上 下
43 / 127

前世の繋がり

しおりを挟む
 ティナの親父さんは銃で戦って居た事実を聞いて自分の理解が及ばない事に気付く。

「ティナ……お父さんはどんな格好してた?」

「え?茶色のマントして……ん~……ベージュのブーツ?んで白っぽい色々な緑の柄の服だったよ!あ、ポーチは胸とか腰とか沢山付けてたかも……」

(何か意味が解らん……どんな格好だ?)

「じゃ銃以外の武器は無かったの?」

「いつもマサキに渡してる薮払いだよ。」

「え?」と思い、立ち上がりそれを見に行く。
 この二ヶ月、森に水汲みに行く時は必ず携帯させられたものだ。
 グリップが木で造られていて、よくよく見ると刃の付け根には

ONTARIO KNIFE US

と刻印があった。

「うそだろ…………」

 驚きと嬉しさで手が震える。自分は日本人だけど、こんなにも誇らしくUSの文字が見える日が来ようとは……前世に存在した物が、こんな所で出逢えるなんて……

「どうしたの急に…?マサキ……何で泣いてるの?」

ティナは不思議そうな顔をして覗き込む。

「ごべん……思わず感極まった……ごれ、俺が前住んでた前世の物だ……」
(いや~歳とると涙腺弱くなっちまうなぁ~!)

「え?そうなの!じゃまさかお父さんも異世界からってこと?」

「恐らくは……」

 ティナの親父さんは多分在日米軍だ。着てた物も要はカモフラの軍服だ。実際何処の部隊かは分からないけど、俺と同じ災害でこっちに来た人間だろう……マチェットを持ってたという事は、何かしらの訓練中だったのか?でも時系列が合わないのは何でだ?仮に同じ災害に遭ったとして、十数年もタイムラグが起きるもんなのか?

 マサキの中で色々な疑問が頭を駆け巡るが、取り敢えず痕跡が残って無いか調べる事にする。

「ティナ、他に親父さんが持ってた物って無い?」
(もしかしたら何らかの手掛かりが残ってるかもしれない。)

「ん~……どうだろう?いつも余り勝手に入るなって言われてたからなぁ……部屋に行けば何か有るかも。」

「見て良いか?」

「別に良いよ!いつもマサキそこで寝てるんだし(笑)」

「いや、ちょっと意味が違うだろ、ある意味と言うか、家探しだからなぁ……」

「良いよ!てか、私も一緒に探せば問題無いでしょ?」

「助かる!」

 前世の人間がこっちに来ている!やっぱあの時言われた事は本当だったんだ。こんな世界でどうやって前世の人間を捜そうかと思って居たけど、何とかなるかも知れない……

 ティナの父親の部屋はかなりシンプルである。机、ベッド衣装タンス、本棚、それだけである。

「ティナは机と本棚を探してみて!俺はクローゼットとベッドを探すから!」

 旅の荷物もほっぽり出して夜の大捜索が始まった。

 結果的に、クローゼットを開けても服しか無かった。(一瞬、何かライフル銃とか入って無いかな?とか思ったけど……)クローゼット下の引き出しも下着等の衣類しか入って無かった。(オヤジの下着見てもなぁ……)ベッドの布団を捲ったが何も出て来ず、ベッド下の引き出しも同様だった。

「何かあったぁ~?」
とティナが声を掛けて来た。

「いや、何も……そっちは?」
(何も隠して無いのかなぁ?)

「こっちも特には……」
と空振りの返答。

 十数年もの間、どうやって銃で戦ってきたんだろう?消耗部品は?弾は?当然使いっぱなしでは不具合が出るので、メンテナンスに関わる道具や、ケミカル用品が必要となってくる。

「う~ん……維持の方法が思い付かん………」
とマサキが考えこんでいる時ティナが呼んだ。

「マサキ!これは?」

「なに!」

 ティナが見つけた物は二十センチ四方の木の箱であり、表蓋にはアクリルの板が貼り付けられて居るようで、艶々としている。
(キタキタキタキタキター!)

「何か魔法で鍵が掛けてあるね……」
と覗き込んでいるティナが話す。

「開ける方法解る?」

「ん~……多分これかな……?」
と表蓋の透明な部分に指を触れると文字が浮かび上がってきた。

(アメリカの首都は?)

「え……?」
二人同時に声が出た。
(シンクロ率四百パーセントですぞ!ティナタソ!)

 指を離し、もう一度触ると

(キャンプ・シュワブはどこの国の何県?)

「なにこれ……なぞなぞ?」

「マサキ、これどう言う意味なの?」
 意味が分からず困惑気味でティナが聞いてくる。

「これは、俺が前世に居た世界の情報だなぁ……」
(前世に居た人間じゃないと知り得ない事だぞ!)

 今度はティナに代わってマサキが触ってみると違う質問が出て来た。

(TOP GUNで一躍有名になった俳優は?)

「…………おい……」

「私は出てる意味が全然解らないんだけど、マサキは意味が解るの?」

「まぁ……なんだ……一応はなぁ……」
(何かこの質問、馬鹿にされてる感が有るのは気のせいかな?)

「じゃ開けられるね!」

「まぁそうかも何だけど、どうやって?」

「ん~……答える~……んじゃないの?……かな?ほら、ダンジョンとかの宝箱も解錠の詠唱するでしょ?」

「いや、ほら!とか言われても、俺やった事ないし……」

「大丈夫だって!流石に解錠失敗しても罠があるとかじゃ無いし!多分……」

「爆発とかしないよな?最後の、多分ってのが怖いけど……」
 と何回か指で触って行くと、最初の質問に戻ったのでそこから始める。

(アメリカの首都は)

(ワシントンだよなぁ)

 すると最初の質問が消えて次の質問が浮かび上がる。

(キャンプ・シュワブはどこの国何県?)

(日本国の沖縄県)

 こうやって幾つかの質問を解いて行くと、何事も無かったの様に表蓋が少し浮いて箱が開いた。

「開いた!」


 箱の中には、手紙と一丁の小さなリボルバー、そして弾薬が入っていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側室を用意したら離縁して下さいますか?

ヘロディア
恋愛
育ちがよく、幸せな将来を予想していた主人公。彼女の結婚相手は望んでいた結婚とは大違いであった。 夜中になると貪るように彼女を求めてくる彼と、早く離婚したいと願うようになり…

ヒロイン聖女はプロポーズしてきた王太子を蹴り飛ばす

蘧饗礪
ファンタジー
 悪役令嬢を断罪し、運命の恋の相手に膝をついて愛を告げる麗しい王太子。 お約束の展開ですか? いえいえ、現実は甘くないのです。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。

克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

処理中です...