50 / 57
第22杯 ②
しおりを挟む
「もしもし――――――」
「……あっこっちね、準備終わりそうだよ」
「弥生、今そっち行こうと思ってたんだよ」
「それなら、大丈夫。わからない事は哲太さんに電話して聞いたりしてるから」
「いつの間に携帯教えてもらったの?」
携帯の向こうで弥生がクスリと笑っているのがわかった。
「それはね~内緒。ちなみに手伝いに来てくてるふたりのは、まだなんだけどね」
「今は要らないよ、そんな“ちなみに”情報は」
「そう? じゃあ、お互い頑張ろう」
「――――――だね。ホントそっち行かなくても大丈夫?」
「いまんところはね。あ、材料が来たから電話きるね」
「うん――――――」
それで弥生との会話が終わるのだった。弥生の言葉が何故か頭に引っかる。妙に“ちなみに情報”のフレーズが頭から離れない。もしかしたら、今頃弥生は藤井くんの携帯の番号を聞いてるかもしれない、と想像するだけで、あたしは憂鬱になる。
そして、あたしの想像は妄想になって、暴走するのだった。
まさか――――――そんな訳ない……ないない――――――ないと思うけど。藤井くんってそんなに簡単に番号教えるっけ、洋輔じゃあるまいし。でも、どうだろう。逆に嫌だなんていうタイプでもなさげだよね……ダメだ、弥生のせいで、変な雑念で頭の中いっぱいになってる。
妄想を止められなくて、独り勝手に頭を抱えるそんなあたしに、誰かが声を掛けてきた。
「頭大丈夫? もしかして、痛いの?」
藤井くんが手にいっぱいの荷物を持って、こちらを心配そうな目で見ている。
あたしもまた、いないはずの彼を驚きの目で見た。
「どうして、藤井くんが……いるの?」
弥生の所に居るはずの藤井くんが、どうしてここに居るのか不思議で、あたしは一瞬も彼の顔から眼をそらせなかった。
それが藤井くんにも感じ取れたらしく、彼は微笑む。
「向こうは洋輔に任して、こっちの荷物をね。それがどうかした?」
「ううん、どうもしない」
あたしはうわずった声になりながらも、彼に自分の考えている事を悟られないように答えた。
「そう。ならいいけどさ。何かあれば何でも手伝うから、言ってくれよ」
「うん、ありがとう」
何事もなく、これで全ての準備が整ったのだった。これで、万全にお客様を迎え入れられる――――――色んな意味で。
それは浮ついてたあたしの気持ちを、目の前に藤井くんがいる事で払拭したから。
これ以上変な勘繰りをしないで、今日はフリーマーケットにだけ、集中しなくっちゃ、と改めて妄想からあたしは目を覚ました。
「……あっこっちね、準備終わりそうだよ」
「弥生、今そっち行こうと思ってたんだよ」
「それなら、大丈夫。わからない事は哲太さんに電話して聞いたりしてるから」
「いつの間に携帯教えてもらったの?」
携帯の向こうで弥生がクスリと笑っているのがわかった。
「それはね~内緒。ちなみに手伝いに来てくてるふたりのは、まだなんだけどね」
「今は要らないよ、そんな“ちなみに”情報は」
「そう? じゃあ、お互い頑張ろう」
「――――――だね。ホントそっち行かなくても大丈夫?」
「いまんところはね。あ、材料が来たから電話きるね」
「うん――――――」
それで弥生との会話が終わるのだった。弥生の言葉が何故か頭に引っかる。妙に“ちなみに情報”のフレーズが頭から離れない。もしかしたら、今頃弥生は藤井くんの携帯の番号を聞いてるかもしれない、と想像するだけで、あたしは憂鬱になる。
そして、あたしの想像は妄想になって、暴走するのだった。
まさか――――――そんな訳ない……ないない――――――ないと思うけど。藤井くんってそんなに簡単に番号教えるっけ、洋輔じゃあるまいし。でも、どうだろう。逆に嫌だなんていうタイプでもなさげだよね……ダメだ、弥生のせいで、変な雑念で頭の中いっぱいになってる。
妄想を止められなくて、独り勝手に頭を抱えるそんなあたしに、誰かが声を掛けてきた。
「頭大丈夫? もしかして、痛いの?」
藤井くんが手にいっぱいの荷物を持って、こちらを心配そうな目で見ている。
あたしもまた、いないはずの彼を驚きの目で見た。
「どうして、藤井くんが……いるの?」
弥生の所に居るはずの藤井くんが、どうしてここに居るのか不思議で、あたしは一瞬も彼の顔から眼をそらせなかった。
それが藤井くんにも感じ取れたらしく、彼は微笑む。
「向こうは洋輔に任して、こっちの荷物をね。それがどうかした?」
「ううん、どうもしない」
あたしはうわずった声になりながらも、彼に自分の考えている事を悟られないように答えた。
「そう。ならいいけどさ。何かあれば何でも手伝うから、言ってくれよ」
「うん、ありがとう」
何事もなく、これで全ての準備が整ったのだった。これで、万全にお客様を迎え入れられる――――――色んな意味で。
それは浮ついてたあたしの気持ちを、目の前に藤井くんがいる事で払拭したから。
これ以上変な勘繰りをしないで、今日はフリーマーケットにだけ、集中しなくっちゃ、と改めて妄想からあたしは目を覚ました。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる