転生令嬢の愛され生活

ぱんだ

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第二章 学園生活

29.学園祭 2

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―パチッ



「う~ん…」

「あっ!目が覚めましたわね。おはようございます、エマ」

「うん?ペネ?」

「はい!」



目を開けると見慣れない天井があった。私はヒューに運ばれてきてここ、三大宝石決定戦の控室のソファーで眠っていたらしい。今控室にいるのはペネと私だけだった。私は何が起こったのか少しずつ思い出した。

確か魔術の実験が終わった後にお、オリバーさんが///うっ、考えただけでさっきの恥ずかしさが蘇ってくるよ…はあ~、久しぶりに会ったというのに、まさかオリバーさんにぷ、プロポーズされるとは…



「大丈夫ですか、エマ?お顔がとても赤いですが…もしかして熱が!?」

「ううん、多分違うと思う。……そういえばペネ、私のこと『エマ』って呼んでくれたね!」

「ふふ、勿論ですわ。今は二人だけですもの」

「ありがとう。…あのね、ペネ。ちょっと相談があるんだけど」

「!何ですか、何ですか?このペネ、エマのお役に立つとお約束しますわ」

「それがね――」



私はペネに気絶した理由を詳細に話して、どうしたら良いか相談してみた。ペネは見るからに恋愛上級者みたいだったからだ。



「へぇ~、なるほど、なるほど。(まさか騎士団団長までもがエマの虜になっているとは…)これは、本当に面白くなってきましたわ」

「?何が?」

「いえいえ、こちらのお話ですわ。コホンッ、私が思うにエマは今現在齢七歳にして、『モテ期』に突入したのですわ」

「も、ももも、モテ期!?」



まさかこの世界にもそのような言葉があるとは…



「はい。今下町で流行りの『君と永遠の愛を』という恋愛小説があるのですが、そこでは主人公の女の子が周りの男性たちにどんどん求婚される話で、それを俗に『モテ期』と言うらしいですわ」

「へえ~、ペネって下町の小説も読むんだね」



ペネはザ・お貴族様みたいだから下町の小説を読んでいるイメージは無かったけど。



「ええ、父が家にいた時はよく隠れて読んでいましたわ。…それはともかく、エマは今、沢山の麗しい殿方に囲まれているのですよ。…で、エマ的に誰が好きなのですか?」

「いや~、私はあまりそういうのは」



急に来ましたね…せっかくペネの方に話が傾きそうになったのに。ペネはそう言うけど、皆はたぶん私のことを妹みたいに接していると思うんだけど…



「ペネ、たぶんオリバーさんとか他の皆も私を妹として見てると思うよ。だって私はまだ七歳だし、オリバーさんとだって十八歳も離れているんだよ」

「いえ、私の目に狂いはありませんわ。皆さんのエマに向けるあの熱い視線!あれはもう確実にエマのことが大大大好きですわ」

「そ、そんなに?」

「はい、長らくエマの学園生活を観察してきましたが、あの方々の情熱は他の殿方と比べて飛び抜けていますわ」



うん?『観察してきた』?



「ねえ、ペネ。私のこと監視してたの?」

「か、監視なんて、まさか!私はただエマのことがとっても心配で…」

「本当に?」

「ええ、誓いますわ。だって、エマはまだ七歳。本来なら初等科なのですよ。四歳も年上の方々と一緒だなんてだれでも心配しますわ」



そうなのかな?まあ、一理あるけど。それに、特に支障があったわけでもないから…



「うん、そうだよね。ありがとう」

「いえいえ。それよりエマ。大会まであと少ししか時間がないから早速準備しますわよ」

「うん!」



私達は控室を出て準備室へと向かった。



=================================



???視点



「皆様ようこそいらして下さいました。これより三大宝石決定戦を開催します」



司会の方がそう言うと講堂内は一気に暗くなり音楽がなった。隣にはあのホール公爵ご本人が座っている。何でも公爵のご令嬢がこの大会に出場するらしい。そこで一緒に応援しないかと誘われ、公爵にはとてもお世話になっていたのでぜひということで一番前の特等席に座っている。何故か王国騎士団団長のクロス卿もいらっしゃるが気にしないほうが良いだろう……



そういえば妹も仲の良い友人がこの大会に出場すると言っていたな。名前は聞いていなかったが、最後に出るというのは聞いた。果たして妹がいつも私に自慢している令嬢はどんな方なのだろう…



「エントリーナンバー1、中等第三ガンマクラス、デアナ=バークリー嬢」



おお、早速始まったようだ。ふむ、見た目はそこそこだけど、中身の魔力は薄汚れている。何処にでもいる普通の令嬢だな。



「公爵のご令嬢はどんな方なのですか?」

「うん?ああ、とても愛らしくて天使のような容姿に心優しい性格の子だ」



そう言う公爵は噂される氷のような表情ではなく、蕩けた表情だった。

本当に娘さんを大切に思っているんだな。



公爵やクロス卿と他愛もない話をしているといつの間にか残り二人となっていた。



「エントリーナンバー8、中等第一ベータクラス、ミア=ローデス嬢」



うん?何だあの令嬢は……他の令嬢と比べて明らかに魔力が汚れている。それもドス黒く。長年あらゆる人達の魔力を見てきたが、あんなに汚れた魔力は見たことがない。うわ、目が合ってしまった。ええ~、笑いかけてきたよ、怖い怖い…



「公爵、あの子はどういう…」

「ああ、そなたでも気付くか。あの令嬢は私の娘にちょっかいを掛けてくる非常に迷惑な子なのだよ。いっそのことあの令嬢の家を潰そうかと思ったが、あまりにもその当主が可愛そうでな…」



家を潰すって…でもこの人ならやりかねない…



私が公爵の言葉に恐怖を抱いていると、その令嬢の発表が始まった。前の方の令嬢達はピアノや知識を披露していたが、果たしてあの令嬢は何をするのだろうか…



「私が今から披露するのは魔術です!今までは中等魔法しか出来なかったのですが、今回初めて高等魔術を披露します」



驚いた。あんなドス黒い魔力でも高等魔術が出来るのか!?見るからにまだ十代前半、中等第一ということは十一歳か?本当に大丈夫だろうか?



「ではいきます!高等魔術、光の砲弾シャイン・キャノン!うわっ!」



まてまて、そんな攻撃魔法を大勢がいる前で普通放つか!?

令嬢が放った魔法はそのまま真っ直ぐ進み観客へと向かった。

これは大事になると思った私は直ぐにそこへ向かったが、ある人物が先に着いたかとおもうと、その人は何かつぶやいて、その直後には令嬢が放った魔法は跡形もなく消えてしまった。

ああ、こんな芸当が出来るのはあの方しかおられない。



「はあ~、折角私の大切な人の晴れ舞台を見ようと思ったのに、無駄な体力を使ってしまいました…ああ、疲れた」



疲れたと言っておきながら全然疲れていなさそうなこの方こそ、王国魔術師団の現帥団長、エルフィー=ホール様だ。それにしても高等魔術を消し去ってしまうとは本当に怖いな……そういえばホール卿がおっしゃった『大切な人』とは誰のことだろうか。ホール卿は魔術にしか興味がなかったはず。どういうことだ?



「流石だなエルフィー」

「おや、父上。それにオリバー、久しぶりですね。もしかして、お二人共あの天使を?」

「「勿論」」



私の予想からしてこの方々の目的は最後に登場する令嬢ではないか…今までのところ、どの令嬢に対しても興味を示していなかった。とういうことは、私とこの方々の目的(令嬢)は同じということか!?



「あ、ありがとうございます、ホール卿。で、では決定戦を再開します。因みに先程魔術を放った令嬢は退場という措置を取らせていただきました。続いてはエントリーナンバー9、中等第一デルタクラス、エマ=ホール嬢」



司会者がそう言うと観客は一気に静まった。そしてステージから出てきたのは文字通り『天使』だった。明らかに十一歳とは思えない、おそらく七、八歳ぐらいの女の子が出て来た。

ああ、この子が妹の友人で、公爵の令嬢、ホール卿の『大切な人』、エマ=ホール嬢か…

これはもうあの子の優勝だな。あれほど綺麗な魔力を見たことがない。

私は初めて初恋というのを経験した。







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