九龍城砦の君は笑う

北東 太古

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第五章 財布も心もよく冷える

働け青年路銀の為に!

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さて、ここで一つ質問がある。
旅で必要なものは?
大事な仲間?
やらなければいけない使命?
きっと各々色々あると思うが全部差し置いてでも必要なものがある。
金だ!
シャオランの母親から貰った金は殆ど成都で消え、途中寄った街でシャオランの新しい服と髪ゴムを買ったり、宿代やシュエメイの食費に消えたりで財布がすっからかんになってしまったのであった。
まぁ俺も少しは賭け事をしたが…。
ちなみに全敗をした。
人間楽しては行けないんだなと再度学べた。

「弱ったなぁ…。どうしよう金がない…。」

そんな訳で現在俺たちは四川省は広元市にいる。

「広元市はね!昔凄く大事な場所だったんだって~!剣門関って言うのがあって今でも残ってるらしいよ!後で見に行こ!」

「シュエメイさんは何かと歴史に詳しいですよね、なんでですか?」

「師匠が歴史を知れば今がわかるって言って色んな場所の話してくれたんだよね~、まぁあんまり実は興味無いんだけど。」

「少しお師匠さんが可哀想です。」

「だって師匠の話長ったるいんだもん。しょうがないじゃん。あ、あとなんか窪んだ崖に仏像様が沢山ある場所もあるらしくてー」

「えぇ…それは少し不気味ですね…。」

「そう?仏様可愛いじゃん。」

「可愛い…?ですかね…?」

埒が明かない。
他愛なさすぎる会話だ。

「そろそろ広元市に着くぞ。」

眼前には山の周りを囲うように建物が立ち並んでいる。
広元市は成都程の華やかさは無いが、鉱山等でそこそこ賑わっているらしい。

「まずは宿探し!ですね。」

「…ないよ。」

「え!この街には宿がないんですか!?」

「違う。ある。」

「じゃあ何がないんですか?」

「金だよ!!お金が!ないんだよ!!」

「そういえば私たち使うばっかりで稼いでなかったねぇ…」

「二人とも大人だから管理してくれていると思ってました…さすがに。」

さすがに。の一言で少しやられそうになったが、そのかわいい服は誰の金で買ったものなのか一度思い出して見てほしい。
まぁとやかく言っても仕方ない。

「取り敢えず酒場で仕事を探すぞ。」

「「はーい!」」

酒場に向かってる途中に宿は沢山あったがどこもやはり入れない。
世知辛い世の中だねほんと…。
ガチャっと酒場の扉を開ける。
カウンターへと行き、注文の前に店主に話しかける。

「なにか、困ってることは無いか!?困ってる人とか!?居ないか!?」

「えぇ…いきなりなんだ兄ちゃん…」

俺が必死に店主に交渉もとい恫喝紛いの事をしていると。
後ろから小声の声が聞こえてきた。

「ねぇ、シャオラン?ハルってお金が無いともしかして心の余裕が無くなるタイプなのかな?」

「そうかもしれませんね。お母さんにお金を気にしていたら不幸になると教わりました。」

「あぁはなりたくないね~…」

「はい、全くです。」

なんでこの2人はこんなに冷静でいられるんだろうか?
そういえばよくよく考えたら
シュエメイはなんでか知らんが最初から割と金はあったし。
シャオランも一応は豪族の娘な訳で、二人とも金に苦労した事など無い人種であった。

「で、店主!なにかないのか!?」

「んー…あるにはあるけどねぇ…」

「それをこなすから少しの金をくれ!!」

恥も体裁もないな俺。

「剣門関にね、夜幽霊が出るって噂が広まっちゃって、最近観光客が減って少し街がピンチなんだよねぇ…」

「それを解決したらいくらくれるんだ!?」

「市から公式に20000元出るって話だよ。市長の元へ行けば正式に受けられるはず。」

「わかった。ありがとう店主…必ず後で飲みに来る。」

そう言って呑気な二人を無理やり引っ張って外へと出て、市長の元へと向かう。

「でも幽霊なんてどうやって倒すの?」

「私幽霊は苦手です…」

「世の中に幽霊なんて居ないんだよ!1960年だぜ今は。」

幽霊が怖くて盗みは働けなかったからな。
幽霊なんてものの存在はとうの昔に気にしなくなっていた。
市長や他の役職を持つ人らが集まる役場へと着いた。
シュエメイとシャオランは余計なことを突っ込みそうなので、広場へと置いていった。
市長の部屋の前に案内され、ドンドンッと扉を叩く

「すみません!お話があってきました。」

「なんですかな…?」

出てきたのは初老の男性であった。

「幽霊退治をしたいと思いまして!」

「あぁ…幽霊退治の人ね…ちょっと待っててくれ今案内人を呼んでくる…」

そう言って市長は秘書に誰かを読んでくるように頼み数分後一人の男が連れてこられた。

「ハオユーだ、見た目はこんなんだが頼りになる男だ、連れて行きなさい…。」

「どうも~ハオユーです~。よろしくお願いしますね旅の人。」

ハオユーと名乗った男は目が糸目で眼鏡をかけており、翡翠色の髪は後ろで一つ結び、背中からは布で包まれた棍棒の様な物を背負っており、背丈も高い。

「あの、市長本当に幽霊退治に成功したら金はくれるんですか?」

「心配しなくても贈呈はしっかりする。出来たら…の話だがね…。」

その後簡単な契約書にサインし、広場で待たせていた2人と合流しハオユーの事を簡単に紹介した。
そして幽霊退治へと向かったのであった。
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