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ジレンマとおとっつぁん

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 余りにも不幸……と言うより壮絶なティナの過去を知り、少々放心状態のマサキ。

(なんて言うか、これこそ言葉が見当たらない……)

 そんなマサキを見て、絞り出すようにティナの口から出た言葉は

「お願いだから何処にも行かないで……」

「え?」
(今、俺告られたの?なんでこのタイミングで?なの?)

 ティナは涙を溜めて言葉を続けた。
「お願いだから、死なないで……」

(…………え?……俺死んじゃうの?なに、コレ死亡フラグ的な感じ?)

 余りにも唐突に自分の死を心配されたので、焦りながら言葉を繋ぐ。

「ちょ!ちょっと待って!待って!」と慌ててティナの言葉を制し話を続ける。
「いや、意味わかんないって!俺は死ぬつもりなんて全く無いから!」

「うん、解ってるよ…ゴメン……」
 泣きながらティナは言った。
 
 一度溢れ出した感情は涙の洪水になり、暫く治まらなかった……

 
泣くだけ泣いて、大分落ち着いたティナがしゃくりながら口を開いた。

「ごめんなさい……」

「いや、もうそれは良いから…って、今日はティナ謝ってばっかだな!(苦笑)」

「うん。でも、無茶な事言ってごめんなさい……」

「無茶って?」

「何処にも行かないでって言ったの……ここに来た理由も解ってるんだけどね……直ぐどっか行っちゃう訳でも無いのにさ……」
  赤く眼を腫らしたティナが上目遣いで話す。

「あ~……まぁ、うん。」
(これは……どうすれば良いんだ?ティナの心情は理解できる。でも正確の答えが解らんぞ!)

 自分の中で納得が行ったのか、それとも諦めなのか解らない表情で言葉をつづける。
「なんかさ……今日お店で、いづれこの世界に来た目的を果たすって言ったでしょ?」

「うん。」

「それ聞いてさ、あ~この人もまた居なくなるんだなぁ~って思ったら急に哀しくなっちゃってね……でもマサキもマサキの用事があってこの世界に来たから引き止めちゃダメだって……私がお荷物になっちゃダメだって思っちゃってね……なんか矛盾してるよね、私……」 と空元気ならぬ空笑いをするティナ。

(そうか、両親は魔物に殺され、育ての親も一年前から行方不明……で、俺もいつかはって考えると…いや、コレはある意味吊り橋効果なんジャマイカ?)

 マサキはティナの言葉を色々と思案するが、所詮8bit程度の演算能力しか持たない為、正しい答えが導き出されずにいた。と云うより、前世も含めて、今まで余り人と関わって来なかった為の弊害がここで現れたのだった。

 そして出た言葉が
「なんか、ゴメン……」
である。

(なんだコレ……コレって男女の考え方の違い?見たいヤツか?てか、異世界なのに異性関係の悩み?え?逆に異世界だからなのか?)

「いや、マサキは悪くないって!」
とティナは泣き笑いで答える。

「そうとは云え、原因が俺に有るからなぁ…っても暫くは、厄介にさせて貰うつもりだし、そもそも俺、引きこもりのニートじゃん?(照)」

「そこ、照れない!」

 ピシャリと言われた。

「ですよね…(しゅん)」
(やっぱ働かないと駄目……なの……か……?)

 ティナは、先程よりも大分精神的に落ち着いたのか、晴々した表情で
「いやぁ~……私こそホントゴメン……なんか一人で先走って変な事思ったり、一人で考え込んでさ……」
と自嘲気味に笑った。

「いや、良いよ!若い内はそんなもんだって!」

「何よ!そのおっさん発言。偉そうに歳上振っちゃってさ!」

「ちっとも偉くは無いが一応歳上何ですけどぉ~……しかも倍以上違うんですけどぉ~……(汗)」

「そんな事は解ってるの!」
 
 そう言うと、赤い目のままティナはプクッと頬を膨らませてイタズラげに微笑んだ。



 今日一日、ティナの機嫌が悪かった件も解決、とまでは行かなくても和解出来たので良しとする。
 後は父親、ここで言う父親は、奴隷だったティナを引き取った男の事である。

「ちょっとお父さんの事も聞いていい?」と一応エクスキューズを入れて話を聴く。

「良いよ!マサキの言ってるお父さんは育てのって事だよね?」

「うん。」

「お父さんは冒険者だったよ!」

「うん。それで?」
(まぁ想定内だよな。)

「それでぇ~……沢山色々な所を旅してた。」

「まぁそうだろうなぁ……」

「で、魔物倒したり、荷物を街から街に運んだり……そんな感じだったかなぁ?」

「うん!さっぱり解らん!」
(荷物運ぶのは、旅の移動のついでって感じかな?)

「え~!なんで?」

「ん~……ざっくりし過ぎてただの冒険者のイメージしか沸かんから。」
(この娘、ほんとに説明下手くそなのね……言葉が足りなさすぎるよ…)

「何言ってんの?ただの冒険者だってば!(笑)」

 いや、絶対に違う。自分がこんなだから余計にわかる事がある。五歳児の子供を連れて、普通に冒険者業が務まる筈がない。それはここに来て日が浅い俺にも解る事だ。小さいティナを守りながら、魔物と戦える実力を持ってる人……と考えるのが妥当だろうな……

「ティナはいつからここに住み始めたの?」
(何か尋問してる気分になるな……)

「ここには5年前からだよ。今日会ったポーラさんも、その頃からの付き合いだよ!」

「ポーラさんとお父さんは知り合いなの?」

「ん~……どうなんだろう?全く知らない人って訳では無いと思うけど…私がポーラさんの話をしても解ってたから。」
(ん~……冒険アイテム絡みなのかなぁ?う~む……聞けば聞くほど謎しか生まれてこない……)

「じゃお父さんの冒険者ランクとか知ってる?」

「いや~……聞いた事無いから知らないよ!」
(おい!聞けよ!)

「でも大分上なんじゃ無いのかなぁ?だって、今でこそ色々出来るようになって解るんだけど、小さい頃なんて、私、ただのお荷物だもん。」

(そこは理解してたんだな。)

「お父さんには色々教えて貰ったなぁ……」

「例えば?」

「魔法もそうだしモアの乗り方もそうだし………」
(やっぱ魔法もだよなぁ……)

「そう言えばさ、どんなモアに乗ってたの?」

「え~?どんなと言われてもねぇ……」

「ギガントモアよりもずっと小さかったけど、あれ位のスピードが出て走れたよ!あ、後首輪が無くて何か操作が難しそうだった…かな。」

(首輪が無い?どうやって起動してたんだろ?)

「この間かりたギガントモアはさキーあったじゃん?そのお父さんが乗ってたのはキーとかあった?」

「無かったよ!何かいっぱい操作してたよ!」

(これも聞けば聞くほど謎しか出て来ない……)

「そのモアは凄かったんだから!」

「何が?」

「魔法打てたりとか?いや、何回か乗り換えちゃったから記憶がごっちゃになってるかも……(汗)」

「何羽位乗り継いだの?」

「結構沢山だよ~!5羽?6羽位かなぁ……?」

(その内のどれかがA種を取得できるモアだったんだろうなぁ……)

「あ、ちょっと思い出したけどさ、鍵が無くて、モアの首の後ろと鞍の両側に、何か今日シンディさんが使ってたような操作パネル?が付いてたよ!」

(どうなってるのか、全く理解が追い付かんわ……)

「じゃ、お父さんはいつも何で魔物と戦ってたの?やっぱり剣とか?」

「いや違うよ!こう、バーン!て。」

「バーン?」

「ほら、マサキこの間ドットファイヤー打ち出したでしょ?」

「うん。」

「あんな感じの道具だよ!」

「それって、まさか銃?」

「あ、そうそう!銃だよ!」


ここに来て僅かに前世と繋がった気がした。
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