九龍城砦の君は笑う

第五章 財布も心もよく冷える

物理的除霊？

「剣門関は元々三国志の時代に進行を防ぐ重要な防衛拠点とされてきました。」

「ですがそれだけ有名な所だけに曰くも元々多いです多くの血が流れたとかどうとか…」

「まぁ私自身あんまりそう言うオカルト的な事に興味はないんですが…」

笑みを浮かべながらそう続けるハオユー。
この男最初に見た時から思っていたが何を考えているか読めなく食えない男だ。
ふと気になっていた疑問をぶつけてみる。

「でもなんでハオユーさんは案内人なんかをされているんですか？」

「私は元々この街出身では無いのです。まぁ派遣社員の様な立ち位置ですかね、なので色々と雑務を回されるのだと思います。」

「なるほど…。」

「ハオユー様はしっかり働いていて偉いですね！2人にも見習って欲しいです。」

苦笑いしながら目を逸らす俺とシュエメイ。

「私としては背中に背負ってるそれも気になるけどな～」

「あぁこれですか？これはただの護身用の棍棒ですよ。まぁそこまで心得は無いですが。」

「ふぅん…なるほどねぇ…」

「そうこう言ってるうちに見えてきました。あれが剣門関です。」

ハオユーが指さす先にはとてもでかい砦？の様な物が鎮座していた。

「圧巻ですね…！」

「ね、ほんと！おっきい！」

「着いてもまだ夜には早いのでお茶でも飲みましょうか。」

「「はーい！」」

その後ハオユーが全員分のお茶を入れてくれ、少しはリラックスした状態で夜を迎えることが出来た。

「そろそろ日も暮れてきましたね。さて、幽霊退治のお時間です。皆さん方大丈夫ですか？」

「少し怖いですが…頑張ります！」

「幽霊って触れるのかな…。」

「まぁ、何とか頑張ってみます！」

金のために…。

「それぞれ手分けして探すのが良いと思われます。チームを分けましょうか。」

全員で指を立て別れそれぞれ、
1チーム(シュエメイとシャオラン)
2チーム(ハオユーと俺)
で別れて探すことになった。

「ハルさん、怖くなったら大声出してくださいね！私とシュエメイさんが駆けつけるので！」

「またこの間みたいに無理しちゃダメだよ～！また後でね！ハオユーさんよろしくねー！」

そう言って二人と別れ探索が始まった。

暗く周りがおぼつかない中をハオユーさんと共に歩く。
普段であればなんてことは無いのだが、幽霊が出ると言われてる森を歩くのはやはり少し怖い所があるな…。

「ハルさん？」

後ろから急に声をかけられたので驚いて声が出そうになった。

「どうしました？」

平静を装い答える。

「実は幽霊退治に来るのは、ハオユーさん達が初めてでは無いんです。他にも何人も何人も…」

「は、はい…。」

「途中で皆私とはぐれてしまうんです。そしてその後は…」

「そ、その後は…？」

「どうなっちゃうと思います！？」

急に声色が明るくなりいつも通りニヤニヤと笑っている。

「ちょっとからかわないでくださいよ！」

「いえ失敬、ハルさんが少し緊張していらしたようだったので冗談でも言って気を紛らわせようと」

「勘弁してくださいほんと…。」

そう言いながら歩いていくと。
森の中に一瞬髪の長い女が月に照らされているように見えた。

「い、今の見ましたか…？ハ、ハオユーさん？」

返事がない。
後ろを振り返るとハオユーさんの姿がどこにも見えない。
嘘だろまずいまずい。
全身に悪寒が走るのを感じる。
女の方を見ると、女もいなくなっている。

「まずいまずいまずい！」

夜の森での恐怖体験が始まるのだった。