虫けら転生録

或哉

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57話 地上へと続く旅路は希望には満ちてない

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目を覚ます。
…いつの間にか眠っていたようだ。隣には龍の遺骸が転がっている。

…やっぱなんか釈然としないけど、何とか勝ったのか。
いや良いんだよ?楽なのは。
俺別に戦闘狂じゃないから、楽に勝って楽に強くなれるなら万々歳だ。


ただ、少しずつ強さが増していく程に、何だか俺の中で俺じゃない声がするような気がする。今気にしたって別に何か出来る訳じゃないが、なんかこう、むず痒い。
例えるなら、キッチンになんか虫っぽい何かがいるのは分かるけど、ソレが何か分からないみたいな感じ。殺虫剤をばら撒く訳には行かんけど、放っておくのもなんかヤダ。

うーん、まぁそうは言ってもどうしようもないし、気にしないで頭の片隅にでも捨て置いておく方が良いかもしれない。そう思ってしまうのもなんか精神操作とかの類の影響なのかもしれないけど。
今んとこ害無いしいいだろ。思考放棄では無い。決して。


という訳でぼーっとしながら龍の遺骸にかぶりつく。うむ苦い。
肉を引きちぎりつつ食らいついていて、龍の死骸を取り囲むように他の魔物たちの死骸が落ちてるのが見えた。どれもこれも今の俺とこの龍にとっては取るに足らないような奴らだが。
例えるなら蛹というか繭玉だった時の俺くらい。アレでも初期よりは大分強かったんだが、初期のベビーワームって実際どれくらい弱かったんだろか。
多分世界最弱だとは思うんだが。

と、ここでふと思う。
そういや、菌類とかってこの世界どうなってるんだろう。もし居るんだったら流石にベビーワームより弱いから最弱生物じゃない…いや何の慰めにもならんけど。そもそも菌と強さ張り合う事なんか無いっての。

……あれ?
脳内で一人思考に耽って次の肉を手に取ろうとして手を伸ばし、もう既にそこには何も無い事に気付く。俺もうこんなに食ってたっけ?いや、確かに毒混じりだからそりゃ苦くてなるべく意識外で食ってたのは否定しないが、幾らなんでも山のようにあった屍肉気付いたら食い尽くしてるなんてことにはならんやろ。
なっとるやろがい!!



という訳で地上に戻ろう。地上へご案内ー。とはいえ何もない登り坂洞窟歩いて登るだけなんだけどね。

…………は?
………………え??

俺は、今なんて言った?魔王?
そんなん会った事も無いし、そもそもこの世界に魔王が居るかどうかも怪しい。
なのに、俺は何故、何故魔王を倒す、なんて言った?
…いやまぁ、声帯無いからまだ話せんし、言ったというより考えた、の方が正しい。

……前世の影響か?
……よく考えれば、俺は前世の事を覚えていない。不自然なくらいに。
普段の生活についても、両親についても、自分の名前ですら思い出せない。なのに、所々モノは知っているし、ハマっていたと記憶しているRPGゲームのことやファンタジー漫画とかの事だけは嫌に鮮明に覚えている。

まるで、誰かに意図的に残されたかのように、様に思えたのだ。


ああ、もう、さっき深く考えないって切り替えたばかりなのに疑念が次から次へと湧いて出てくる。お前は一匹見つけたら数十匹は侵入してる蟻かよ。


疑念を払いつつ坂を登っていると、突然辺りが明るくなる。
地上へ出たんだろう。

ゆっくりと目が慣れていく。あぁ、懐かしい小鳥のさえずり、やっぱりこうじゃなくちゃね。自然はやっぱり癒やされ…

目が完全に慣れ、ソレを見上げる。

癒やされる可愛らしい小鳥のように囀っていたのは、10m超の怪鳥だった。
…お前、そんな声で鳴くのな。


「……チュン」
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