九龍城砦の君は笑う

北東 太古

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第一章 出会い

それからそれから?

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萎れている少女と外に出て少女の辿った道を歩いていく。外の明かりは月しかなく目が慣れるまでに少しの時間を要した。
ひたすらに下だけを見て歩く、その間も少女は背後でぐすっぐすっと嗚咽を漏らしている。
幸いな事に少女は海沿いを歩いていた為、道自体は綺麗だった。

40分程歩いた後、地面から少し光った物を見つけた。手に取ってみると。少女の左耳に着いていたものと同じピアスがあった。

「あったぞ、ピアス。」

「え…!うそ、本当に!?」

少女が駆け寄り、ピアスごと俺の手を握りしめる。

「良かったぁ~!!もう見つからないかと思った~!!」

そう言って少女は手を握りながらまた泣いた。
やはり握力は強く少し手が痛い。
少し落ち着いた後少女は右耳にピアスをつけ、俺に居直る。両耳にピアスをつけ、月明かりに照らされる少女はとても華麗で可憐で神秘的であった。

「でもどうしてすぐ落としたってわかったの?」

「右耳に少しの出血と出来たてのかさぶたがあった。もしずっと前に落としていたなら、出血もカサブタもかわいていたと思う。だから…」

言ってる最中に少女が詰寄る。

「あなた見た目に反して割と頭はいいのね!」

少女の目は先程とは違い尊敬の眼差しと年相応の純粋さを持っていた。

「はいはい…そうだな…じゃあ、俺はこれで失礼するよ、もう無くさないようにな。」

踵を返し少女を背にする。

「ねぇ!ちょっと待って!なんで下着泥棒なんてしたの!」

「下着泥棒じゃなくて、普通に金目の物を盗みに入っただけだ。何も無くて着物を漁ってたらたまたま掴んだのが下着だっただけで…。」

「ふぅん…。ねぇ、あなた帰る家はあるの?」

あまりにも多く話しかけてくるので立ち止まり少女の方を向く。

「もし無いんだったらさ、私と一緒に師匠探すの手伝ってよ。そんなに頭いいんだったらさ!」

少女はとても純粋な笑顔を向けている。

「最後の修行がね、師匠を見つけることなんだけど、見つけられる気がしないの、だから…」

「だから、私はあなたに着いてきてもらって、一緒に探すのを手伝って欲しい。お願いっ!」

俺は今まで生きてきてこんな風に人からなにか頼まれたことは無いし、自分の出来る事を買われた経験もない。こんな俺でも誰かの役に立てるなら…。
少女の方へと近づきその可憐な顔と向き合う。

「俺の名前はハル。お前は?」

「私は雪に梅って書いてシュエメイだよ!貴方の名前は少し変わってるのね!よろしくねハル!」

そう言ってまた来た道を戻り少女の家へと二人で向かう。

こうして最悪の出会いから始まった俺達の、長い旅が始まったのだった。
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