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2章 幼少期編 II
31.建設現場見学ツアー5
しおりを挟む荷馬車が何台も連なって止まっていた。
先頭の1台目は荷車の後ろを回転台車前につけ、作業員が手作業で石を回転台車に乗せていく。
個々の石のサイズはやはり不揃いだ。
石の質問は後回しされたから、他の事を……う~ん……あ。
「この現場には必要ないかもしれませんが、重い荷物をまとめて揚げ降ろしできる機械があります。木材を組み合わせた平荷台の上に荷物を積み上げて……この荷馬車で言えばここですね。荷の重さに負けない作りの移動車に、上下に動く鉄製の長い爪をつけて、平荷台に差し込むのです。こうやって、持ち上げて、移動させます」
すのこの裏を重ね合わせたようなパレットの絵を地面に描き、肘を曲げてフォークリフトの真似をする。
『ウィーン、グッ、ウィーン』と口ずさむのは許して欲しい。
「油圧を利用した上下重機と組み合わせれば、いけそうだな。倉庫で重宝しそうだ。記録したか?」
アルベール兄さまが侍従を振り返る。
『はい』と頷く彼は、首から紐で下げる写生用の画板のような板で書記をしていた。いいな、あれ、私も欲しい。
「上の確認は済んだか?」
「問題ありません」
アルベール兄さまと騎士の声が、頭の上でキャッチボールされた。
王都駅の安全確認のことよね。やった、上らせてもらえるんだ。
「それでは、ご案内いたします」
現場監督が自分の出番!…という顔をして一歩前に出て頭を下げる。
次にぴしりと”きをつけ”の姿勢になって、くるりと背を向けて歩き出した。緊張している様子はないけど動きがぎこちない……王族が来ると聞いて練習をしたっぽい。むふふ、ありがとうございます。
「ほら、行くぞ」
ベール兄さまに手を引かれた。
ロボットのように歩く現場監督に先導されて、私たちはぞろぞろと円弧階段に向かう。
途中に踊り場が3ヶ所もある長い階段だ。壁も天井もないから向かう先が空に見える。あれだ……天国に往っちゃう階段。
よっしゃ、気合い入れて上るぞ!
「よいしょ、よいしょ……アルベール兄さま、階段は半分にわけて、上りと下りの専用にする必要があります…よいしょ、混乱を避けるためです。よいしょ、転んでも落ちないように、よいしょ、手摺りもつけましょう。よいしょ」
お城の中央塔のように急じゃないから上りやすいね。
片足上りはしないよ。無理せずに一段一段、しっかりと両足を運ぶ。転んで怪我したらそのまま帰城とかはごめんですからね。絶対に転びません。手摺代わりになってくれているベール兄さまの手も、絶対に離しません。よいしょっと。
………続く
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