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28話 初めての邂逅
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ガラガラと激しい音が遠くから聞こえてくる。
音の発生源から俺に届くまでに、風に木の葉が擦れる音に紛れて、消え入りそうな程小さな音となってしまっているが、俺の野生で鍛えた注意力を舐めるなよ?
カサカサと、移動する音の発生源へ先回り。
どうやら結構速い速度で移動している様で、先回りしたつもりでも先に行けない。
仕方ないからまっすぐ追いかける。
いや待て。一回冷静になろう。俺は今何だ?
そう、魔物だ。虫の。歪な形の。
それが追いかけてくる。
新手のホラーじゃん。
...まぁいいや。今はとにかく人に会いたい。
もう一年誰とも話してないんじゃ!!いい加減発狂するぞ!
サミシイ。
ということで追いかける。我速度約500ぞ?
というわけで追い付くのも余裕なんですわはっはっは。
...あれ?なんかどんどん離されて行ってない?離されていってるな。
はい終わりでェェェす!!速度500くらいで調子に乗ってすんませんした。だから止まって。お願いだから。止まれっつってんだろうがぁ!!
途端、グワシャ、と大きな音が響いたと同時、ガラガラと言う音はしなくなった。
お?止まってくれたのかな?
暫く走って見えてきたのは、あらま馬車の凄惨な事故現場。熊の魔物に襲われて、逃げてて事故ったんでしょう。実際熊が雄叫びを上げながら荷物にあった食物を食っている。美味そうだな俺にも分けろ。とか言ってる場合じゃない。ひしゃげた死体は中々にグロいです。
中々大型な幌馬車で、荷物がそこら中に散乱しているが、真っ先に目についたのは、荷物の箱に紛れて震えている鎖に繋がれた人達だ。
恐らく、奴隷とかその辺だろう。ありきたりだが、こんな危険な森を通っているということは先ず間違いなく疚しい事があるということ。奴隷は違法なんだろう、多分。
良かった、転生先が奴隷制横行してる治安最悪世界じゃなくて。
...いやそっちのほうが幾らか楽かも。
ともあれ、コレが俺のこっちの世界での初めての邂逅となった訳だ。
「.........!?......!!」
何かを喚きながら、腰を抜かして失禁する、高そうな服を着た小太りのオッサン。うーむ、何言ってるのかわからん。言語が自動翻訳とか便利な機能は付いてない訳だ。まぁ、今虫だし。声帯無いから会話出来んし意味ないか。
取り敢えず、このまま放っておくのも寝覚めが悪いし、熊を追っ払うなり何なりしなければ。
同時に熊もこちらの存在に気づいたらしく、低い唸り声を上げて威嚇してくる。
こっちも羽を広げたり牙を鳴らしたりで威嚇してみるが、大した効果はない様子。寧ろ敵対意識が増えたかもしれない。まずったかも。
というか、冷静に考えたら、俺はこの馬車の人を救う義理はない。
恐らく違法奴隷商のオッサンは特に、だ。
奴隷の子達はまだ幼いのに気の毒だが、本当に正直に言えば自分の命の方が余っ程大事だ。まぁ、見過ごされるように祈っておくくらいは吝かではないが...
『お前はそれで満足か?』
...誰だっけ。
顔も名前も思い出せない誰か。ただ、懐かしい声が聞こえたような気がした。
多分、前世の記憶、なのだろうか。いつ誰に言われたかも分からないその、微かに怒気を孕んだ声に、頬をぶん殴られたような気がした。
あくまで空耳。だが、やけに鮮明だった。
...よく考えてみれば、この熊は馬車を追いかけ回していたってことで、つまり馬車と同程度に速いということ。もう臨戦態勢で俺に敵意を向けているから、逃げれば間違いなく追いかけて来るし、逃げ切れる訳無いよね。
...やるしか無いってか。
まぁ、俺実際運もあったにせよドラゴン倒した訳だし、手も足も出ないという訳では無かろう。
今まで見てきた中で唯一まだ絶対勝てんなって思うのが、あの初手封印してきた龍。あれだけ、なんというかオーラが全く違うというか、住んでいる、見ている世界が違う様な気がする。
あくまで何となくだけど。
それならまだしも、この熊ならまだ勝てそうだし、HPMPも満タンだ。
もし勝てなくても、足に怪我を負わせて逃げ切るくらいならなんとかなる筈。
先ずは...ちらりと荷物に紛れる繋がれた人達を見る。まだ幼い。5,6歳位の子もいるし、逃げられ無いだろう。何より、既に事切れた子達もまだ鎖に繋がれ、重りとなっている。ここで戦うのは巻き込むおそれも考慮して悪手だろうし、先ずはこの場から離れるとしよう。
あーあ、全く、面倒な記憶だよ。
スキル欄に、そっと《小さな勇敢》と追加された。
音の発生源から俺に届くまでに、風に木の葉が擦れる音に紛れて、消え入りそうな程小さな音となってしまっているが、俺の野生で鍛えた注意力を舐めるなよ?
カサカサと、移動する音の発生源へ先回り。
どうやら結構速い速度で移動している様で、先回りしたつもりでも先に行けない。
仕方ないからまっすぐ追いかける。
いや待て。一回冷静になろう。俺は今何だ?
そう、魔物だ。虫の。歪な形の。
それが追いかけてくる。
新手のホラーじゃん。
...まぁいいや。今はとにかく人に会いたい。
もう一年誰とも話してないんじゃ!!いい加減発狂するぞ!
サミシイ。
ということで追いかける。我速度約500ぞ?
というわけで追い付くのも余裕なんですわはっはっは。
...あれ?なんかどんどん離されて行ってない?離されていってるな。
はい終わりでェェェす!!速度500くらいで調子に乗ってすんませんした。だから止まって。お願いだから。止まれっつってんだろうがぁ!!
途端、グワシャ、と大きな音が響いたと同時、ガラガラと言う音はしなくなった。
お?止まってくれたのかな?
暫く走って見えてきたのは、あらま馬車の凄惨な事故現場。熊の魔物に襲われて、逃げてて事故ったんでしょう。実際熊が雄叫びを上げながら荷物にあった食物を食っている。美味そうだな俺にも分けろ。とか言ってる場合じゃない。ひしゃげた死体は中々にグロいです。
中々大型な幌馬車で、荷物がそこら中に散乱しているが、真っ先に目についたのは、荷物の箱に紛れて震えている鎖に繋がれた人達だ。
恐らく、奴隷とかその辺だろう。ありきたりだが、こんな危険な森を通っているということは先ず間違いなく疚しい事があるということ。奴隷は違法なんだろう、多分。
良かった、転生先が奴隷制横行してる治安最悪世界じゃなくて。
...いやそっちのほうが幾らか楽かも。
ともあれ、コレが俺のこっちの世界での初めての邂逅となった訳だ。
「.........!?......!!」
何かを喚きながら、腰を抜かして失禁する、高そうな服を着た小太りのオッサン。うーむ、何言ってるのかわからん。言語が自動翻訳とか便利な機能は付いてない訳だ。まぁ、今虫だし。声帯無いから会話出来んし意味ないか。
取り敢えず、このまま放っておくのも寝覚めが悪いし、熊を追っ払うなり何なりしなければ。
同時に熊もこちらの存在に気づいたらしく、低い唸り声を上げて威嚇してくる。
こっちも羽を広げたり牙を鳴らしたりで威嚇してみるが、大した効果はない様子。寧ろ敵対意識が増えたかもしれない。まずったかも。
というか、冷静に考えたら、俺はこの馬車の人を救う義理はない。
恐らく違法奴隷商のオッサンは特に、だ。
奴隷の子達はまだ幼いのに気の毒だが、本当に正直に言えば自分の命の方が余っ程大事だ。まぁ、見過ごされるように祈っておくくらいは吝かではないが...
『お前はそれで満足か?』
...誰だっけ。
顔も名前も思い出せない誰か。ただ、懐かしい声が聞こえたような気がした。
多分、前世の記憶、なのだろうか。いつ誰に言われたかも分からないその、微かに怒気を孕んだ声に、頬をぶん殴られたような気がした。
あくまで空耳。だが、やけに鮮明だった。
...よく考えてみれば、この熊は馬車を追いかけ回していたってことで、つまり馬車と同程度に速いということ。もう臨戦態勢で俺に敵意を向けているから、逃げれば間違いなく追いかけて来るし、逃げ切れる訳無いよね。
...やるしか無いってか。
まぁ、俺実際運もあったにせよドラゴン倒した訳だし、手も足も出ないという訳では無かろう。
今まで見てきた中で唯一まだ絶対勝てんなって思うのが、あの初手封印してきた龍。あれだけ、なんというかオーラが全く違うというか、住んでいる、見ている世界が違う様な気がする。
あくまで何となくだけど。
それならまだしも、この熊ならまだ勝てそうだし、HPMPも満タンだ。
もし勝てなくても、足に怪我を負わせて逃げ切るくらいならなんとかなる筈。
先ずは...ちらりと荷物に紛れる繋がれた人達を見る。まだ幼い。5,6歳位の子もいるし、逃げられ無いだろう。何より、既に事切れた子達もまだ鎖に繋がれ、重りとなっている。ここで戦うのは巻き込むおそれも考慮して悪手だろうし、先ずはこの場から離れるとしよう。
あーあ、全く、面倒な記憶だよ。
スキル欄に、そっと《小さな勇敢》と追加された。
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