運命の番は後天性Ω

yun.

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「やばいやばい、急がないと!」

俺は、粋敬大学附属病院の小児科医だ。

今日は俺の番である、同じ病院のバース科に勤務するつまに、俺たちの恩人である中村先生の息子さんと、そのパートナーのお相手が揃って受診するから、ヘルプに来てくれと言われていた。


朝イチにお二人が受診しに来るからと言われていたんだが、思ったよりも朝の小児科ミーティングが長引いてしまって、急いでいるところだ。


つまの診察室は分かっているから、そこにバックヤードから向かうだけだ。
バックヤードに入って数部屋通り過ぎると、異変があった。


急いでつまの診察室へ向かうと、俺の悪い予感が当たっており、異変のあった診察室は、つまの診察室だったのだ。


慌てて入室し、患者のひとりで、威圧を出している、須藤さんの名前を叫ぶ。
須藤さんは、周りが見えなくなってしまっているようだが、俺が叫ぶと視線があった。
須藤さんは瞬時に俺をαだと認識し、余計に威圧された。


必死に、ここにいるあなた方の主治医の夫だと伝えると、分かってもらえたようで、威圧がすうっとなくなった。


須藤さんは、丸まって頭を抱えている、中村さんに近づいている。


「大丈夫か?遅れてごめん。」

つまに話しかける。


「うん、大丈夫。ううん、来てくれてありがと。」

俺と番っているし、ΩでΩ数値が高く、そんじょそこらのαになら対抗できるほどの数値とはいえ、やはり顔色が悪い。
患者の手前、気丈に振る舞っている。


イスに座っているつまの頭を、自分のお腹に抱え、頭や背中を撫でる。
少しだが震えていた身体が、収まっていった。
番となっているとはいえ、α性の強いαからの威嚇は、やはりΩには負担だ。
知らず知らずに、身体が震えてしまったのだろう。


ふと前を向けば、中村さんが倒れるところだった。
しまった。
患者より番を優先してしまうのは、やはりαの本能なのだろう・・・
だが、医者としては失格だ。

倒れる中村さんを須藤さんが気づき、抱きとめたので、頭を打ったりはしていなが、すぐに処置が必要だ。
つまは、先程の震えはなんのその。さっと立ち上がり、次々に指示を飛ばしていく。


須藤さんに中村さんをベットへ寝かせるよう言い、処置をしながら、看護師に中村さんのご家族に連絡を取るように指示をし、俺には須藤さんをフォローしてと言う。


俺の番は、とても優秀だ。
そんなことを思いながらも、指示に従い、動揺している須藤さんを中村さんと離して、ゆっくりと話しをするため、別室へ連れ立ったのだった。
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