九龍城砦の君は笑う

北東 太古

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第三章 雲南抜けて四川へと

巻き込まれ珍道中

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「シュエメイさんはなんでそんなに強く頑丈なんですか?」

「うーん、鍛えてるからかなぁ…?」

そんな事を話しながら前回旅の仲間に加わったシャオランとシュエメイが話す。
途中シャオランの母親から貰った金で鉄道に乗り現在は雲南省と四川省の狭間にいるのであった。

「もうそろそろ四川に入るぞ。」

「四川ですか…私は雲南から出たことがなかったので、なんか新鮮です。」

四川省。近代化のために大型の工場が立ち並ぶ街。しかし、昔ながらの伝統的な建築物も立ち並んでいる。最早街ではなく都市と言っても遜色ないだろう。
人が増えれば問題が増えるのが世の定め…。
無事に過ごせればいいのだが。

「四川は辛味が強い料理が多いからねシャオランは少し大変かもね!」

「なるほど…まぁ私は辛味は得意なので平気だと思いますけど。」

シャオランという子は長年母親の世話をしていたからか凄くしっかり者であった、シュエメイよりよっぽど立派だった。
そんな事を話していると
遠くの方に高い建物が見えてくる。

「あれが四川の一番栄えてる場所、成都だ。」

「わぁ!見た事ない建物ばっかりです!」

「いつ見ても凄いねぇ…迷子にならないようにしないとね!」

「心配なのはシュエメイさんですよ…。」

「着いたら宿を見つけて屋台で腹ごしらえでもするか。」

「賛成~!」

「賛成です!」

「あ、あと途中で文が届いてるかの確認もしないとな。」

「は、はい!」

そうこうしているうちに四川省成都市へと辿り着く。
街の中は人で賑わっており、屋台などでが立ち並んでいる。
まぁ表通りは…だが。

「全部美味しそうだね~!シャオラン手繋いで!迷子になっちゃうかもしれないから!」

「しょうがないですね…。」

手頃な宿を見つけそこへと入る。

「お、らっしゃい。」

「一日部屋を借りたい。」

「ふん、なるほどね。嬢ちゃん達も可哀想だね。部屋は一番上だよ。」

無愛想な店主から部屋の鍵を貰い、部屋へと向かう。

「なんであの店主あんな感じなの?」

「ここの街じゃ男が女二人を連れてたらあんなもんだろ」

四川は都市化こそされているが、古くからの色街としての文化も根強く残っており、女は優しく打算的で男は排他的と欲望に忠実なのである。
大方、二人のことを買った男にでも見られたのだろう。
階段を三階程登り部屋の前に来て扉を開ける。
中は割と小綺麗にされており、ベットが二つ。それに茶道具と茶菓子がある程度のものだった。

「でも部屋は綺麗で過ごしやすそうだね!」

「そうですね、なんだかわくわくします!」

「ベランダがあるし上から街でも眺めながら茶でも飲もうぜ。」

「賛成!」

「私お茶入れますね。」

そうして三人で街を見渡しながら一服をした。日が沈みかかっているにも関わらず、昼間より通りは一層賑わっていた。

「よし、そろそろ動くか。」

「まずは文の確認だね。」

「はい!」

賑やかな通りを歩き駅へと向かう。
やはり色街という事もあり、堅気では無い人間の姿も見えるな…。
騒ぎは起こさないようにしないと。
先程の駅に戻りシャオランと駅員さんが話し無事に文を受け取ることが出来た。
どうやら三日前に文は届いていたようだ。
読みながらシャオランは泣きそうになりながら静かに笑っている。
この歳で親元離れるのはきっと寂しいだろうに。
気丈な子である。
その後郵便へと行き、母親に返しの文を送ったのであった。

「ありがとうございます。母親は元気そうです。」

「なんだって?」

「日を浴びながら茶を飲んだり高級な茶菓子を食べたり、なんか贅沢に過ごしてるみたいです。」

「そうか…。」

しっかりお嬢様だったんだなあの母親…。
でも、旦那さんがよっぽどいい人だったから、その生活を捨ててまでその人と添い遂げようとしたのであろう。

「よしじゃあ次は私の用事だね!お腹すいたからご飯食べに行こ!」

三人で屋台の通りを歩く。
途中シュエメイが意味のわからないお面を買いそうになったり。
シャオランが高価な茶道具を落としそうになったりと色々あったが一段落つき、地元で一番美味いと言われている料理屋に入った。
どうやら麻婆豆腐がイチオシらしい。

「俺は麻婆豆腐を」

「私も!」

「私もそれでお願いします!」

「あいよ。うちのは結構辛いよ、頑張って食べな。」

そう言って店員は厨房へと注文を通す。

「そういえばシュエメイ。師匠の名前はなんて言うんだ?」

「師匠?そういえば名前聞いたこと無かったなぁ。師匠は師匠だよ。」

「えぇ…それでいいんですか…。」

「んーじゃあ、なんて言う流派の人なんだ?」

「洪龍拳って流派だよ!一子相伝らしいから私と師匠しか居ないって!」

「なるほど…。」

洪家拳は有名で聞いたことがあるし、見た事もある。
元々広東がルーツの拳法のはず。
しかし洪龍拳は聞いたことがないし、洪家拳とも動きが違った。
一子相伝という事もあり相当マイナーな流派なのだろうが、返って探しやすいか…?
そう思案していると。
ドンっと荒々しく料理が運ばれてくる。
色は黒赤くスパイスの匂いが鼻腔へ漂う。
こ、これは…多分相当辛い…!

「わぁ!美味しそうです!」

「ねー!食べ終わったら辛み消しに杏仁豆腐も頼まなきゃね!」

「そうだな…まずは食べようか…。」

「「「いただきまーす!」」」

口に入れた瞬間今まで感じたことないほどの旨みが舌で感じられる。
が、その後強烈な辛味が、!
う、美味い驚く程美味い、だけど辛い!辛すぎる!

「わぁ、これ美味しいですね、母のレシピより少し辛いですが。」

何食わぬ顔で食べるシャオラン。広東の味に慣れてるはずなのに何故!?

「あーやばいね…これ辛いね~」

パタパタと口を仰ぐシュエメイ目を瞑り悶絶している。

「早く食べましょう、麻婆豆腐は冷めたら美味しくないですから。」

シャオランは気にせず食べている。俺とシュエメイは激辛麻婆豆腐を頑張って平らげた。
その後杏仁豆腐を俺とシュエメイで三個ずつシャオランは一個と立場がよく分からない注文をし会計を済ませ店を出た。

「なんかもう口の中が辛いっていうか苦いよ…」

「わかる…」

「そうですか?すごく美味しかったですけど。」

「なんで広東の味に慣れてる筈のシャオランはそんなに辛みに強いんだ?」

「いや…母が毎日色んな地域の料理を所望していたので、大体どの味も作れるし好きです。」

「なるほどね…。」


「あー!!!辛いー!!何か果物買お!」

その後人数分の林檎串を買い、口直しにと、他の甘味や点心なんかを買い、皆で明日の夜に花火でもしたいねというシュエメイの提案でマッチと花火を買い宿へと帰路に着いた。
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