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31話 美少女と魔蟲
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ゴロン、と頭部が転がり、支えを失った身体がぐらりと傾く。
そうか。俺、人を殺したんだ。
やってしまえば、案外あっけないもので、正直罪悪感はほぼ無かった。
少し遅れて、ぐらりと奴隷達の体も傾いて、物言わぬ屍の様になる。
ただ一人、その少女だけは、泣き腫れた目に残る涙を拭い、身体を起こした。
少女と再び目が合う。向こうは怖く無いのだろうか?俺の今の見た目は異形の蟲。しかも、かなり巨大である。虫嫌いな人とかであれば、絶叫するか失神するかって見た目なのだが。
とかなんとか考えて、その少女の耳を見て察した。
ああ、この子エルフか。
エルフは森の民。森に住んでいるから、虫に対する嫌悪感が少ない、若しくは無いのかもしれない。
そのエルフの少女はキョトンとした様子でキョロキョロとしてから自身に繋がれている鎖に目を落とし、じゃらじゃら鳴らしてから三度目を合わせてくる。
鎖を切ってほしいらしい。
まぁ、他の廃人になってしまっている奴隷と繋がれたままでは移動出来ないだろう。
鎖を切れるだろうかとは思ったが、思っていたよりも鎖の劣化が激しくて、簡単ではなかったが噛み切れた。引いてる気がするのは気のせい。
というか、鍵を開ければ良かったね。
まぁ、切れたし良いでしょ。
実際、エルフ少女も嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねたり駆け回ったりしている。
「......!......?」
ニュアンス的に何かを聞いているのはわかるが、何を言っているのかが分からない。取り敢えず首をかしげるポーズをしておいて、まぁ、身体の各所に擦り傷や打撲はあるものの、これだけ元気なら大丈夫だろ。
じゃあ、達者で...と別れかけて、ふと思い出す。
Q ここはどこですか?
A 魔物いっぱいの危ない森です。
Q こんな森に少女を置き去りにしたらどうなりますか?
A 死にます。
だよなぁ...この娘が武術とかそういうのを極めてたりするようには見えないし、魔法使いにも見えない。放っておいたら死にそうな少女だ。
Q じゃあ何処かに連れて行く?
A 連れて行く場所がねぇよ。うるせぇよ黙れよ。
だからといって、これから一緒に過ごしてみる?
怪奇!虫に育てられた少女!!
...やだよ。というか、そういう子供って早死するって聞くし、できるだけ人里で成長させてあげたい。
ただ、人里の場所がわからん。見殺しにするのも後味悪いし、もう人里見つかるまで一緒に行くしか無さそうだ。
一先ず、彼女以外の奴隷たちを何とかしなければならない。
死んでしまった人はスキルの穴掘りで掘った穴に埋葬する。廃人になってしまって居るが、まだ生きてはいる人の処遇の判断は迷った。
エルフの子が何をしても反応しないし、骨が肉に食い込んで、激しく痛むはずだ。もう助からないだろう。
奇跡的に生きていたとしても、そんな大人数で行くのは無理だ。どうせいずれは死ぬ...
...ごめん。
かひゅう、かひゅうというか細い息が途切れて、俺に経験値が入った。
彼らの命の経験値だ。
エルフの子も、神妙な面持ちで手を合わせていた。
俺も、手を合わせずにはいられなかった。
全員を埋葬し終えて、その場には俺とエルフの子二人だけとなった。
何となく、食う気にはなれなかった。勿論、食ってたら、エルフっ子がカニバリズムじゃない限りは引かれていただろうから。そう自分で納得しておくことにした。
さて。どっちに行こうか。正直どこに行ってもあんまり変わらない。どっちに何があるか分からないんだもの。方向音痴じゃ決して無い。ただ森が広すぎるだけ。
とかなんとか考えていると、木々がざわざわと騒ぎ出す。比喩じゃなく、木がまるで動物のように動き出し、巨木の枝がまるでエスコートするように差し出される。
それが当然とばかりに、エルフっ子が枝に乗ると、たちまち木は上へと伸びていった。
...はい?
へー、エルフってこんな事もできるんだすごいねー。ははは。
んな訳あるかい。
慌てて羽を広げて飛び上がる。
高度100mくらいのところで、枝がぐるぐると足場を作っていて、そこからきょろきょろと見回すエルフっ子が見えた。
「......!」
何かを見つけた様子のエルフっ子。その先をよーく、目を凝らしてみると、街?壁?が見えた。ただ、この距離じゃ様子もわからない。全く、エルフは視力が良いのかな?
まぁ、取り敢えずあそこまでこの子を送り届けるとして。
...この子別に一人でも生きてそうじゃね?
そうか。俺、人を殺したんだ。
やってしまえば、案外あっけないもので、正直罪悪感はほぼ無かった。
少し遅れて、ぐらりと奴隷達の体も傾いて、物言わぬ屍の様になる。
ただ一人、その少女だけは、泣き腫れた目に残る涙を拭い、身体を起こした。
少女と再び目が合う。向こうは怖く無いのだろうか?俺の今の見た目は異形の蟲。しかも、かなり巨大である。虫嫌いな人とかであれば、絶叫するか失神するかって見た目なのだが。
とかなんとか考えて、その少女の耳を見て察した。
ああ、この子エルフか。
エルフは森の民。森に住んでいるから、虫に対する嫌悪感が少ない、若しくは無いのかもしれない。
そのエルフの少女はキョトンとした様子でキョロキョロとしてから自身に繋がれている鎖に目を落とし、じゃらじゃら鳴らしてから三度目を合わせてくる。
鎖を切ってほしいらしい。
まぁ、他の廃人になってしまっている奴隷と繋がれたままでは移動出来ないだろう。
鎖を切れるだろうかとは思ったが、思っていたよりも鎖の劣化が激しくて、簡単ではなかったが噛み切れた。引いてる気がするのは気のせい。
というか、鍵を開ければ良かったね。
まぁ、切れたし良いでしょ。
実際、エルフ少女も嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねたり駆け回ったりしている。
「......!......?」
ニュアンス的に何かを聞いているのはわかるが、何を言っているのかが分からない。取り敢えず首をかしげるポーズをしておいて、まぁ、身体の各所に擦り傷や打撲はあるものの、これだけ元気なら大丈夫だろ。
じゃあ、達者で...と別れかけて、ふと思い出す。
Q ここはどこですか?
A 魔物いっぱいの危ない森です。
Q こんな森に少女を置き去りにしたらどうなりますか?
A 死にます。
だよなぁ...この娘が武術とかそういうのを極めてたりするようには見えないし、魔法使いにも見えない。放っておいたら死にそうな少女だ。
Q じゃあ何処かに連れて行く?
A 連れて行く場所がねぇよ。うるせぇよ黙れよ。
だからといって、これから一緒に過ごしてみる?
怪奇!虫に育てられた少女!!
...やだよ。というか、そういう子供って早死するって聞くし、できるだけ人里で成長させてあげたい。
ただ、人里の場所がわからん。見殺しにするのも後味悪いし、もう人里見つかるまで一緒に行くしか無さそうだ。
一先ず、彼女以外の奴隷たちを何とかしなければならない。
死んでしまった人はスキルの穴掘りで掘った穴に埋葬する。廃人になってしまって居るが、まだ生きてはいる人の処遇の判断は迷った。
エルフの子が何をしても反応しないし、骨が肉に食い込んで、激しく痛むはずだ。もう助からないだろう。
奇跡的に生きていたとしても、そんな大人数で行くのは無理だ。どうせいずれは死ぬ...
...ごめん。
かひゅう、かひゅうというか細い息が途切れて、俺に経験値が入った。
彼らの命の経験値だ。
エルフの子も、神妙な面持ちで手を合わせていた。
俺も、手を合わせずにはいられなかった。
全員を埋葬し終えて、その場には俺とエルフの子二人だけとなった。
何となく、食う気にはなれなかった。勿論、食ってたら、エルフっ子がカニバリズムじゃない限りは引かれていただろうから。そう自分で納得しておくことにした。
さて。どっちに行こうか。正直どこに行ってもあんまり変わらない。どっちに何があるか分からないんだもの。方向音痴じゃ決して無い。ただ森が広すぎるだけ。
とかなんとか考えていると、木々がざわざわと騒ぎ出す。比喩じゃなく、木がまるで動物のように動き出し、巨木の枝がまるでエスコートするように差し出される。
それが当然とばかりに、エルフっ子が枝に乗ると、たちまち木は上へと伸びていった。
...はい?
へー、エルフってこんな事もできるんだすごいねー。ははは。
んな訳あるかい。
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高度100mくらいのところで、枝がぐるぐると足場を作っていて、そこからきょろきょろと見回すエルフっ子が見えた。
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まぁ、取り敢えずあそこまでこの子を送り届けるとして。
...この子別に一人でも生きてそうじゃね?
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