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ある意味活力を奪える訳で
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「こちらこそ浅はかな考えで進言してしまい申し訳ありませんでした」
A令嬢も丁寧な謝罪をした。
「いや君はよく考えて言ってくれたのだろう?私がもっとしっかりとしていればそんな徒労を味わう事も無かっただろうに」
「ですが私も殿下のお気持ちを理解しようとしていませんでしたわ。次期王として苦悩しているとわかっていたはずなのに、それを踏まえた発言を出来ていませんでした。
それに平民乙女、彼女を」
「甘く見ていた?」
「いえ過大評価しておりました。少し考えれば平民である彼女が危険性を知らないとわかったのに」
「危険性?」
二人の会話に図書員男子が疑問を投じた。
彼もまた地位だけで言えば極普通の平民だ。だから危険性が何なのか知る機会が無い。
「危険性とは野盗に襲われるとか、泥棒に狙われるとか、誘拐されて身代金の要求とか、そういう事件ですか?」
皇太子が『あぁ』と肯定した後に首を横に振る。
「それもだが、それは私達より貧しい中級以下の貴族や農家息子のような財を持つ平民の方が狙われやすい」
「何が違うのでしょうか」
「貧しくとも名門貴族なら私兵が強固なんだ。
名門に雇われたという肩書が欲しい者が大勢いる。給与が少なくてもそこで成果を上げれば引き抜き先がこぞって向こうからやってくるからな。
下級貴族でも金があれば引き抜きが出来たり、腕が立つと有名な者をスカウトも出来る。名門には劣るが貴族に雇われたという実績は作れる。
だが貧しい貴族は金も払えず、平民からしたらほとんどの場合名門以外の貴族はたいして変わりない。だから有能な護衛が集まらないんだ。
貧しいも貴族基準の話であれば平民より財を持っているし、それこそかなり貧しく破綻寸前な貴族と王族に匹敵する程の財を持つ貴族が血縁なんて事もあるからな。狙いやすいし奪いやすい。
平民に関しても相当名を上げた者じゃねければ中々肩書狙いは来ないうえに、下調べも貴族の住居に忍び込むにはある程度の見た目と知識が必要になるが…これはお屋敷で雇われていると思われる為だな。使用人の真似事をして忍び込む。だが平民の住居だとそもそも町中であるし大きな広い庭なんて持つ者少ないだろう?貴族にとってはステータスだが平民にとっては道楽だからな。外からでも覗き見が比較的安易だから、ただの町人のフリして周囲を探ればいい」
皇太子は人差し指と中指の二本を立てた。
「私の特別な女性となった場合危険なのは毒と事故だ」
「暗殺ですか…」
「違うぞ」
苦々しく漏らした図書員男子の呟きを苦笑して皇太子は否定した。
そう、物語の様にそんなセンセーショナルな事態になる必要は無いのだ。
「殺す必要なんて無い。私もA令嬢も何度か毒を盛られて事も事故を仕組まれた事もある。
二人とも運良く五体満足だが、殺そうと狙われた物より害を成せればいい程度の物が多かった。それの方が成功率も高く容疑者を犯人と立証するのが難しいからだ」
「害?怪我をさせれば成功という事でしょうか?」
「下品な話は平気か?」
「えっ、はい」
「子を成すのが難しくなれば成功。性交が出来なくなれば万々歳」
「性っ、」
真っ当な男性なので図書員男子は驚きはした物の平気だった。
むしろ周囲にいた箱入りの主に娘達が頬を赤く染め顔を背けたり、明らかな不快感を浮かべている。
「怪我を負って物理的にイチモツが潰されたりしたら性交しようにも突き立てる物も無ければ吐き出す物も無くなっているし、せいぜい互いに愛撫しあい心地よさを味わう程度しか出来ないだろう。張り型でも使えば相手を満足させる事は出来るだろうが子は無理だ。
事故は大体高い場所でわざとぶつかってきたり足を引っ掛けてこようとするパターンと、自然豊かな場所におびき寄せて上から岩などや木を落としてくパターンがあるな。どちらとも中々死ぬような目には合わないが、運が悪ければ一発だ。しかも両方事故と言い張れるぐらいにしておくから質が悪い。例え害があっても死んでなければ責任はせいぜい追放だ。処刑は出来ない。だって不幸な事故だからな。突き落とされた訳じゃないし、自然災害の予見は難しいだろう?
毒の場合は毒にも薬にもなる物を混ぜ込まれる事が多いな。勘違いされがちだが解熱剤は熱を下げる薬であって高熱を平熱にする物じゃない。一般的に処方される解熱剤ですら量を間違えれば熱が下がり過ぎて体の機能が低下し死に至る事もある。それが確実に盛ったという証拠が見つからなければ、自分用の薬だと押し通されてしまう。
鉱物系の毒なんてわかりやすい物使う奴なんていない。一番多いのが花だな。庭園にいくらでも咲いているし観賞用として広く使われているから手に入りやすい。何より見た目が野菜そっくりな種類が多くある。
それに砂糖や塩だ。少しづつ量を増やしていけば、いつしか異常な量を毎日接種しているのにそれに気が付かず、最後には内蔵がぶっ壊れる。
死ななくていいんだよ。体がおかしくなって子種が死滅するか性交する体力や気力が無くなればいいだけだ。
これは身体的な事例だが、精神的な事例だと幼い頃異性に襲わせたり、かなり特殊なプレイを見せて嫌悪感を持たせて性交に忌避を持たせる方法もある。
子が無理とわかれば王になる前に候補を外されるかもしれない。王になった後でも世継ぎがいないのなら縁者である自分の子や孫が次代の王になれるかもしれない。妃に子が出来なければ、一晩だけの相手でも孕めば次代の王の母になれるかもしれない。
自分が王になりたいと願うなら殺そうとしてくるが、王を後ろから操りたいやら王の権威で今より贅沢な暮らしを権力をという輩は怪我狙いの方が多いな」
苦笑をさらに深めて皇太子は言う。
「私は男で王になる立場として色々と聞いている。だから女性側のいざこざはきっと聞かされていない事も多いだろう。
皇妃についてなら、A令嬢の方がもっとエグい事知っているんじゃないか」
A令嬢も丁寧な謝罪をした。
「いや君はよく考えて言ってくれたのだろう?私がもっとしっかりとしていればそんな徒労を味わう事も無かっただろうに」
「ですが私も殿下のお気持ちを理解しようとしていませんでしたわ。次期王として苦悩しているとわかっていたはずなのに、それを踏まえた発言を出来ていませんでした。
それに平民乙女、彼女を」
「甘く見ていた?」
「いえ過大評価しておりました。少し考えれば平民である彼女が危険性を知らないとわかったのに」
「危険性?」
二人の会話に図書員男子が疑問を投じた。
彼もまた地位だけで言えば極普通の平民だ。だから危険性が何なのか知る機会が無い。
「危険性とは野盗に襲われるとか、泥棒に狙われるとか、誘拐されて身代金の要求とか、そういう事件ですか?」
皇太子が『あぁ』と肯定した後に首を横に振る。
「それもだが、それは私達より貧しい中級以下の貴族や農家息子のような財を持つ平民の方が狙われやすい」
「何が違うのでしょうか」
「貧しくとも名門貴族なら私兵が強固なんだ。
名門に雇われたという肩書が欲しい者が大勢いる。給与が少なくてもそこで成果を上げれば引き抜き先がこぞって向こうからやってくるからな。
下級貴族でも金があれば引き抜きが出来たり、腕が立つと有名な者をスカウトも出来る。名門には劣るが貴族に雇われたという実績は作れる。
だが貧しい貴族は金も払えず、平民からしたらほとんどの場合名門以外の貴族はたいして変わりない。だから有能な護衛が集まらないんだ。
貧しいも貴族基準の話であれば平民より財を持っているし、それこそかなり貧しく破綻寸前な貴族と王族に匹敵する程の財を持つ貴族が血縁なんて事もあるからな。狙いやすいし奪いやすい。
平民に関しても相当名を上げた者じゃねければ中々肩書狙いは来ないうえに、下調べも貴族の住居に忍び込むにはある程度の見た目と知識が必要になるが…これはお屋敷で雇われていると思われる為だな。使用人の真似事をして忍び込む。だが平民の住居だとそもそも町中であるし大きな広い庭なんて持つ者少ないだろう?貴族にとってはステータスだが平民にとっては道楽だからな。外からでも覗き見が比較的安易だから、ただの町人のフリして周囲を探ればいい」
皇太子は人差し指と中指の二本を立てた。
「私の特別な女性となった場合危険なのは毒と事故だ」
「暗殺ですか…」
「違うぞ」
苦々しく漏らした図書員男子の呟きを苦笑して皇太子は否定した。
そう、物語の様にそんなセンセーショナルな事態になる必要は無いのだ。
「殺す必要なんて無い。私もA令嬢も何度か毒を盛られて事も事故を仕組まれた事もある。
二人とも運良く五体満足だが、殺そうと狙われた物より害を成せればいい程度の物が多かった。それの方が成功率も高く容疑者を犯人と立証するのが難しいからだ」
「害?怪我をさせれば成功という事でしょうか?」
「下品な話は平気か?」
「えっ、はい」
「子を成すのが難しくなれば成功。性交が出来なくなれば万々歳」
「性っ、」
真っ当な男性なので図書員男子は驚きはした物の平気だった。
むしろ周囲にいた箱入りの主に娘達が頬を赤く染め顔を背けたり、明らかな不快感を浮かべている。
「怪我を負って物理的にイチモツが潰されたりしたら性交しようにも突き立てる物も無ければ吐き出す物も無くなっているし、せいぜい互いに愛撫しあい心地よさを味わう程度しか出来ないだろう。張り型でも使えば相手を満足させる事は出来るだろうが子は無理だ。
事故は大体高い場所でわざとぶつかってきたり足を引っ掛けてこようとするパターンと、自然豊かな場所におびき寄せて上から岩などや木を落としてくパターンがあるな。どちらとも中々死ぬような目には合わないが、運が悪ければ一発だ。しかも両方事故と言い張れるぐらいにしておくから質が悪い。例え害があっても死んでなければ責任はせいぜい追放だ。処刑は出来ない。だって不幸な事故だからな。突き落とされた訳じゃないし、自然災害の予見は難しいだろう?
毒の場合は毒にも薬にもなる物を混ぜ込まれる事が多いな。勘違いされがちだが解熱剤は熱を下げる薬であって高熱を平熱にする物じゃない。一般的に処方される解熱剤ですら量を間違えれば熱が下がり過ぎて体の機能が低下し死に至る事もある。それが確実に盛ったという証拠が見つからなければ、自分用の薬だと押し通されてしまう。
鉱物系の毒なんてわかりやすい物使う奴なんていない。一番多いのが花だな。庭園にいくらでも咲いているし観賞用として広く使われているから手に入りやすい。何より見た目が野菜そっくりな種類が多くある。
それに砂糖や塩だ。少しづつ量を増やしていけば、いつしか異常な量を毎日接種しているのにそれに気が付かず、最後には内蔵がぶっ壊れる。
死ななくていいんだよ。体がおかしくなって子種が死滅するか性交する体力や気力が無くなればいいだけだ。
これは身体的な事例だが、精神的な事例だと幼い頃異性に襲わせたり、かなり特殊なプレイを見せて嫌悪感を持たせて性交に忌避を持たせる方法もある。
子が無理とわかれば王になる前に候補を外されるかもしれない。王になった後でも世継ぎがいないのなら縁者である自分の子や孫が次代の王になれるかもしれない。妃に子が出来なければ、一晩だけの相手でも孕めば次代の王の母になれるかもしれない。
自分が王になりたいと願うなら殺そうとしてくるが、王を後ろから操りたいやら王の権威で今より贅沢な暮らしを権力をという輩は怪我狙いの方が多いな」
苦笑をさらに深めて皇太子は言う。
「私は男で王になる立場として色々と聞いている。だから女性側のいざこざはきっと聞かされていない事も多いだろう。
皇妃についてなら、A令嬢の方がもっとエグい事知っているんじゃないか」
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