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奪還の障壁
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ふと気が付くと、いつもの居間のソファに座っていた。
少しの間うたた寝してしまっていたようだ。
「 どうかしましたか? 」
心配そうに声をかけてくれるクラーヴィオ。
「 いろいろありましたからね、疲れが出たんでしょう 」
優雅に微笑むファザーンの言葉に、私は謝罪し話に戻る。
何だったんだろう。暗闇の中、何かがかすかに見えた気がしたんだけど……。
すぐにまた暗闇に戻ってしまった。
「 とにかく、儀式まで日がないのに決定的な打開策も見つかりません 」
優雅な微笑みから一転、厳しい視線であたりを見渡すファザーンは一旦言葉を切った。
「 ダメでもともと、サラエリーナを取り戻しに行こうと思います 」
「 でも、ガルディアもナバート師も機が熟すまで危険だって…… 」
私は思わず疑問を口にする。
私の声に視線を向けたファザーンは頷いて言葉を続ける。
「 そう。ナバート師は言いましたよね? 混乱させれば自我が崩壊すると 」
そう、確かに不安定な状態では混乱して自我が崩壊してしまい治すことは困難になると。
私は静かにうなづいた。
「 要は、混乱させなければいいのです 」
ファザーンの言葉に絶句したけれど、少しの沈黙の後、声を上げたのはクラーヴィオだった。
「 意識を失ってる間に、奪還するっていうことか? 」
「 そういうことです。 私に考えがあります 」
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
ファザーンの考えを聞いた私は、クラーヴィオと共に嘆きの谷の底を目指した。
ナバート師からもらった抜け道の地図を持ち、サラエリーナをいち早く保護するために。
ファザーンは、なんだか仕掛けを施すと言って後で合流する約束をして
街へ消えていった。
ケルドは、やはり動ける状態ではないということで、ナバート師が解毒剤を
完成させたときに薬を届けるという段取りになった。
街は星祭の準備でにぎわっていたが、ユーラーティ神殿の裏手は街の喧騒けんそうが
別世界の事ように静まり返っていた。
嘆きの谷から吹き上げる風が、禍々 まがまがしいものを運んでくるかのように身震いする。
「 大丈夫ですか? 」
緊張している私の様子に、クラーヴィオが声をかけてくれる。
「 サラエリーナの不安を思ったら、このぐらいで怖がってられません 」
私は、嘆きの谷のある方を睨み据える。
「 いい眼をしていますね。やはり血は争えませんね 」
クラーヴィオのささやきの意味を考える余裕もなく、抜け道のある場所へ急いだ。
抜け道付近は人の気配がなく、身を潜めつつ進むが抜け道の入り口へ
難なくたどり着いた。あっけないくらい。
て嘆きの谷への隠し通路の扉を開き、ようやく見えてきた
洞窟の入り口に駆け込もうとした。
「危ない!!!」
緊迫した声と共に、後ろから強く腰をつかまれて引き戻される。
と同時に、何か細かいものが目の前を散っていく。
私の前髪の一部だと気が付くのに数秒かかる。
「おやぁ? 無駄にぃ機敏な事ねぇ、子ネズミちゃ~ん」
鼻にかかった女の声があたりに響き渡る。
私を引き戻したクラーヴィオは、後ろ手に私をかばい、その執念深い女、アダラを睨み据える。
少しの間うたた寝してしまっていたようだ。
「 どうかしましたか? 」
心配そうに声をかけてくれるクラーヴィオ。
「 いろいろありましたからね、疲れが出たんでしょう 」
優雅に微笑むファザーンの言葉に、私は謝罪し話に戻る。
何だったんだろう。暗闇の中、何かがかすかに見えた気がしたんだけど……。
すぐにまた暗闇に戻ってしまった。
「 とにかく、儀式まで日がないのに決定的な打開策も見つかりません 」
優雅な微笑みから一転、厳しい視線であたりを見渡すファザーンは一旦言葉を切った。
「 ダメでもともと、サラエリーナを取り戻しに行こうと思います 」
「 でも、ガルディアもナバート師も機が熟すまで危険だって…… 」
私は思わず疑問を口にする。
私の声に視線を向けたファザーンは頷いて言葉を続ける。
「 そう。ナバート師は言いましたよね? 混乱させれば自我が崩壊すると 」
そう、確かに不安定な状態では混乱して自我が崩壊してしまい治すことは困難になると。
私は静かにうなづいた。
「 要は、混乱させなければいいのです 」
ファザーンの言葉に絶句したけれど、少しの沈黙の後、声を上げたのはクラーヴィオだった。
「 意識を失ってる間に、奪還するっていうことか? 」
「 そういうことです。 私に考えがあります 」
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
ファザーンの考えを聞いた私は、クラーヴィオと共に嘆きの谷の底を目指した。
ナバート師からもらった抜け道の地図を持ち、サラエリーナをいち早く保護するために。
ファザーンは、なんだか仕掛けを施すと言って後で合流する約束をして
街へ消えていった。
ケルドは、やはり動ける状態ではないということで、ナバート師が解毒剤を
完成させたときに薬を届けるという段取りになった。
街は星祭の準備でにぎわっていたが、ユーラーティ神殿の裏手は街の喧騒けんそうが
別世界の事ように静まり返っていた。
嘆きの谷から吹き上げる風が、禍々 まがまがしいものを運んでくるかのように身震いする。
「 大丈夫ですか? 」
緊張している私の様子に、クラーヴィオが声をかけてくれる。
「 サラエリーナの不安を思ったら、このぐらいで怖がってられません 」
私は、嘆きの谷のある方を睨み据える。
「 いい眼をしていますね。やはり血は争えませんね 」
クラーヴィオのささやきの意味を考える余裕もなく、抜け道のある場所へ急いだ。
抜け道付近は人の気配がなく、身を潜めつつ進むが抜け道の入り口へ
難なくたどり着いた。あっけないくらい。
て嘆きの谷への隠し通路の扉を開き、ようやく見えてきた
洞窟の入り口に駆け込もうとした。
「危ない!!!」
緊迫した声と共に、後ろから強く腰をつかまれて引き戻される。
と同時に、何か細かいものが目の前を散っていく。
私の前髪の一部だと気が付くのに数秒かかる。
「おやぁ? 無駄にぃ機敏な事ねぇ、子ネズミちゃ~ん」
鼻にかかった女の声があたりに響き渡る。
私を引き戻したクラーヴィオは、後ろ手に私をかばい、その執念深い女、アダラを睨み据える。
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