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ジミとの別れと帰宅

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荒野地帯を抜け、草原が拡がる緑の丘陵地帯に入った。
お昼過ぎという事もあって木陰でランチタイムだ。

「こうやって食事をするのもコレが最後ですねぇ……」

ジミは少し寂しそうに、そんな言葉を口に出しスープを啜る。

昨日今日とは言え、とても砕けた間柄になったので、マサキとティナは一末の寂しさを覚える。

「ジミはどうするか決めたの?」

酷と想いながもイレギュラーな事態になると対応出来ないと思ったマサキは聞いた。(イレギュラーでなくても対応出来んけどねwww)

「実際決め兼ねています……けど、お二人にはこれ以上迷惑を掛けたくないので町に入る辺りでお別れしましょう……」

(おいおい、なんだ、このしんみり展開……こんな展開要らんぞ!)

ティナも良い案が思い付かないので黙って成り行きを見ている。

「ま、上手く行けばさ、また会えるって!」

 これは気休めにしか他ならない。定住してる者や、よっぽど親しい間柄でないと〖また〗が無い事はお互い解っている。
 ましてや奴隷の脱走者となれば、ほぼ今生の別れに等しい。

 自分のせいで重苦しい雰囲気になってしまった事が申し訳なかったのか、ニカッと笑って
「ですねぇ!考えても仕方ありませ~ん!何とかなりますって!きっと!お二人には感謝していますよ~!」
とわざとおどけて言った。

(何とか出来ないものだろうか……とは言え俺は無力だ……)

 チラッとティナを見ても同じような考えだったのか、眉毛を八の字にして寂しそうに笑っていた。

 昼食も滞り無く済んで帰路へのラストスパートが始まる。
 それはジミとの別れの時が刻一刻と迫る事でもあった。

 午前中と同じようにモアを走らせている時
「マサキ、ジミさんどうにかならないの?」と言って来た。

「どうにかってってもなぁ……ティナが一番俺の現状知ってるじゃん。」

そう。俺は異世界から来た居候で働いたら負けのニートで引きこもりなのだ!

「て言うか、ティナが判断は本人に任せようって言ったんじゃん!」

「そうなんだけど……ジミさん悪い人じゃ無いし…」

「そりゃ解ってるけど……どうしようも無いだろ?だったら隠れて三人で住むか?」

「そ、それは……」

「だろ?それに、そんな事、ジミに提案して聞き入れると思うか?」

「まぁ、断るだろうねぇ……」

「こうなった以上、案ずるより産むが易しだよ。」

「何それ?案ずるより?……やすし?」

「前世でのことわざでな、出産て女の人にとって一大イベントだろ?それで色々考えたり心配するより、思い切って産んじゃった方が簡単って意味なんだよ。」

「なるほどねぇ……確かにそうかも……」
(ちょっと柄にも無く歳の功を出しちまったぜ!てへぺろ)

「そんな感じでジミ任せるしか無いよ。」

「解った、そうだね!」

 いい子いい子と頭を撫でた時、頭ちっせぇーって思ったのは秘密だ。

 途中、何回か休憩を挟んで走っていたので、辺りが暗くなった頃に町の手前まで戻って来た。
 見覚えのある白い柵が並んでいる。道から外れて来たのは荒野地帯に遠回りして来たからだ。
当然、荒野等誰も好んで行きたくないので基本的に街道は引かれてい無い。
 それでも、新しく覚えた魔法の試し撃ちや召喚魔法の練習、自分等のような物好きな人が通る為、自然と道が出来あがっていた。

「シー……ザザッ……マサキさん、私はそろそろこの辺で行くので止まって下さい!」

ジミからの連絡が入る。

(いよいよかぁ……)

「ガッ……了解。」

 手綱を引き木の影にモアを停める。

3人共モアを降りるが言葉少なげだ。

(いやぁ~こういう時って何を話して良いのかわからんよなぁ……)

どうしたら良いのか解らず黙って居るとジミから話を切り出した。

「マサキさん、ティナさん短い間でしたがとても楽しかったデース!それから、命を助けてくれてありがとう!一生この恩は忘れませ~ん!」

「おう!拾った命だ!粗末にすんなよっ!(ビシッ!)」
(マジ何話せば良いのかわからん!)

ジミの空気を読んで極力明るく振る舞うマサキ。

「それで、ジミさんはこれからどうするの?」

 ティナが肝心な事を聞いた。
 確かに一番の気掛かりだ。

ニカッと笑いながら
「ん~それについてはTop secret(巻舌)デース!」

(ギャグなのか真剣なのか貴方の顔じゃ判別出来ません……)

「なんで!?」

少々不満気にティナが聞くと

「そうね、世の中には知らない事の方が楽に生きれる場合が有りま~す!」

「何それ……私だって一応は心配して聞いてるのに!」

ジッとジミの顔を見ながら、
尚も食い下がるティナ。

「ティナ!やめろって!」

「だってぇ~……」

(ここで、だってもへったくれも無いなんて言う大人にはなりたくないぞ。)

ジミは笑いながら困り顔でこちらを見る。
(え?ここで俺に振るの?)

「あのな、」とマサキが口を開く。

「ジミは俺らの事を気遣って言ってくれてるんだよ。仮に捕まった場合、ジミの今後の行動を知ってて別れたら俺らも幇助の罪になるんだぞ。」

「うん。」とティナは泣きそうな顔で話をを聞く。
(ティナタソ泣いちゃらめぇ~……てか泣きそうな顔もおぢさんハァハァですぞ!)

「知らなければ知らないで行き倒れの人を助けました、それで終わる話だ。ジミの気持ちを汲んでやろうぜっ!(ビシッ)」
(う~ん……余りこういう事はしたくないですぞ…)

ウンウンと頷いて聴いているジミ。

「全く……えらそーに説明しちゃって!解ったわよ!」
とプイっとそっぽを向く。
(おやおやぁ?コレはツンデレフラグですかなぁ?)

「まぁ、そんな感じだ!」
(ウインク!)

「ですねぇ!」
(サムアップ)

「はい!これ!」
とティナが手さげごとジミに渡す。

「これは?」
とジミが中を見るとパンと干し肉、薬草とポーションが入っていた。

「おお!!!!!」
ジミが感嘆の声を上げる。

「これも!」
と、俺の予備、と言うかティナの父親が使っていた衣類を渡していた。

「べっ、別に前から用意してた訳じゃ無いんだからねっ!私達はもう帰るんだし⤴荷物多いと邪魔だから、あげるだけよ!」

「おお!!!!!」
余りにも完璧なツンデレっぷりに今度はマサキが感嘆の声を上げた。

別れ際
ジミに「また会いましょう!ティナさんを大事に!(ニヤリ)」
と言われた。
(あははは…乾いた笑いしか出んわ……)

モアに乗り込み出発すると暗くてよく見えなかったが小さくなるまで手を降っていた…と思う。


ジミとの別れをして柵がしてある街道に入り、モアの返却の為に役所へ向かう。

「ガッ……ティナ!」

「ザザッ……なに?」

「シー……ザッ……このモアさ、そのまんま返していいの?」

前を走るティナが乗っているモアが急停止した。

「ザッ……忘れてた~!ちゃんと餌あげて返さないと~!」

「ザザッ……ですよね~………」

 夜も更けて来た時間に、道端でモアに餌を与える2人であった。
そして、無事に役所にモアを返して帰宅に至った。

「また、明日役所行かないとね!」
全く疲れを感じさせないティナが言う。

「なんで?」
疲れしか感じさせ無いマサキが答える。

「だって冒険者カードの更新とか返却物とか有るでしょ?」

「まじか……」

「まじよ!(ニヤリ)」

 またあの待ち時間の長い役所に行かなければならないのかと、とても憂鬱な気分で旅は終えた。
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