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【ヴァンパイア:吸血鬼の愛】
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深い森の奥、今は使われなくなった古い城、壁や塀などに、つる性落葉植物の蔦(つた)が巻き付いて、この城の時間(とき)の経過を感じさせていた。
秋に紅葉した葉が初冬を向かえ、一枚、また一枚と落葉していく。
落ちた蔦の葉は今度は北風に吹かれて、舞い上がり風に乗って飛んでいった。
再び新しい旅に出るのだろうか?
不思議な能力を持っている「さつき」ならば風の妖精が、落ち葉に乗って遊んでいる様子を見ることが出来たかも知れない。
そんな神秘あふれる古城の奥の広間で、その魔物は椅子に座り、何か考えを巡らせていた。
魔眼で、下僕である人狼と人間の男の戦い、圧倒的な人間の強さを目のあたりにして、忘れていた胸の高鳴りを思い出していた。
この胸の高鳴りは人間だった頃、妖精のような奇麗な娘と恋に落ちた時に、感じた胸の高鳴り(どきどき)とは、また違うものだった。
魔物になって数百年、長い年月が過ぎ、今は通り過ぎた日々だったが、その頃の出来事が脳裏に浮かぶ。
若い頃、ある女性に恋をして、この娘と結ばれるなら命を捧げてもいいと思ったほど、真剣に恋をした。
ようやく恋が成就しようとした時、愛した女性から『ごめんなさい、私は「吸血鬼」なの、あなたと一緒になれないわ』と、思わぬ言葉が返って来た。
命がけで愛した女(ひと)が、吸血鬼だと知った後、俺は恋を取るか、別れを取るか、悩んで悩み抜いて、結論を出した。
この城の城主の地位も捨てて、自らも吸血鬼となる道を選んだ。
今、思えば愛を求め、吸血鬼になった、あの日から、呪われていたのかも知れない。
この体に乾きを覚える時、心ならずも人間の若い女の血を吸って生きて来た。
そんな自分が嫌で、自ら死を選ぼうとした時もあった。
だが、不老不死になった体が死ぬことを許さなかった。
いや死んだのかも知れない、死んで体が再び、再生したのだ。
妻となった娘も吸血鬼の持つ宿命に疲れていた様だった。
ある時、妻から『旦那様、もう生きることに疲れたわ、私を殺して』と懇願された。
妻も自分と同じ苦しみに耐えてきたのだと思うと願いを叶えてあげたいと思った。
だから、悪魔に自らの魂を売り、眷属になることで、見返りに悪魔の力を借り、妻を不老不死の呪縛(じゅばく)から解き放って貰った。
そして、苦しまないように自らの手で、愛する妻の最後の願いを叶えてあげた。
人は何時か朽ち果てるが、吸血鬼は老いることのない体を持っている。
人の一番奇麗な時は花の様に短いのに対し、吸血鬼は永遠に衰えることがない美貌を持っている。
だから、人間には無い長い時間(とき)を掛けて、愛を深めることができた。
人間から吸血鬼になって、失う物も多かったが、妻を愛したことに対して、決して後悔はしていない。
その娘、妻は、もう今はいない・・・。
妻の死後、自らも死を求めて、呪縛から解き放ってくれるように悪魔に懇願したが、そんな苦しむ姿が、彼ら悪魔の美酒だったのだ。
悪魔は眷属になった我の話を聞きはしたが、笑い飛ばし、叶えてくれることはなかった。
今、感じている警笛にも似た危険を知らせる、この胸の高鳴りはいったい何なんだ。
もしかしたら、あの人間の男が、今度は、この俺の呪縛を解いてくれるのかも・・・久々に魔の能力が、研ぎ澄まされて来るのが感じられた。
悪魔から魔物の世界を築くため、障害になる人間の男の抹殺指令が来ていた。
それが魔眼で見た男に違いない。
人間の男が仮に自らが望む死を与えてくれるとしても、だからと言って手加減するつもりはなかった。
最後になるかも知れないから、最強の吸血鬼として戦いを楽しみたかった。
そして、恥じない戦いをすることを心に誓った。
その頃、人狼が痛みを堪(こら)えながらも、仲間の狼と共に主のいる古城に向かっていた。
その後をエルが偵察用bug(バグ:虫)を放ち、人狼の後をつけさせていた。
人狼は気配を感じさせないバグが後を付けているなど、露とも知らなかったが、結果的に根城としている場所を知られて、大失態をしたことになる。
だが、そのことで、城の主からお咎(とが)めは無いだろう。
それは人狼は知らなかったが、主、自ら竜馬たちが、来るのを楽しみにしていたのだから・・・『ネヴィル様』ただ今、戻りました。
人狼は冷汗を流しながら、仲間の狼たちとともに片膝をついて、主に城に戻ったことを告げた。
主である吸血鬼の恐ろしさを何より知っていたから、自然に冷汗が出た。
『人狼か、その姿から察するに、手強い相手に出会ったようだな?』主(吸血鬼)は全てを見通している様な目で、人狼を見据えた。
『ははー、申し訳ありません、可愛い娘がいたのですが、しくじりました』人狼は主から若くて可愛い娘を攫(さら)ってくる仕事を与えられていた。
その見返りとして、この森で狼族が生活することを許されていたのだ。
人狼は過去の経験から、仕事に失敗した時は素直に詫びることにしていた。
前の狼族の長(おさ)は、この吸血鬼に逆らったばかりに殺されたのを人狼は知っていたからだ。
『そうか、もうよい、満月になれば、その腕も元通り戻るだろうが、今日はもう休むがよい』予想外の労(ねぎら)いの言葉が吸血鬼から返ってきた。
人狼は主が何時もと様子が違うことに気づいたが、言葉に出来なかった。
主の魔眼からは何時もより強い妖気が感じられ、見据えられることが、恐ろしかったからだ。
『ははー』と平伏しながら答えて、姿を消した。
この後、この古城で吸血鬼との竜馬たちの熾烈な戦いが始まった。
秋に紅葉した葉が初冬を向かえ、一枚、また一枚と落葉していく。
落ちた蔦の葉は今度は北風に吹かれて、舞い上がり風に乗って飛んでいった。
再び新しい旅に出るのだろうか?
不思議な能力を持っている「さつき」ならば風の妖精が、落ち葉に乗って遊んでいる様子を見ることが出来たかも知れない。
そんな神秘あふれる古城の奥の広間で、その魔物は椅子に座り、何か考えを巡らせていた。
魔眼で、下僕である人狼と人間の男の戦い、圧倒的な人間の強さを目のあたりにして、忘れていた胸の高鳴りを思い出していた。
この胸の高鳴りは人間だった頃、妖精のような奇麗な娘と恋に落ちた時に、感じた胸の高鳴り(どきどき)とは、また違うものだった。
魔物になって数百年、長い年月が過ぎ、今は通り過ぎた日々だったが、その頃の出来事が脳裏に浮かぶ。
若い頃、ある女性に恋をして、この娘と結ばれるなら命を捧げてもいいと思ったほど、真剣に恋をした。
ようやく恋が成就しようとした時、愛した女性から『ごめんなさい、私は「吸血鬼」なの、あなたと一緒になれないわ』と、思わぬ言葉が返って来た。
命がけで愛した女(ひと)が、吸血鬼だと知った後、俺は恋を取るか、別れを取るか、悩んで悩み抜いて、結論を出した。
この城の城主の地位も捨てて、自らも吸血鬼となる道を選んだ。
今、思えば愛を求め、吸血鬼になった、あの日から、呪われていたのかも知れない。
この体に乾きを覚える時、心ならずも人間の若い女の血を吸って生きて来た。
そんな自分が嫌で、自ら死を選ぼうとした時もあった。
だが、不老不死になった体が死ぬことを許さなかった。
いや死んだのかも知れない、死んで体が再び、再生したのだ。
妻となった娘も吸血鬼の持つ宿命に疲れていた様だった。
ある時、妻から『旦那様、もう生きることに疲れたわ、私を殺して』と懇願された。
妻も自分と同じ苦しみに耐えてきたのだと思うと願いを叶えてあげたいと思った。
だから、悪魔に自らの魂を売り、眷属になることで、見返りに悪魔の力を借り、妻を不老不死の呪縛(じゅばく)から解き放って貰った。
そして、苦しまないように自らの手で、愛する妻の最後の願いを叶えてあげた。
人は何時か朽ち果てるが、吸血鬼は老いることのない体を持っている。
人の一番奇麗な時は花の様に短いのに対し、吸血鬼は永遠に衰えることがない美貌を持っている。
だから、人間には無い長い時間(とき)を掛けて、愛を深めることができた。
人間から吸血鬼になって、失う物も多かったが、妻を愛したことに対して、決して後悔はしていない。
その娘、妻は、もう今はいない・・・。
妻の死後、自らも死を求めて、呪縛から解き放ってくれるように悪魔に懇願したが、そんな苦しむ姿が、彼ら悪魔の美酒だったのだ。
悪魔は眷属になった我の話を聞きはしたが、笑い飛ばし、叶えてくれることはなかった。
今、感じている警笛にも似た危険を知らせる、この胸の高鳴りはいったい何なんだ。
もしかしたら、あの人間の男が、今度は、この俺の呪縛を解いてくれるのかも・・・久々に魔の能力が、研ぎ澄まされて来るのが感じられた。
悪魔から魔物の世界を築くため、障害になる人間の男の抹殺指令が来ていた。
それが魔眼で見た男に違いない。
人間の男が仮に自らが望む死を与えてくれるとしても、だからと言って手加減するつもりはなかった。
最後になるかも知れないから、最強の吸血鬼として戦いを楽しみたかった。
そして、恥じない戦いをすることを心に誓った。
その頃、人狼が痛みを堪(こら)えながらも、仲間の狼と共に主のいる古城に向かっていた。
その後をエルが偵察用bug(バグ:虫)を放ち、人狼の後をつけさせていた。
人狼は気配を感じさせないバグが後を付けているなど、露とも知らなかったが、結果的に根城としている場所を知られて、大失態をしたことになる。
だが、そのことで、城の主からお咎(とが)めは無いだろう。
それは人狼は知らなかったが、主、自ら竜馬たちが、来るのを楽しみにしていたのだから・・・『ネヴィル様』ただ今、戻りました。
人狼は冷汗を流しながら、仲間の狼たちとともに片膝をついて、主に城に戻ったことを告げた。
主である吸血鬼の恐ろしさを何より知っていたから、自然に冷汗が出た。
『人狼か、その姿から察するに、手強い相手に出会ったようだな?』主(吸血鬼)は全てを見通している様な目で、人狼を見据えた。
『ははー、申し訳ありません、可愛い娘がいたのですが、しくじりました』人狼は主から若くて可愛い娘を攫(さら)ってくる仕事を与えられていた。
その見返りとして、この森で狼族が生活することを許されていたのだ。
人狼は過去の経験から、仕事に失敗した時は素直に詫びることにしていた。
前の狼族の長(おさ)は、この吸血鬼に逆らったばかりに殺されたのを人狼は知っていたからだ。
『そうか、もうよい、満月になれば、その腕も元通り戻るだろうが、今日はもう休むがよい』予想外の労(ねぎら)いの言葉が吸血鬼から返ってきた。
人狼は主が何時もと様子が違うことに気づいたが、言葉に出来なかった。
主の魔眼からは何時もより強い妖気が感じられ、見据えられることが、恐ろしかったからだ。
『ははー』と平伏しながら答えて、姿を消した。
この後、この古城で吸血鬼との竜馬たちの熾烈な戦いが始まった。
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