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日常

別れの宴

「お頭!宴の準備が出来ました!存分に楽しんで行ってください!!」
「おぉ……悪いな｡俺一人辞めるくらいで」
「そんな事ありませんよ、お頭!俺たちはお頭のためにやってるんですから!ささ、座ってください」
「分かった」
シーフは促されるままに席に着いた｡程なくして宴は幕を開けた｡シーフを慕う人達からの感謝の言葉や、舞い手達の踊りなどの、様々な催しがシーフのために行われた｡
やがて、会場のテンションが最高潮になった時、ロクが話しかけてきた｡
「ねぇ、シーフ」
「ん?なんだ、ロク?」
「これは、いつまで続くのかしら?」
「さぁな｡この調子だと朝まではかかるだろう」
宴とは、そういうものなのだ｡誰かを送り出す時、迎え入れる時、祝いの席では朝までやると言うのがこの世界でのセオリーである｡ロクとヘンリエッタは心底嫌そうな顔をした｡
「長い……です｡こんな事やってる暇があったら、訓練……です」
「こればかりはヘンリエッタの言う通りね｡こんなくだらない事をやっている暇があるのなら、訓練をしてもっと強くなるべきよ」
「そうは言われても……」
「頭領様ぁ~｡一緒に踊りましょうよぉ~♪」
シーフが口ごもった時、舞い手の一人がシーフを踊りに誘った｡
「お？おぉ、いいぞ｡そんな訳だから、ロクとヘンリエッタは嫌なら先に帰っていてもいいぞ?」
「何を言っているの｡あなたが変な事をしないか監視するのも私の役目よ」
ロクは少々苛立ちの篭った声でそう言い、
「同感……です」
ヘンリエッタもそれに同調してくる｡
「そうかい……｡俺は変な事なんてしないけどな」
「頭領様早くぅ~♪」
「おぉ、今行くぞ｡じゃあ、二人とも、楽しんでな」
「「えぇ……(です)」」
二人にそう残したシーフは、舞い手とステージに上がる｡会場は更に盛り上がった｡

　　　────残された二人────
「行ってしまったわね……」
「そうですね……です」
「置いていかれたわね……」
「えぇ……です」
二人は寂しそうに酒を飲む｡すると、女性が近寄ってきた｡
「あら?あなた達はシーフさんの……｡ちっちゃい子がお酒を飲んじゃだめでしょ?……まったく、シーフさんはいつも子どもの躾が甘いんだから」
「「私は成人してる(わ)(です)!!」」
「またまたそんな事を言って……｡今度こそはシーフさんに躾の仕方を教えてあげなくちゃ……｡ほら、これじゃなくて、こっちのジュースわ飲みましょうね?」
そう言うと女性は二人から酒瓶を取り上げ、代わりにジュースを渡した｡
「「……」」
二人は不服そうな顔をするも、ジュースを一口飲んだ｡

　　　　────ステージ────
「頭領様お上手ですわよ♪」
「伊達に長く踊りを教えていないからな｡当然だろう」
「そうでしたわね｡私も頭領様に教わったのですよ♪」
「覚えているぞ｣
「まぁ嬉しい♪頭領様大好きですわ♪」
「そんな事言われてもこまるなぁ……」
シーフは女性と楽しく踊っていた｡その時、
「大変だ!シーフ様のお連れさんが倒れているぞ!」
「何っ!?」
シーフは踊るのを止め、二人の元に近寄った｡
「これは……即効性の麻痺毒だな｡誰か、メディックボールを二つ持ってこい!」
「分かりました!」
「待ってろよ、直ぐに楽にしてやるからな……」
シーフは真剣な眼差しで、二人を見つめる｡
そんなシーフを遠くから見て、嘲笑う者がいた……｡