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第3章 この世界が思ってた以上にやばかったんですけど

15:ひと筋の光

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「その後、戻っていらしたプロキオン様にここの守護をお頼みした後で、魔王様のもとへせ参じた次第でございます」

 プロキオンの話を受けてセバスチャンが言葉を付足す。魔王は納得したようにうなずいた。

「統治同盟にそんな裏があったのか……」

 シルディアの騎士として戦っていた俺には、耳を疑うようなことだ。
 俺に視線を注ぐシルディア王は未だに俺がアーガイルであることも、目の前に魔王がいることも飲み込めないままらしい。

「そのダレンサランとシグニとかいう奴に何の関わりが?」

 第七魔王がそう尋ねる。

「ダレンサランはシグニの造った化物クリエイテッドだ。そんなことも知らんのか」

 呆れるプロキオンを第七魔王が鼻で笑う。

生憎あいにく、私はボンクラなこの世界の住人ではないのでな」

 プロキオンがいきどおりを込めた目で睨みつけるが、魔王の咳払いひとつで場が収まる。

「さすがにシグニをらねばならんな。世話の焼ける奴だ……」

 ファレルが勇ましく声を震わせる。

「レヴィト様を連れ去ったのも、シルディアを崩壊させたのも、シグニの仕業だ。絶対に許すわけにはいかない……!」

 シルディア王がビクリと身体を強張こわばらせる。

「シルディアが……崩壊……?」

「うむ」魔王がうなずく。「お前が統治同盟の裏でうごめく連中をきつけたせいでな」

「本当……なのか……?」

 シルディア王はその場にへたり込んでしまう。俺は咄嗟とっさに駆け寄ってその身体を支えた。

「残念ですが、事実です。今は生き残ったみんなが復興に当たってくれています……」

 動揺にまみれた瞳が俺を見つめる。こんな王を見たのは初めてだった。

「君は……本当にアーガイルなのか?」

「もうお会いしたくはなかったでしょうが」

「魔族に寝返ったと報告を受けていたが……、今では何が正義なのか分からん」

 その言葉に魔王を始めとした魔族たちが口元を歪めてわらう。魔王は溜め息をついた。

「人間は正義という言葉が好きだな」

 俺はシルディア王に手を貸して、ゆっくりと立ち上がらせた。彼は力なく微笑む。

「ずっと勇者が街を出て行く姿を見送ってきた。その度に言い知れぬ後悔を抱いてきたのだ。本当に統治同盟が腐っていたのなら、それに従ってきた私は間抜けだ……」

「俺は家族すらも救うことができませんでした。ですが、もう今の自分にやれることをやるしかありません」

 シルディア王は目を丸くして俺を見つめた。

「いや、君の家族は生きている」

 唐突過ぎて言葉が素通りしていた。王は続ける。

「君が魔族に寝返ったことで、君と繋がりのあった者は迫害の恐れがあった。だから、私としても都市の庇護下に置くことはできなかったのだ……。すまない」

「シルディアを出たということですか……?」

 シルディア王がうなずく。

 ──生きている? みんなが?

「スカーレットたちもですか?」

「ああ、そうだ」

 思わずシルディア王の肩を掴んでいた。

「どこに行ったんです?!」

「と、東方のビジュマステを目指したはずだ」

 絶望の淵から光が見えたような気がした。

「盛り上がっているところすまん」魔王が口を開いた。「今からシグニの奴にお仕置きをしようと思う」

「居場所も分からないのに?」

 ファレルがいぶかしんでこたえる。

彼奴あやつは私を魔力源としている化物クリエイテッドだ。つまり、私が魔力供給を断てば死ぬ。このように……」

 魔王はニヤリと笑って、指を鳴らした。
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