6 / 43
第一章 エマ=ホール
3.騎士団本部へ withクロス団長
しおりを挟む
自分はそんなに若くないと思っていたのに団長さんから『お嬢さん』と言われ続けて混乱してしまったが、近くにいた女性の騎士さんが小さい鏡を持ってきてくれて恐る恐る覗いてみると、そこには白金の髪に菫色のぱっちりとした瞳の超絶美少女がいた…えっ、これが私!?確かに団長さんがお嬢さんと呼ぶのも分かるかも。
私が鏡に見入っていると隣から
「じっくり見ているところ申し訳ないんだが、お嬢さん、お名前を聞いても?」
と、団長さんが話しかけてきた。ずっと鏡で自分の顔を観察していたのでたぶん自意識の強い子だって思われたかも…急に恥ずかしくなって、すぐに自分の名前を言ようとしたが――
「あれっ、何だたっけ?どうしよう、思い出せない…うっ、痛いっ!」
思い出そうにも思い出せない。考えれば考えるほど頭が割れるように痛くなり始めた。
「大丈夫かっ!」
団長さんや周りの騎士さん達も焦っている、(どうしよう、どうしたらいいの!?)
「頭が―(ドサッ)」
私は気を失ってしまった――
――パカラッ パカラッ
うんー?馬の足音?体が揺れている、ということは…
「馬に乗ってる―!?あれ、確かあの時気を失って―」
「目が覚めましたか?すみませんお嬢さん、本当は体調が悪かったら馬よりも馬車の方が良いのですが、あいにく私達全員、馬で来ていたので。頭はもう大丈夫ですか?」
後ろに団長さん!?ということは今私、団長さんと一緒に馬に乗っているのか。背後から団長さんの優しい(何か妙に甘い)声が…恥ずかしいっ///
「大丈夫ですか?」
「あっ、頭はもう大丈夫です。名前のことなんですが全然思い出せなくて…すみません」
「いえ、謝らなくて大丈夫ですよ。無理に思い出そうとしてまた頭が痛くなったら大変ですので。代わりに他のことをいくつかお聞きしてもいいですか?」
「あっ、はい、大丈夫です」
「お嬢さんはなぜあの森にいたのか、どこから来たのか、この2つです」
「…すみません、どちらも分かりません」
「そうですか…わかりました、今私達は王国騎士団本部に向かっている途中なのですが、そこに到着したら今日はゆっくり休んでもらってもいいので、明日、色々お嬢さんのことについて調べてもよろしいですか?」
「はい、分かりました」
おかしい…あの森で目が覚めたときは自分が何者で、どこから来たのか分かっていたような気がするのに、今は全然分からない。それに、一緒に馬で走っている周りの騎士さん達は私の方をちらちらと不思議そうに見ている。(何か私、変なのかな?)そんなふうに考えていると、近くを走っていた騎士さん達の話し声が聞こえてきた。
「(なあ、あの子の髪の色ってあれだよな)」
「(ああ、あれだ)」
ん?私の髪の色?確かにこの白金の髪は自分でも驚いたけど、周りの人達も赤とか緑とか同じくらい目立つ色だと思うんだけどな
「あのぉ、団長さん、私の髪の色って何か珍しいんですか?」
「…ええ、確かに珍しいですよ」
「私の他にこの髪の色の人っているんですか?」
「まあ、いるにはいるんですが…」
団長さんが答えようか迷っていると大きな建物が見え始め
「お嬢さん、あの建物が王国騎士団本部です。あと、先程のことについては後ほどお話しますね」
と団長さんはさっきの質問に対しては答えてくれず、代わりに目的地に到着したことを教えてくれた――
「あー、疲れたー(初めての馬で慣れていないせいもあるけど、団長さんが後ろから甘い?声で話しかけてくるから変に緊張しちゃったよ)」
先に団長さんが馬から降りて私が降りれるように手で私の体ごと上に持ち上げて降ろしてくれた。
「ありがとうございます、団長さん」
「いえいえ、それより私の名前はオリバー=クロスなので『オリバー』と呼んでくれませんか?」
えっ!?いきなり名前呼びは私にはハードルが高いよ~
「それはちょっと、恥ずかしいので…」
「…では妥協して『クロス』でお願いします(ニコッ)」
うわー、この笑みは断れないやつだ…
「分かりました、だん「クロス」」
「…クロスさん」
「はいっ」
くそー、こんなの恥ずかしすぎるよ/// 初めて出会ってまだちょっとしか経っていないのに
「では、中へ入りましょうか、おじょ…」
「?(どうしたんだろう)」
「(いつまでも『お嬢さん』と呼ぶのはだめだな)…お嬢さんが名前を思い出すまでの間、何とお呼びしたら良いですか?」
「えっと、そうですねぇ…うーん、ごめんなさい、思いつきません」
「……では、私がつけてもよろしいですか?」
どうしようかな?でもまあ、一応仮の名前だし、
「ええっと、じゃあお願いします」
そう言うとクロスさんは嬉しそうに微笑んで
「分かりました、そうですね……では、『エマ』はどうですか?」
『エマ』!さすがクロスさん、可愛い名前をすぐに思いつくなんて!
「どうですか?」
「はいっ!とても気に入りました!ありがとうございます、クロスさん!」
「そうですか、こちらこそあなたの名前をつけさしてくれてありがとうございます」
そうして私の名前は『エマ』となった。
=========================
エマが気を失って目を覚ますまでの間、オリバーは近くを走っていたバルデと話していた。
「団長、何をずっと考えておられるのですか?」
「ああ、バルデ、いや、この子が自分の名前が分からないと言っていたからな、どうしようかと」
「うーん、では団長がこの子に名前をつけたらどうです?」
「!…ああ確かにそうだな、もし彼女が了承してくれたら名前をつけてあげたいな」
「団長なんか嬉しそうですね」
「そうか?」
「ええ、この子に会ってからずっと顔が緩みきっていますよ」
「まさか!……いや、そうかもしれないな」
この子に出会って久しぶりに女性に興味を持った。これが好奇心によるものなのかそれとも……
「団長、もしこの子に名前をつけるなら何にしますか?」
「そうだな…少し考えてみる」
そうしてオリバーは何度も何度も考え『エマ』という名前を思いついたのだった。
私が鏡に見入っていると隣から
「じっくり見ているところ申し訳ないんだが、お嬢さん、お名前を聞いても?」
と、団長さんが話しかけてきた。ずっと鏡で自分の顔を観察していたのでたぶん自意識の強い子だって思われたかも…急に恥ずかしくなって、すぐに自分の名前を言ようとしたが――
「あれっ、何だたっけ?どうしよう、思い出せない…うっ、痛いっ!」
思い出そうにも思い出せない。考えれば考えるほど頭が割れるように痛くなり始めた。
「大丈夫かっ!」
団長さんや周りの騎士さん達も焦っている、(どうしよう、どうしたらいいの!?)
「頭が―(ドサッ)」
私は気を失ってしまった――
――パカラッ パカラッ
うんー?馬の足音?体が揺れている、ということは…
「馬に乗ってる―!?あれ、確かあの時気を失って―」
「目が覚めましたか?すみませんお嬢さん、本当は体調が悪かったら馬よりも馬車の方が良いのですが、あいにく私達全員、馬で来ていたので。頭はもう大丈夫ですか?」
後ろに団長さん!?ということは今私、団長さんと一緒に馬に乗っているのか。背後から団長さんの優しい(何か妙に甘い)声が…恥ずかしいっ///
「大丈夫ですか?」
「あっ、頭はもう大丈夫です。名前のことなんですが全然思い出せなくて…すみません」
「いえ、謝らなくて大丈夫ですよ。無理に思い出そうとしてまた頭が痛くなったら大変ですので。代わりに他のことをいくつかお聞きしてもいいですか?」
「あっ、はい、大丈夫です」
「お嬢さんはなぜあの森にいたのか、どこから来たのか、この2つです」
「…すみません、どちらも分かりません」
「そうですか…わかりました、今私達は王国騎士団本部に向かっている途中なのですが、そこに到着したら今日はゆっくり休んでもらってもいいので、明日、色々お嬢さんのことについて調べてもよろしいですか?」
「はい、分かりました」
おかしい…あの森で目が覚めたときは自分が何者で、どこから来たのか分かっていたような気がするのに、今は全然分からない。それに、一緒に馬で走っている周りの騎士さん達は私の方をちらちらと不思議そうに見ている。(何か私、変なのかな?)そんなふうに考えていると、近くを走っていた騎士さん達の話し声が聞こえてきた。
「(なあ、あの子の髪の色ってあれだよな)」
「(ああ、あれだ)」
ん?私の髪の色?確かにこの白金の髪は自分でも驚いたけど、周りの人達も赤とか緑とか同じくらい目立つ色だと思うんだけどな
「あのぉ、団長さん、私の髪の色って何か珍しいんですか?」
「…ええ、確かに珍しいですよ」
「私の他にこの髪の色の人っているんですか?」
「まあ、いるにはいるんですが…」
団長さんが答えようか迷っていると大きな建物が見え始め
「お嬢さん、あの建物が王国騎士団本部です。あと、先程のことについては後ほどお話しますね」
と団長さんはさっきの質問に対しては答えてくれず、代わりに目的地に到着したことを教えてくれた――
「あー、疲れたー(初めての馬で慣れていないせいもあるけど、団長さんが後ろから甘い?声で話しかけてくるから変に緊張しちゃったよ)」
先に団長さんが馬から降りて私が降りれるように手で私の体ごと上に持ち上げて降ろしてくれた。
「ありがとうございます、団長さん」
「いえいえ、それより私の名前はオリバー=クロスなので『オリバー』と呼んでくれませんか?」
えっ!?いきなり名前呼びは私にはハードルが高いよ~
「それはちょっと、恥ずかしいので…」
「…では妥協して『クロス』でお願いします(ニコッ)」
うわー、この笑みは断れないやつだ…
「分かりました、だん「クロス」」
「…クロスさん」
「はいっ」
くそー、こんなの恥ずかしすぎるよ/// 初めて出会ってまだちょっとしか経っていないのに
「では、中へ入りましょうか、おじょ…」
「?(どうしたんだろう)」
「(いつまでも『お嬢さん』と呼ぶのはだめだな)…お嬢さんが名前を思い出すまでの間、何とお呼びしたら良いですか?」
「えっと、そうですねぇ…うーん、ごめんなさい、思いつきません」
「……では、私がつけてもよろしいですか?」
どうしようかな?でもまあ、一応仮の名前だし、
「ええっと、じゃあお願いします」
そう言うとクロスさんは嬉しそうに微笑んで
「分かりました、そうですね……では、『エマ』はどうですか?」
『エマ』!さすがクロスさん、可愛い名前をすぐに思いつくなんて!
「どうですか?」
「はいっ!とても気に入りました!ありがとうございます、クロスさん!」
「そうですか、こちらこそあなたの名前をつけさしてくれてありがとうございます」
そうして私の名前は『エマ』となった。
=========================
エマが気を失って目を覚ますまでの間、オリバーは近くを走っていたバルデと話していた。
「団長、何をずっと考えておられるのですか?」
「ああ、バルデ、いや、この子が自分の名前が分からないと言っていたからな、どうしようかと」
「うーん、では団長がこの子に名前をつけたらどうです?」
「!…ああ確かにそうだな、もし彼女が了承してくれたら名前をつけてあげたいな」
「団長なんか嬉しそうですね」
「そうか?」
「ええ、この子に会ってからずっと顔が緩みきっていますよ」
「まさか!……いや、そうかもしれないな」
この子に出会って久しぶりに女性に興味を持った。これが好奇心によるものなのかそれとも……
「団長、もしこの子に名前をつけるなら何にしますか?」
「そうだな…少し考えてみる」
そうしてオリバーは何度も何度も考え『エマ』という名前を思いついたのだった。
0
お気に入りに追加
309
あなたにおすすめの小説
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
異世界転移した心細さで買ったワンコインの奴隷が信じられない程好みドストライクって、恵まれすぎじゃないですか?
sorato
恋愛
休日出勤に向かう途中であった筈の高橋 菫は、気付けば草原のど真ん中に放置されていた。
わけも分からないまま、偶々出会った奴隷商人から一人の男を購入する。
※タイトル通りのお話。ご都合主義で細かいことはあまり考えていません。
あっさり日本人顔が最も美しいとされる美醜逆転っぽい世界観です。
ストーリー上、人を安値で売り買いする場面等がありますのでご不快に感じる方は読まないことをお勧めします。
小説家になろうさんでも投稿しています。ゆっくり更新です。
異世界転生先で溺愛されてます!
目玉焼きはソース
恋愛
異世界転生した18歳のエマが転生先で色々なタイプのイケメンたちから溺愛される話。
・男性のみ美醜逆転した世界
・一妻多夫制
・一応R指定にしてます
⚠️一部、差別的表現・暴力的表現が入るかもしれません
タグは追加していきます。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
転生悪役令嬢の前途多難な没落計画
一花八華
恋愛
斬首、幽閉、没落endの悪役令嬢に転生しましたわ。
私、ヴィクトリア・アクヤック。金髪ドリルの碧眼美少女ですの。
攻略対象とヒロインには、関わりませんわ。恋愛でも逆ハーでもお好きになさって?
私は、執事攻略に勤しみますわ!!
っといいつつもなんだかんだでガッツリ攻略対象とヒロインに囲まれ、持ち前の暴走と妄想と、斜め上を行き過ぎるネジ曲がった思考回路で突き進む猪突猛進型ドリル系主人公の(読者様からの)突っ込み待ち(ラブ)コメディです。
※全話に挿絵が入る予定です。作者絵が苦手な方は、ご注意ください。ファンアートいただけると、泣いて喜びます。掲載させて下さい。お願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる