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イノチアってのモノだね
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「君に選択肢を与えよう!さぁ選びたまえ」
そう言ったのは司会進行の私だ。
金と権力に物言わせたデスゲーム。一人の男に三つボタン。
一つはマジックミラーの向こう側にいる女を殺すボタン、一つは背後で口枷を付けられ磔になってる男を殺すボタン、そして一つは自分自身を殺すボタン。
「制限時間は一時間、せいぜい悩むといい」
苦悩し罪悪感に苛まれる時間。…っのつもりだったんだが…。
「はっ?」
思わずマヌケな声が出た。
説明を終えた後、ノータイムで男は女のボタンを押した。
あまりに予想外な一切の躊躇いの無い行動。何なら助かった磔の男も驚いて呆然としている。
「これでオレたちは助かるんだよな」
確認の為に男は監視カメラ越しに私を睨みつけながら言った。
「…えっ、あぁうん、うん、はい、ゲームクリアです…はっ、なんで?」
ハッとした。大混乱でゲームセットを宣言はあまりに格好悪い。
咳払いをして改めて声を掛ける。
「ゲームは確かにこれで終わりだが、君達を解放する前に質問をしたい」
「はぁ?知るかよとっとと出せ」
「すまない。このゲームに関する物はタイマーで管理しているんだ。
この部屋も女性側の部屋も君の後ろの男性の枷も、その首輪状の毒薬を注射する装置も一時間後に自動解除となるんだ。
あぁ、もう五十六分後か。
それまでは我慢してくれ」
「んだよそのクソ仕様」
「…こちらの想定では一時間めいっぱい使われるつもりだったんだ。
君がどのボタンも押さずに制限時間を過ぎれば、システムが機能せずに永久に閉じ込められる予定だった。
逆に君が一つでもボタンを押せば時間と連動してロック解除。ルール説明の通り君が死んでも残り二人が問題無く脱出出来るようにしていた。
以前のゲームでは普通に解除キーを使っていたんだが、君の立場にいた者が一人犠牲にしたあと良心の呵責に耐えられなくなってね。そのまま解除キーを…カード型だった事もあって叩きつけたり折り曲げたりで壊してしまったんだ。
そのせいで外からこじ開けなくてはいけなくなってしまったが、本来なら進行側とプレイヤー側は関わってはいけない。
それでこちら側で相談した結果タイマー管理となった」
「あーそういう。んじゃいーよ。質問ってなに」
あまりにもアッサリとした反応。
「質問…答えてくれるのかい?」
「開くまでヒマだし」
何こいつサイコパスなの。ヒマだしっていや、そこは理不尽なゲームに強制参加させられて怖がるなり怒るなりするもんじゃないのか?
デスゲーム開催しといて何だがドン引きした。
「そうだね、うん。あまり手間を掛けさせるのもどうかと思うから一つだけ、なんで彼女を選んだんだい?」
「後ろのヤツと違って知らないヤツだったからだけど」
「あれ、それじゃあこちらのミスかな。見ず知らずの三人を集めてするゲームのはずだったんだけど」
「見ず知らずだったよコイツ」
振り向かずに背後で目を白黒させている男を肩越しに親指でクイッと指差す。
「直近で知り合ったのかい?詳しく調査はしていたんだけど不備があったかな」
「いや今知りあったじゃん」
「はい?」
いやいやいやいや何怖い意味わからない。いやわかるよ、こんな状況だけど顔合わせてあ互いに認識した=知り合ったって言いたいんでしょうよ。でも言わせてくれ。
「何言ってんの?」
磔の男今度は目をひん剥いて驚愕してるじゃないか。明らかに怯えられてるぞ。
「何ってそのまんまだけど。
オレはその女を全然知らない。このガラス越しに見た目だけは知ったけどそれだけだし、女の方もオレを知らねー。
でもそこの男をオレは知っちまった。見た目はガタイの良いけどたぶん身長はオレより低いだろ。んで『うーうー』呻いてる声も見た目に合った低音で、縛られて口枷付きなのになんかグイグイ逃れようと暴れる感じだけど別にパニクってるわけじゃなそさうじゃん。って事は少なくても弱気な暴走タイプじゃない。んで目は自由だからソイツもオレと一言も話してないけど情報は入るわけじゃん。わかりたくなくても知っちゃう事もあるわけじゃん。
もし両方がおんなじ条件だったらオレだってもうちょい迷ったよ。でも今回この男と知り立っちゃったからコイツを選んだ。知り合ったばっかだから好きも嫌いも無いし」
理由を聞けばわりとよくある理由だ。自分も死にたくないが、顔を合わせた相手は殺しづらい。実際ゲームでも最終的に一番死亡率の高いのはガラスの向こうの相手だ。
だがそれでも普通は迷うもんなのだ。
「っで、質問てこんだけ?」
「…はい」
「なーまだ時間だいぶあんじゃん。おしゃべりしようぜ」
「えぇー」
デスゲームの司会になりはや五年、こんなに早くどっか言って欲しい参加者は初めてだ。
『結局は命会っての者だね。出会わなきゃ存在しないのと一緒。だからお兄さん?おじさん?アンタには会ってみたいなー。それに一方的に知られてんのってなんかイヤじゃね』
『(自分の心情と)守秘義務的に無理です』
そう言ったのは司会進行の私だ。
金と権力に物言わせたデスゲーム。一人の男に三つボタン。
一つはマジックミラーの向こう側にいる女を殺すボタン、一つは背後で口枷を付けられ磔になってる男を殺すボタン、そして一つは自分自身を殺すボタン。
「制限時間は一時間、せいぜい悩むといい」
苦悩し罪悪感に苛まれる時間。…っのつもりだったんだが…。
「はっ?」
思わずマヌケな声が出た。
説明を終えた後、ノータイムで男は女のボタンを押した。
あまりに予想外な一切の躊躇いの無い行動。何なら助かった磔の男も驚いて呆然としている。
「これでオレたちは助かるんだよな」
確認の為に男は監視カメラ越しに私を睨みつけながら言った。
「…えっ、あぁうん、うん、はい、ゲームクリアです…はっ、なんで?」
ハッとした。大混乱でゲームセットを宣言はあまりに格好悪い。
咳払いをして改めて声を掛ける。
「ゲームは確かにこれで終わりだが、君達を解放する前に質問をしたい」
「はぁ?知るかよとっとと出せ」
「すまない。このゲームに関する物はタイマーで管理しているんだ。
この部屋も女性側の部屋も君の後ろの男性の枷も、その首輪状の毒薬を注射する装置も一時間後に自動解除となるんだ。
あぁ、もう五十六分後か。
それまでは我慢してくれ」
「んだよそのクソ仕様」
「…こちらの想定では一時間めいっぱい使われるつもりだったんだ。
君がどのボタンも押さずに制限時間を過ぎれば、システムが機能せずに永久に閉じ込められる予定だった。
逆に君が一つでもボタンを押せば時間と連動してロック解除。ルール説明の通り君が死んでも残り二人が問題無く脱出出来るようにしていた。
以前のゲームでは普通に解除キーを使っていたんだが、君の立場にいた者が一人犠牲にしたあと良心の呵責に耐えられなくなってね。そのまま解除キーを…カード型だった事もあって叩きつけたり折り曲げたりで壊してしまったんだ。
そのせいで外からこじ開けなくてはいけなくなってしまったが、本来なら進行側とプレイヤー側は関わってはいけない。
それでこちら側で相談した結果タイマー管理となった」
「あーそういう。んじゃいーよ。質問ってなに」
あまりにもアッサリとした反応。
「質問…答えてくれるのかい?」
「開くまでヒマだし」
何こいつサイコパスなの。ヒマだしっていや、そこは理不尽なゲームに強制参加させられて怖がるなり怒るなりするもんじゃないのか?
デスゲーム開催しといて何だがドン引きした。
「そうだね、うん。あまり手間を掛けさせるのもどうかと思うから一つだけ、なんで彼女を選んだんだい?」
「後ろのヤツと違って知らないヤツだったからだけど」
「あれ、それじゃあこちらのミスかな。見ず知らずの三人を集めてするゲームのはずだったんだけど」
「見ず知らずだったよコイツ」
振り向かずに背後で目を白黒させている男を肩越しに親指でクイッと指差す。
「直近で知り合ったのかい?詳しく調査はしていたんだけど不備があったかな」
「いや今知りあったじゃん」
「はい?」
いやいやいやいや何怖い意味わからない。いやわかるよ、こんな状況だけど顔合わせてあ互いに認識した=知り合ったって言いたいんでしょうよ。でも言わせてくれ。
「何言ってんの?」
磔の男今度は目をひん剥いて驚愕してるじゃないか。明らかに怯えられてるぞ。
「何ってそのまんまだけど。
オレはその女を全然知らない。このガラス越しに見た目だけは知ったけどそれだけだし、女の方もオレを知らねー。
でもそこの男をオレは知っちまった。見た目はガタイの良いけどたぶん身長はオレより低いだろ。んで『うーうー』呻いてる声も見た目に合った低音で、縛られて口枷付きなのになんかグイグイ逃れようと暴れる感じだけど別にパニクってるわけじゃなそさうじゃん。って事は少なくても弱気な暴走タイプじゃない。んで目は自由だからソイツもオレと一言も話してないけど情報は入るわけじゃん。わかりたくなくても知っちゃう事もあるわけじゃん。
もし両方がおんなじ条件だったらオレだってもうちょい迷ったよ。でも今回この男と知り立っちゃったからコイツを選んだ。知り合ったばっかだから好きも嫌いも無いし」
理由を聞けばわりとよくある理由だ。自分も死にたくないが、顔を合わせた相手は殺しづらい。実際ゲームでも最終的に一番死亡率の高いのはガラスの向こうの相手だ。
だがそれでも普通は迷うもんなのだ。
「っで、質問てこんだけ?」
「…はい」
「なーまだ時間だいぶあんじゃん。おしゃべりしようぜ」
「えぇー」
デスゲームの司会になりはや五年、こんなに早くどっか言って欲しい参加者は初めてだ。
『結局は命会っての者だね。出会わなきゃ存在しないのと一緒。だからお兄さん?おじさん?アンタには会ってみたいなー。それに一方的に知られてんのってなんかイヤじゃね』
『(自分の心情と)守秘義務的に無理です』
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