きて行くのだろう。
そうならないために、彼女にちゃんと伝えなければならないと思った。
カノン、君が好きだ、と。
まだ出会って3日しか経っていないから、そんなことは言えないけどね。
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