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第一巻 第一章 クラシックの世界からやって来た!
第一話 巨乳黒髪ロングの子
しおりを挟む「私と付き合ってください!」
春風が優しく頰を撫で、鼻の先に俺好みの香水の香りが漂ってくる。
美しい花が咲き誇り、まるで理想郷の真ん中に立っているような感覚に陥り、空を見上げて暖かな陽射しを目の奥に吸い込みながら瞼を閉じる。
雲一つない美しい快晴、種のわからない白い鳥が一羽だけ俺の風景の中を横切って行った。
桜舞い散る季節半ば、一人の美少女が俺に向かって頭を下げている。
え、なに!? フラッシュモブの練習か何か? 誰この人!?
しっとりと唇に塗った薄い口紅、綺麗に乗せられたファンデーション。
ファッションモデルだと言われても疑わないレベルのオシャレ姿。
俺はいきなりの告白に、にやけることしかできずに口を尖らせる。
間抜けな顔を醜態に晒さぬように、俺はハッとして口に手のひらを当てる。
落ち着けリュート! これはハニートラップだ! こんな美女が、なんの理由もなく俺なんかに告白するわけがない!
何が目的だ? 俺の人権を剥奪する悪の軍団の一員か? 俺を捕獲するための策略か!?
俺みたいな、石の裏に何十匹も潜むダンゴムシの一匹に対して告白など考えられない。
まさか、家族を人質に取られ、俺に告白をせざるを得ないとかーー。
「えっと……」
俺は頰を掻きながら、ふと桜の散る姿を眺めてみる。
踊りながら舞い降りる花びら達は、まるで俺に向けて落下してくるように見える。
まぁ、それは俺の精神状態による錯覚なのだろう。
頭を下げ続ける少女は清楚系女子だということは髪の色でわかる。
人形のように綺麗な顔立ちで、こんな美女は見たことないってレベルの神々しいお姿。
少なくとも日本人ではないことはなんとなく理解した。
長い髪が風でなびかれる。
直角定規を当てたくなるような腰の角度。
平坦な彼女の背中に一枚、二枚と桜の花びらが着地する。
美しきかな、春うらら。
まぁ、あたりは弾丸飛び交う戦場のようになりつつあるのだが。
「おいリュート! どんな美人局か知らんが、こんなに可愛い女の子に告白させるとか極悪非道だぞ!」
いきなりガソリンをぶっかけて火をつけやがったのは、俺の親友のエータだった!
それを皮切りに、
「なんだと!? あの男、本当に人間か!?」
「ゴブリンが踏み入れていい領域じゃないぞ!」
「誰か、殺虫剤持って来い!」
俺の方に、空き缶やペットボトルを投げてくる始末!
「そーらやっちまえ! あの醜悪な男に鉄槌を! 祭りだ祭りだ!」
エータの野郎! さっきからこの状況を楽しんでやがる! とんでもねえぞなんだこれ!
「どうか! おねがいします!!」
女の子の一言で、一気に空気が止まった。
俺は、キョロキョロしながら現状を確認する。
ここはたった今、大学の入学式が終わったばかりの出入り口の前。
少し開けた広場で友達と駄弁ってたらこんなふうになっていたのだ。
はい、速攻意味わかんねぇ。
俺たちから数メートル距離を置いたオーディエンスが輪を作り、俺がどう答えるかを見つめている。
眼球から放たれる熱視線が痛く頰や胸に突き刺さり、今にも心臓の風船が弾け飛びそうだ!
「どーすんだ! 早く答えろ!」
歓声なのか悲鳴なのか、俺の周りはうるさくて仕方がない。
オーディエンスから投げ込まれた声は、俺の鼓膜を破るかのような攻撃性を持っていた。
それもそのはず、いきなりの告白だ童貞諸君?
こんな美少女の告白を外から見ている自分の方が恥ずかしくなるだろう、えっちを知らない亡者どもめ!
しまった、俺も亡者だった。
嫉妬を抑えられない大衆が一気に俺の体を焼き尽くすように見守る。
あついあつい! 視線が痛い!
「おねがいします! おねがいします!」
ただ、それだけを連呼する美少女。
俺は、キュッと引き締まったボディラインをまじまじと見る。
何度も頭を下げる拍子、おっぱいがたるんと重力で落下して隙間から綺麗な肉がチラチラと見える!
たぷんたぷんのお肉が上下に揺れるので、俺はその動きに合わせて首を縦に振ってしまった。
もう少しで出っ張りまで見えそう!
俺は気づけばチューチューがトレインしそうなダンスを踊っていた。
これこそが『美女』の谷間であり、俺が大学で求める至高のラッキー風景なのだ!
めっちゃエロい身体つきだなぁ……。
でも、もう少し腹回りがムチムチしてた方が俺好みかもしれん……。
嗚呼、こういう女の子を素っ裸にして抱き枕にしたら一生寝ずに済むのになぁ。
ストレス社会なんて言葉、一撃で吹っ飛ぶぞ。
むくむく。
おっと、ここは大学だった。
昼からこんなにガチガチになってしまったら真夜中の楽しみまで取っておくことはできないだろう。
この風景を思い出すのはベッドの上で左手にくしゃっとしたティッシュを握った状態の時にしよう。
と、言っているがこれはエッチとは別の話。
状況を考えろ、どう考えてもおかしい。
俺はゆっくり女の子に手を差し伸べた。
決心した、ここで言わなければいつ言う。
美しい白い鳥は白鳥、でも鳥は鳥だ。
突然渡された肉を処理・確認せずに生で食う馬鹿がどこにいる?
これは毒だ、食えば俺は忽ち、死ぬ。
俺はふうっと息を吐き出し、深呼吸して、こう唱えたのである。
「あの、なんで俺なんすか?」
俺のスカした言葉が空を斬り、途端に男たちは一斉に怒号をあげた!
「うぉぉぉぉぉぉぉ!! ころせぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
男たちは俺を担ぎ上げると、わっしょいの逆を行うのだ!
逆とはつまり、地面に叩きつけてフルボッコだ!
「女の子の告白を踏み躙ったこの男は邪悪だ! 諸悪の根源だ! 生かして返すな! ひゃーっはぁ!」
エータの楽しそうな声が響き渡ると、歓声が一気に俺を包み込んでいった。
な、なんだよ一体!!
海賊の時代でも始まんのか!
俺の一言で男達を掻き立てたってか?!
そんな春風が涼しくも、熱い熱視線が俺の心を温める。
今日は晴れ舞台だ、今日から大学生活が始まる予定だったのに。
俺はふと、告白をしてきた女の子の表情を見たが、全く慌てていない様子だった。
まるで、まるでこうなることが分かっていたかのような表情。
一体、なんなんだコイツは。
お、いい感じにあの子の下乳が見えた。
俺はもうそれだけで満足である。
つづく。
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