102 / 107
第3章 この世界が思ってた以上にやばかったんですけど
15:ひと筋の光
しおりを挟む
「その後、戻っていらしたプロキオン様にここの守護をお頼みした後で、魔王様のもとへ馳せ参じた次第でございます」
プロキオンの話を受けてセバスチャンが言葉を付足す。魔王は納得したようにうなずいた。
「統治同盟にそんな裏があったのか……」
シルディアの騎士として戦っていた俺には、耳を疑うようなことだ。
俺に視線を注ぐシルディア王は未だに俺がアーガイルであることも、目の前に魔王がいることも飲み込めないままらしい。
「そのダレンサランとシグニとかいう奴に何の関わりが?」
第七魔王がそう尋ねる。
「ダレンサランはシグニの造った化物だ。そんなことも知らんのか」
呆れるプロキオンを第七魔王が鼻で笑う。
「生憎、私はボンクラなこの世界の住人ではないのでな」
プロキオンが憤りを込めた目で睨みつけるが、魔王の咳払いひとつで場が収まる。
「さすがにシグニを殺らねばならんな。世話の焼ける奴だ……」
ファレルが勇ましく声を震わせる。
「レヴィト様を連れ去ったのも、シルディアを崩壊させたのも、シグニの仕業だ。絶対に許すわけにはいかない……!」
シルディア王がビクリと身体を強張らせる。
「シルディアが……崩壊……?」
「うむ」魔王がうなずく。「お前が統治同盟の裏で蠢く連中を焚きつけたせいでな」
「本当……なのか……?」
シルディア王はその場にへたり込んでしまう。俺は咄嗟に駆け寄ってその身体を支えた。
「残念ですが、事実です。今は生き残ったみんなが復興に当たってくれています……」
動揺に塗れた瞳が俺を見つめる。こんな王を見たのは初めてだった。
「君は……本当にアーガイルなのか?」
「もうお会いしたくはなかったでしょうが」
「魔族に寝返ったと報告を受けていたが……、今では何が正義なのか分からん」
その言葉に魔王を始めとした魔族たちが口元を歪めて嗤う。魔王は溜め息をついた。
「人間は正義という言葉が好きだな」
俺はシルディア王に手を貸して、ゆっくりと立ち上がらせた。彼は力なく微笑む。
「ずっと勇者が街を出て行く姿を見送ってきた。その度に言い知れぬ後悔を抱いてきたのだ。本当に統治同盟が腐っていたのなら、それに従ってきた私は間抜けだ……」
「俺は家族すらも救うことができませんでした。ですが、もう今の自分にやれることをやるしかありません」
シルディア王は目を丸くして俺を見つめた。
「いや、君の家族は生きている」
唐突過ぎて言葉が素通りしていた。王は続ける。
「君が魔族に寝返ったことで、君と繋がりのあった者は迫害の恐れがあった。だから、私としても都市の庇護下に置くことはできなかったのだ……。すまない」
「シルディアを出たということですか……?」
シルディア王がうなずく。
──生きている? みんなが?
「スカーレットたちもですか?」
「ああ、そうだ」
思わずシルディア王の肩を掴んでいた。
「どこに行ったんです?!」
「と、東方のビジュマステを目指したはずだ」
絶望の淵から光が見えたような気がした。
「盛り上がっているところすまん」魔王が口を開いた。「今からシグニの奴にお仕置きをしようと思う」
「居場所も分からないのに?」
ファレルが訝しんで応える。
「彼奴は私を魔力源としている化物だ。つまり、私が魔力供給を断てば死ぬ。このように……」
魔王はニヤリと笑って、指を鳴らした。
プロキオンの話を受けてセバスチャンが言葉を付足す。魔王は納得したようにうなずいた。
「統治同盟にそんな裏があったのか……」
シルディアの騎士として戦っていた俺には、耳を疑うようなことだ。
俺に視線を注ぐシルディア王は未だに俺がアーガイルであることも、目の前に魔王がいることも飲み込めないままらしい。
「そのダレンサランとシグニとかいう奴に何の関わりが?」
第七魔王がそう尋ねる。
「ダレンサランはシグニの造った化物だ。そんなことも知らんのか」
呆れるプロキオンを第七魔王が鼻で笑う。
「生憎、私はボンクラなこの世界の住人ではないのでな」
プロキオンが憤りを込めた目で睨みつけるが、魔王の咳払いひとつで場が収まる。
「さすがにシグニを殺らねばならんな。世話の焼ける奴だ……」
ファレルが勇ましく声を震わせる。
「レヴィト様を連れ去ったのも、シルディアを崩壊させたのも、シグニの仕業だ。絶対に許すわけにはいかない……!」
シルディア王がビクリと身体を強張らせる。
「シルディアが……崩壊……?」
「うむ」魔王がうなずく。「お前が統治同盟の裏で蠢く連中を焚きつけたせいでな」
「本当……なのか……?」
シルディア王はその場にへたり込んでしまう。俺は咄嗟に駆け寄ってその身体を支えた。
「残念ですが、事実です。今は生き残ったみんなが復興に当たってくれています……」
動揺に塗れた瞳が俺を見つめる。こんな王を見たのは初めてだった。
「君は……本当にアーガイルなのか?」
「もうお会いしたくはなかったでしょうが」
「魔族に寝返ったと報告を受けていたが……、今では何が正義なのか分からん」
その言葉に魔王を始めとした魔族たちが口元を歪めて嗤う。魔王は溜め息をついた。
「人間は正義という言葉が好きだな」
俺はシルディア王に手を貸して、ゆっくりと立ち上がらせた。彼は力なく微笑む。
「ずっと勇者が街を出て行く姿を見送ってきた。その度に言い知れぬ後悔を抱いてきたのだ。本当に統治同盟が腐っていたのなら、それに従ってきた私は間抜けだ……」
「俺は家族すらも救うことができませんでした。ですが、もう今の自分にやれることをやるしかありません」
シルディア王は目を丸くして俺を見つめた。
「いや、君の家族は生きている」
唐突過ぎて言葉が素通りしていた。王は続ける。
「君が魔族に寝返ったことで、君と繋がりのあった者は迫害の恐れがあった。だから、私としても都市の庇護下に置くことはできなかったのだ……。すまない」
「シルディアを出たということですか……?」
シルディア王がうなずく。
──生きている? みんなが?
「スカーレットたちもですか?」
「ああ、そうだ」
思わずシルディア王の肩を掴んでいた。
「どこに行ったんです?!」
「と、東方のビジュマステを目指したはずだ」
絶望の淵から光が見えたような気がした。
「盛り上がっているところすまん」魔王が口を開いた。「今からシグニの奴にお仕置きをしようと思う」
「居場所も分からないのに?」
ファレルが訝しんで応える。
「彼奴は私を魔力源としている化物だ。つまり、私が魔力供給を断てば死ぬ。このように……」
魔王はニヤリと笑って、指を鳴らした。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる