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2章 幼少期編 II

34.建設現場見学ツアー8

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そうこうしているうちに、昼食の用意が出来たと侍女が呼びに来た。

待ってました。お腹がペコペコです。しかも、お遊戯後のお弁当。なんて運動会チック!

親がいなかった前世の私は、運動会のお昼は教室で仕出し弁当を食べていたのです。一緒に食べてくれた先生は面白い話をしてくれて笑わせてくれたけど、本当は淋しかった。

平成のいつからか、お弁当は家族とは食べずに教室で食べるようになったと聞いた。時代かなぁと思った。共働きとかいろいろあるもの。
近所の小学校では、親がお酒を飲みだして急遽中止になったということもあった。花見と子供の運動会を混同するような、しょーもない勘違いをするのも時代だったのかもしれない。


前世の事はさておき、私たちのような高貴な身分(むふん♪)になると、外食は二つのパターンに分かれる。
ひとつはレストラン。うん、当たり前すぎるね。
で、もうひとつはレストランがない場合なのだけど、これがねぇ~、料理人を同行させて現地で料理をさせるのが普通らしいのだ。どんなセレブよ。セレブだけど。
しかも、ちょっとだけ期待していたバーベキュー的なものでもないのだ。先程のティータイムでもわかるように、きちんとした食器を使って、きちんと順番通りに食事が運ばれ、きちんとマナーを守って食事をする……どうですか? つまらないでしょう?

だから私は「お弁当」を持っていくと主張した。
アルベール兄さまに即座に却下された。

お弁当=携帯食なのだからして、感覚の違いは仕方なかったけど、私はごねまくった。

『軍の遠征でもないのに、なぜ携帯食を持参しなくてはいけないのか』

『絶対美味しいから、騙されたと思って食べてみてください!』

アルベール兄さまとガチンコ勝負した。

お弁当のために私は一歩も引かなかった。途中からベール兄さまも私に加勢参戦してガチンコじゃなくなったけど、うぐぐぐ…ふたりがかりでも優勢にはならない。敵は手強かった。

けれども、そこにたまたま現れたルエ団長が、アルベール兄さまを口説き落として決着した。なんて説得したのかは知らない。お弁当の許可をもらったのが嬉しくて、聞くのを忘れたままになっている。たぶん一生忘れたままだ。

そしていつの間にやら、お弁当はリクエストがOKということになっていたのは、ルエ団長のゴリ押しだったみたいだ。
ふふん、大歓迎ですよ。アルベール兄さまを説得してくれたお礼もあるし、希望に添うお弁当に致しましょう……あれ?…ということは、ルエ団長も空中街道の現場見学に行くのですか? ベール兄さまもお弁当を食べるために行くと正直に言っていますね。嫌がるシブメンをルエ団長が引っ張って来てもうひとり増えました。

キラ~ン、これはあれの出番ですね。

ランド職人長、漆塗りのお重を出してくださいな!

漆器は、まぁ、漆の樹液さえ手に入ればなんとかなった。
塗って、研いで、塗って、研いで……
色は赤と黒でシンプルに。装飾は金粉と色粉で女の子らしい花模様を入れてくれた。じゃなくて、最近これが花文字でシュシューアと描かれていることが判明した。最初から知っていたふりをしているが、たぶんバレてる……花文字なんて作ったの誰よ。読めないよこんなの。

そういうわけで、漆塗りの基本を習得したランド職人長は、木工職人に丸投げして引き継がせた。
植物紙の時と同じですね。木工職人の中から漆職人が枝分かれして増えていくと、私は思います。いずれ美術品のようになって世に出てくれたら嬉しいな。


お弁当の方はというと、おにぎりのリクエストにはっきりと好みが出た。

チャーハンおにぎりは、ルエ団長。
焼き味噌は、シブメン。
じゃこおにぎりは、ベール兄さま。
ツナマヨは、アルベール兄さま。
焼きたらこは、私。

焼き味噌、ツナマヨ、焼きたらこは海苔を巻いてある。
黒々とした海苔に最初は思いっきり引かれましたが、巻き寿司にしたら簡単に魅了されてくれた。酢飯単体が何気に人気があるのだ。

しかし何の相談もしなかったのに、リクエストがおにぎりで統一されたのは不思議だ。
まぁ、最初にルエ団長が「チャーハンおにぎり」と主張したからだと思うけど。


……………………………………………
焼き味噌の作り方。
①薬味などを刻んでごま油で炒めます。
(ネギ系・ショウガ・ピーマン)お好みで。
②①に火が通ったら大葉をパラっと混ぜる。
③味噌+白ワイン+甘液を加えて、弱火で混ぜ混ぜして完成です。
……………………………………………
う~ん、みりんが欲しいです。日本酒造れる転生者カモン!


従者や護衛などの随行者たちの分は、自身で用意するのが常になっているそうです。ほら、例の携帯食(カチカチパンと干し肉)ね。
そこに主や上司からの下げ渡しがあったらラッキーなのですって。

※北の飢饉対策に用意した乾パンとカンショーモは、まだ本備蓄には入っていません。

それでね、アルベール兄さまがチギラ料理人に、私たち用の他に30人分のお弁当を用意するようにって言っていたのです。
んもぅ~、ニクイ王子さまなのです。好き好き。そんな気の利いた王子さまに微力ながらも加勢いたしましょう。
『おにぎりの型』を作りました! まな板に三角の穴が空いているやつ。チギラ料理人は目を潤ませて喜んでくれました。お手伝いのランド職人長一行もホッとしていました。



それでそれで、おかずには私のドリームをぎゅうぎゅうに詰めてもらった。

若鳥のから揚げ(若い玉鳥は高級食材なのだ)
エビフライ&タルタルソース。
太くてタコさんには出来なかったウィンナー腸詰炒め。
少し甘めの巻きたまご焼き。
野菜の出汁煮物。
彩の葉物と赤役はうさリンゴ……完璧!

はっ、ミートボールを忘れてた!



………続く
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