運命の番は後天性Ω

yun.

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それでも運がよかった

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「それでも、私は運がいいほうだと思います。中村先生になんとか、夫がアポをとりつけてくれて、私のことも、夫のことも中村先生が救ってくださったから。」


「そう、でしたか・・・」



「中村先生じゃなくても、たまたま運よく、後天性バース性に詳しい人に出会えれば、最悪の事態・・・亡くなることも減ると思うんですけどね。後天性バース性になる人自体が少ないから、人数にすればそんなもんか、と軽く考えられがちなんですが、後天的にバース性が変換した人の、年間50%は亡くなっているんです。」


「なっ・・・」


「悲しいですよね。せっかく運命の人に出会えたのに、運命の人に出会ってしまったからこそ、亡くなってしまうなんて・・・」


「そんな・・・」


「須藤さんの一挙手一投足が、中村さんの命に関わってくると、肝に銘じてくださいね。」


「はぃ・・・」


「今は”会わない”ことこそがそれにあたります。」


「この10日程、よくぞ我慢しました。でも、もう少し待ってあげてください。」


「はぃ・・・」


「これが、αにとって辛いことなのは、重々承知しています。それでも、今は耐えてください。中村さんとの未来をつかみ取りたいのならば。」


「・・・・私は、嫌われているのではないでしょうか。」


「ん?なぜです?」


「一度会ったきりで、あとは電話でしか話していませんが、いつも感情の分からない、淡々とした感じなんです。だから、嫌われているのではないかと思っていまして・・・」


「ああ、そういう風に教育を受けたか、もしくはあれが彼の通常運転なのでしょうね。私の前でも、そんな感じでしたよ。」


「そうなんですか・・・」


「大丈夫。運命の番だから。分かりにくいとしても、いずれ分かるようになるはずですよ。と、いうか。そういう彼だからこそ、分かってあげてほしいのです。ああいうタイプは無茶をしがちですからね。」


「はい・・・」


「少なくとも、私には須藤さんを嫌ったり、嫌悪しているようには見えませんでした。ただ単純に、自分が急にΩに変わることへの不安が強いように見えました。」


「そうでしたか。ちょっと自信が持てた気がします。」
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