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1章 幼少期編 I
69.父兄帰還
しおりを挟む帰ってきたーーーっ!
5歳前なので直接お出迎えには行けなかったけど、帰城した夕方には家族の間に呼んでもらえた。
感動の再会は私が最後、お父さまに向かって走っていったらその前にルベール兄さまに捕まった。
「シュシュ~、会いたかったよ~。ず~っとこのプニプニがなくて凄く寂しかったんだ。今日からまた一緒だよ~」
泣いてる。よっぽど馬車旅が辛かったんだな。よしよし。ほっぺちゅぅはサービスだ。5倍に返された。
「ルベール、そろそろ私に譲ってくれないか?」
ルベール兄さまは渋々私を引き渡す。
お父さまの長い腕が伸びてきて、高い高いされた。
「戻ったよ、シュシューア」
笑うとちょっと目じりにしわが寄るの。素敵でハンサムな優しい私のお父さまです。ちょっとたれ目なところが、ほんのり色っぽいのです。
「ご無事のお帰り嬉しく思います。シュシューアはずっと良い子で待っておりましたよ」
(嘘だ……) 誰の呟きですか?
「随分と行儀の良い挨拶だな」
「えへへ~、リボンくんと練習したのです。お帰りなさい、お父さま、ルベール兄さま。ギュ~してくださいませ!」
ギュゥ~~~~~~~~~
えっ、ちょっ、つよっ、っっっ……
……ケポッ。
変わり果てた今川焼きとも、再会してしまった。
☆…☆…☆…☆…☆
外遊視察から帰った国王一行の休息はその夜だけで、次の日からは会議会議の連続だった。
ルベール兄さまも出席していて離宮には来られないでいる。
ドライフルーツのパウンドケーキを差し入れましょう。
……………………………………………………
ドライフルーツ入りパウンドケーキの作り方
①常温のバター→甘液→卵→酵母の順に泡だて器で混ぜる。
②薄力粉を加えてゴムベラで混ぜる。
③熱湯に浸したドライフルーツを湯切りして加える。
④バターを塗った型に入れ、1.5倍くらい膨張するまで寝かせる(発酵)
⑤薪オーブンで焼いて完成です。
……………………………………………………
お父さま用には甘さ控えめの黍酒漬けドライフルーツにして、2種類作ってもらった。
味見メンバーが全部平らげてしまったけどっ(怒)
もう一度の製作にはアルベール兄さまの指示で、オーブンの二つを使って4本焼き上げていた。
そしてどこかへ1本持っていった……レイラお姉さまのところでしょうね。
ミネバ副会長に「『 君のために』は、なしですよ!」と声をかけられていたもの。
◇
ようやく離宮に来られるようになったルベール兄さまは、小耳にはさんだ中華麺を所望した。
チギラ料理人は腕まくりをして気合を入れる(踏めないと辛いね)
「旅のお話をしてください」
朝食夕食時にも聞いていたけど、あそこでの会話は当たり障りのないことに終始していたので、突っ込んだ話を聞きたいのだ。それでも全部は話してくれないだろうけど。
植物紙と多色印刷の本はどこに行っても驚かれ、我先にと購入の予約が入ったそうだ。当然ね。
紙の販売はギルドまかせだとしても、優先優遇に関してはティストーム国王の匙加減で決められたそうで、その後の外交はティストームがブイブイいわせる結果になったらしい。
外遊視察に随行したアルベール商会の庸人、ティストーム王都支部の商業ギルド、同じく皮革ギルドの職員は始終ほくほく顔だったとか。
お父さまは歴史書と合わせて贈った『ジャガの料理本』も持ち上げたので、関係していたアルベール商会も現地の商人から多くの声がかけられた。
驚いたことに、商品カタログを作って持って行ったそうなのですよ(見たい!)
カタログのおかげで商談がスムーズに進み、オリジナル商品が爆売れ邁進中なのでございます。
ギルドに委託している製品もカタログに載せていて、それらは相手国の同業ギルドに又委託契約され、末端価格が恐ろしいことになりそうだとミネバ副会長が言っていた。各ギルドに委託契約しておいてよかったとも言っていた。相当忙しくなるらしい……ギルドに登録している職人たちが。
「例のノッツ伯爵夫人は入国した時に挨拶だけしたけど、父上に色目を使ってるのを見て背筋が寒くなったよ。それを軽くあしらった父上は格好良かったなぁ。それとあのバ…ノッツ伯爵夫人、僕の髪と瞳の色が母上譲りだと言いながら舌打ちしてたから、絶対母上の美しさに嫉妬しているね。淑女の鑑って噂も絶対嘘だ。父上におねだりとか気持ち悪かった。下品だ。最悪だ。あんなのが国境にいたら悶着が起きるのがわかる気がするよ」
ルベール兄さまが人の悪口を言うなんて……ノッツ伯爵夫人は相当の ×××(思いつかない)のようだ。
「トルドンの王妃さまと、王子たちはどうでした?」
トルドン王は落ち着いた感じの人だとは聞いた。
知りたいのは王子情報だけだけど、王妃をたして濁しておく。
「物静かな方だったなぁ。ふたりの王子もそんな感じ。夜会で声をかけたけど生返事ばかりで会話が弾まなかったよ」
「10歳と9歳ですよね。どちらがお勧め……いえ、王太子になりそ……じゃなくて、え~と」
いけない、本音が。
「そうだねぇ……王族に生まれると考えちゃうよねぇ」
……ん? てっきり『シュシュ~、まだそんなこと言わないで~』とかになると思ったけど。
「僕は……マラーナに婿入りしたいなぁ」
ルベール兄さまは、頬杖をついて視線を遠くする。
(むこ……婿?)
小さくため息までついた。
──はっ! もしかして、マラーナで恋に落ちた!?
「アルベール兄さまに続いてルベール兄さまも!? 気になる方がいたのですか!?」
恋バナ? 恋バナ?
「ん~、ん~、う~……美人が、いっぱいいたんだ」
……思い出しニヤケ…という言葉はあっただろうか。
「マラーナのドレスって開放的で、僕の好みだなぁ。ひらひらぁ~って……でも一番はやっぱり……」
あぁ、ルベール兄さまの周りに小花が舞っている。
そうかぁ、女の子大好き少年だったかぁ~。
「お待たせしました」
よく来てくれた、チギラ料理人。話の腰を折ってくれてありがとう。
「これか、チューカメン。いい香りだね」
ルベール兄さまは箸を使ったことがないのでフォークだ。
麺を「長いの」とも言わない。
……………………………………………………
塩焼きそばの作り方
①ごま油を敷いた平鍋で豚バラ肉を炒める。
②キャベツ+人参+長ネギ+もやし+ニラを加えて炒める(いつも通り野菜は適当に)
③中華麺を入れてほぐしながら、鶏がらスープを加える。
④塩胡椒+すりおろしにんにく+白ワインを加えて炒めて完成です。
……………………………………………………
美味しいよっ!
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