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【大いなる意思:創造神VS竜馬】

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平安京に突如として現れた閉鎖空間に捕らわれた四人に、創造神が放った巨大な流星群が眼前に迫ってきた。
突然、直径数十、いや数百メートルはあろうかと思われる巨大な岩石群が、流星となり燃えながら迫ってきたのである。
これには数々の危険と隣り合わせで生きてきた竜馬も驚かずにはいられなかった。
創造神は本気で「確実な死」を竜馬たちに与えようと神の力を使ってきたのだ。
この閉鎖空間は魔女アラクネが作り出した世界より、格段に大きなものだったが、それでも巨大流星から逃げるスペースは無いと咄嗟に判断した竜馬は、『「さつき」、晴明殿を守るんだ』と指示を出し、自らは闘気を身に纏い、力(psychokinesis:サイコキネシス)を解き放った。
流星が衝突するまで、竜馬に与えられた時間は数秒も無かったが、突き出された掌からは迸(ほとばし)るように力が噴き出し、身を守る見えない超能力によるバリヤーが形成された。
サイコキネシスのバリアーを形成した直後、巨大岩石が、まさに危機一髪のタイミングで激突した。
それは凄まじい衝撃だったが、バリアーの力により轟音とともに砕けて飛び散った。
後を追って、次々と飛んできた巨大流星群の直撃からも、見事に防ぎきったが、もし、竜馬が一瞬の判断を間違っていたならば、今頃は岩石に押し潰されていたことだろう。
竜馬は咄嗟の判断により助かったが、ひや汗がでる程、危なかったのが事実である。
この危険を予知し対処する能力は、戦士として、幼い時から鍛え抜かれ、遺伝子レベルまでに刷り込まれた予知能力に近い動物的な感と対処能力だった。
「さつき」は竜馬のバリヤーに、ぶつかり砕けて飛散した岩石から、強力な魔法による障壁を詠唱もせずに作り、晴明と自らの身も守りきった。
それは彼女だったから出来た事で、流石と言うほかにはない。
死神少女に至っては本来の体が、今いる次元には、ないのだから、そもそも危険だと感じたかどうか疑問が残るところである。
巨大岩石からの危機を脱し、砕けた土埃も落ち着き、安堵感に浸っている時だった。
その時、突然、『ほお~なかなかやるじゃないか・・・うふふ・・・久し振り楽しめそうじゃわい』と天上から閉鎖空間に轟くような声がした。
そして、声の主は、その巨大な雄姿を現したのである。
竜馬はその巨大な人物を見た瞬間、根拠はなかったが、この山の様な人物こそ、紛れもない創造神なのだと思った。
何故か、神々(こうごう)しさのなかに、途轍もない危険なものを感じた。
これ程の巨大な閉鎖空間を作る相手である。
創造神の攻撃を待っていては危険だと判断した竜馬は、咄嗟(とっさ)にエルに命じて、最強のバトルアーマー体型になった。
間を置かずに、上空に向かって飛翔し、創造神に向かって、レーザーガンとミサイルを放った。
先手の攻撃は確実に標的を捉えたが、予想どうり創造主は攻撃を歯牙にも掛けていなかった。
そればかりか、突然、天高くから、巨大な「金属」の塊りが竜馬を襲ってきた。
この時、創造神が使った力は、「神の杖:かみのつえ」と呼ばれるものだった。

この攻撃は竜馬の生きた宇宙戦争の時代、人間が対悪魔用に開発した対地攻撃用武器、運動エネルギー弾と奇(き:偶然にも)しくも類似していた。
これは宇宙空間から棒状金属を発射することで、落下速度が加わり、地上では核爆弾に匹敵する破壊力があったとされるものである。

創造神が放った神の杖は、塵に等しい人間に、「確実死」を与えた筈だった。
だが、竜馬には未だ与えられた使命のやり残しがあるのか、超弩級の神攻撃であっても、「死という永遠の安らぎを」彼に与えることは出来なかった。

竜馬は咄嗟に、能力(ちから)を限界突破MAX×2条状態にし、闘気の障壁を拡大、エル本体を防御、そして、オリハルコンの盾で身を守り、辛うじて直撃による損害を防いだ。
だが、衝撃により機体に大きなダメージを受け、錐揉(きりも)み状態で落下することになった。
竜馬は攻撃の衝撃で、意識が飛び落下したが、「さつき」からの叫ぶような声で意識を戻された。
このまま落下すれば機体に受けるダメージは自動修復が出来ないまでに大破しただろう。

『竜馬、あなたはこんなところで死んでもいいの?そうじゃないでしょう・・・※自分を信じなさい。起きるのよ!』と言う甲高く、きつい、「さつき」の声が聞えた。

何故か?「自分を信じる」という言葉が頭の中で、木霊(こだま)し何度も響いた。
そして、竜馬がエルの機体とともに地面に激突し、終わりかと思われた寸前だった・・・思いも依らない事が起こった。

突然、エル本体の目が赤く光り、光が本体を包み白銀色のボディが真っ赤に色を変えたのである。
そして、地面に激突する寸前に、あり得ない動きで衝突を回避したのだ。
それはバトルアーマー体型が新たに進化した瞬間だった。
竜馬に起きた意識変革がエルとのシンクロ(synchronize:同期)を極限まで高め、変化をもたらしたのだ。
この変化は恐らく神の食べ物である「桃の実」を食べたことによるものであろう。
エルの背中からは見事な二枚の羽根が生えた。
ボデイの色は赤と黒のコントラスト(contrast:対比)が絶妙であり、美しくもあったが、見る人によっては、「赤い竜」を連想するものだった。
いや、赤い竜、そのものだったかも知れない。
創造神から更に一撃で死に至るであろう攻撃が幾つも繰り出されるが、赤い竜となった竜馬は、その攻撃を難なく避けて、「大いなる意思」である創造神に挑んだ。

竜馬は手に神を倒せる武器として、イメージし作り出した大きな妖刀「村正」、竜の太刀と呼ぶに相応しい得物を握り、激烈な剣戟を振るった。
「竜の太刀」には恐らく、神の論理により苦しめられた数多(あまた)の人間の思いが込められていたに違いない。
創造神の体に太刀が届いた時、多くの人間の苦しむ人面顔が現れ、そして、消えたことが、その事を物語っていた。
竜馬の打撃により、創造神だった者は塵となり霧散した。
決して力が及ばないと思っていたが、見事に創造神を倒したのだ。

だが、死神娘が言うのには創造神は「大いなる意思」であり、この世界がある限り消滅することはあり得ないという事だった。
神の力を「桃の実」を食べたことにより、神の力を、その身に宿した竜馬と「さつき」は創造神にとっては、決して生かしては置けない存在である。
必ずや近いうちに、再び命を取りに来るであろうことが、容易に想像できた。

創造神だったものが塵となり散った後、閉鎖空間は平安京の町並みに戻った。
だが、晴明ひとりが、想像を絶する突然の出来事にショックを受けて、立ち直ることが出来ないで、今も、うずくまって、震えていた。
無理もない突然の命の危機に加えて、可愛い「さつき」や死神少女がいる前で、失禁という男として恥ずべき失態をしたのだから・・・。
彼の心に癒すことが出来ないトラウマ(精神的ショック)を、この出来事は残したかも知れない。
「さつき」は晴明が余りにも可哀想なので、魔法で眠りに誘い、そして、眠りを夢現(ゆめうつつ)へと導き、催眠術で、先程の出来事が無かった様にしてあげた。
もちろん失禁して濡れている袴(はかま)を魔法で乾かして、奇麗することも忘れ無かったのは言うまでもない。
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