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【都市伝説:地獄行最終列車】
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斯(か)くして死神の介入により地獄軍との衝突は避けられた。
タイガーのクラッシュ攻撃を、まともに体で受けた鬼女は絶命まではしなくても全身打撲で動けない筈だったが、鬼女は曲りなりにも地獄の一軍を任された将軍、戦闘で鍛えあげた強靭な肉体を持っていた事もあり黒鬼が活を入れると直ぐに息を吹き返し支えられながらもユニコーンに載せられて地獄に帰った。
凛太朗の幻想銃によりズタボロにされた赤や青鬼達、何処の世界でもこれら雑兵の扱いはぞんざいである。
女将軍とは違い黒鬼配下の重装騎兵達は下級兵士の地鬼達を物を扱う様に火車の荷台に放り投げ回収した。そして、火車は来た時と同じ様に賑やかに太鼓を鳴らしながら薄暗い空を駆け地獄に帰って行った。
黒鬼達が立ち去るのを見届けた後、大鎌を持った死神が、あろう事かこちらに近付いて来たので、つい後退りして身構えてしまった。
「あら、逃げなくてもいいじゃない・・・そうか、仕事モードのままだったのか・・・うっかりしていたわ・・・凛太朗、僕だよ!僕・・・」
凛太朗は黒鬼と対峙し威厳のある話ぶりをした黒ローブ髑髏男の死神が、この地に立ち寄った自分達の理由(わけ)を黒鬼に説明しているのを聞いて、最初はカトレーヌから事情を聞いた傘下の死神なのかと思っていたのだが、それは思い違いだった。
死神は大鎌を持ち上げ少し傾ける動作をした。すると驚いた事に不気味な髑髏顔の死神から何時も見慣れているゴスロリファッションに身を包み、手には大鎌の代わりに日傘を持った可愛いカトレーヌの姿に戻ったのだ。
彼女が言うには大鎌を持ち髑髏顔に黒ローブ姿、男性の声音でしゃべる時は戦闘時や仕事モードの時なのだとか・・・。
理由は「僕の様に可愛い少女より、こわ~いオジサンの方が貫録があるし強く見えるでしょう」との事だった。
「凛太朗、あの黒鬼(こっき)将軍の率いる部隊は地獄の最強軍で、嘗て、地獄軍は異次元空間、時間の最果ての地で起きた天を二分した魔族との大規模な戦いで、天界軍に味方し魔族相手に戦い名を轟かした最強の猛者達なの・・・黒鬼は少し鬼に似つかわしくない優しい性格をしているけど先の大戦では魔将軍と戦い大将首を上げた程の剛の者よ!
本気になれば僕と互角、いや、それ以上かも知れない。
今の凛太朗では例え女神の加護を使っても恐らくは十中八九は倒されていたでしょうね・・・。
僕達は数多の異次元に行き魔族の行状をジャッジして邪悪な者を刈るのが仕事、だから何時、何処で、どんな相手と戦う事になるか分からないから、特に日頃から強敵と戦う事になった時の為にレベル上げと特殊なスキルを身に付けるなどは忘れてはならない。それに大事なのはレベル差の大きい敵に出会った時のため対処の仕方も考えて置く必要がある。
死と隣り合わせの世界で生き残るために、心構えも必要かな・・・異次元には上級悪魔や霊長類最強のドラゴンの類なんかもいるから油断禁物、凛太朗、君には、どうでもいい、エロタイガーと違い僕は期待しているから頑張ってね!」
「姉貴、それはないっすよ・・・」
「うふふ・・・黙れ、このタイガー、見ていたわよ!
ここで起きた大乱闘は元をただせば、あんたが投網に掛かったからでしょう・・・運が悪いにしても程があるわ・・・。
ところで、そのエルフの娘は誰なの・・・」
「あの、それって、私の事?ですか・・」
「そうよ、ここに、あなたの他にエルフは何処にいるの・・・」
「まあ、怖い」
「カトレーヌ、この子は腐界までの道案内に頼んだんだ」
「そうなの、凛太朗が頼んだのならしょうがないか、まあ、それはいいわ、僕が近くにいないと、エロタイガーが、また、何をしでかすか、少し、心配な気がするけど・・・これから閻魔大王がいる閻魔宮に来年の死者数を打ち合わせする仕事があるから彼女に案内して貰えばいいわ・・・それに、その子、精霊を使役できる力を持っているから以外に役に立つかもね・・・」
「カトレーヌ、その年の死者数は、閻魔大王とやらと死神が決めるのか・・・」
「いいえ、最終の決定は冥界の女王、ペルセポネー様が決める事だけど、閻魔は地獄に沢山の死者が押し寄せ、地獄の魂を浄化する仕事が機能不全に陥らない様に事前に情報を天界に提供しているの・・・僕の仕事は死神マスターだから閻魔に聞き取り調査して総量を決め天界に上申するのが役割、人間界で言えば官僚みたいなものかな・・・。
凛太朗、自分を失ったドンビ達が沢山徘徊している、この灰色に染まった世界が、何のためにあるのかって思わなかった?
この地は戦争や天変地異で亡くなった人達が一度に地獄に行かない様に調整する役割を担っている。
勿論、生前、人のために尽くした人や神に仕えた聖職者は天国に、逆に欲のまま人生を送った人や極悪人は直接地獄に行くけどね」
凛太朗は、ここに降りてから頭に浮かんでいた、何故、この世界があるのかという疑問に、カトレーヌが答えてくれた気がした。
「本当は地獄の最下層にある汚そうな腐界なんかに行きたくないんだけど、やはり心配、後から追い掛け事にする。
僕は狙った魂のある場所に瞬時に行けるから、きっと直ぐ会える筈だよ。じゃ、行ってくるね・・・」
やれやれ、困ったものだ。
まさか、小競り合いなら未だしも、地獄軍まで引き寄せて大騒ぎになろうとは・・・凛太朗とエロタイガーのコンビは抗魔官という枠に収まらない、何か別のものを持っていると見るべきか・・・死神娘は次元空間を移動しながら、そんな事を考えるのだった。
凛太朗達三人は腐界に向かう前に廃墟の町を物見遊山を兼ねて、出来るだけ情報を集める事にした。
エルフ娘ことチェリーの話では目的場所はギガ王国と呼ばれるところの近くにあって、街外れに腐界に通じる洞窟があると旅人から聞いたという。
その情報だけでは到底行き着く事が出来ない曖昧情報だったからだ。
この世界にも旅人がいるのか?その人は生前、各地を旅した好奇心のある人だったんだろうか?と歩きながら考えを巡らせていたが、凛太朗は、そこで思う事があって立ち止まった。
太陽も星も見えない、この灰色の空と靄に覆われた世界で、東西南北を、その人はどうやって知って旅をしたのだろうか?と疑問が浮かんだからである。だが、その答えは直ぐに見つかった。
この廃墟と思われた町に驚いたことに霧がある薄暗い日に走っている筈がない場所に列車の音を聞いたり、実際に見たりしたという都市伝説に登場する幽霊列車の発着駅があったのだ。
多分、チェリーに腐界が別の世界に繋がっていると教えた旅人は、この列車を使ったんじゃないかと凛太朗は元刑事らしく推理した。
駅舎は古ぼけた建物だったが、駅員らしき制服を着た人が立っていた。
その人の外見は何処にでもいる駅員だったが、顔は影、いや、ぽっかり空いた虚空だった。
凛太朗は腰が抜ける思いがしたが、流石に、ここまで来ると、この世界で、まさかの幽霊列車にお目に掛かったこともあり、思い返せば到底説明が付かない事ばかりだから常識で考えては駄目だと開き直る事が出来た。
その駅員は「乗車するなら早くしなさい、地獄行の列車は間もなく発車するよ!」と優しく教えてくれた。
凛太朗は人外の者にも良い人がいるんだと何気に思った。
タイガーのクラッシュ攻撃を、まともに体で受けた鬼女は絶命まではしなくても全身打撲で動けない筈だったが、鬼女は曲りなりにも地獄の一軍を任された将軍、戦闘で鍛えあげた強靭な肉体を持っていた事もあり黒鬼が活を入れると直ぐに息を吹き返し支えられながらもユニコーンに載せられて地獄に帰った。
凛太朗の幻想銃によりズタボロにされた赤や青鬼達、何処の世界でもこれら雑兵の扱いはぞんざいである。
女将軍とは違い黒鬼配下の重装騎兵達は下級兵士の地鬼達を物を扱う様に火車の荷台に放り投げ回収した。そして、火車は来た時と同じ様に賑やかに太鼓を鳴らしながら薄暗い空を駆け地獄に帰って行った。
黒鬼達が立ち去るのを見届けた後、大鎌を持った死神が、あろう事かこちらに近付いて来たので、つい後退りして身構えてしまった。
「あら、逃げなくてもいいじゃない・・・そうか、仕事モードのままだったのか・・・うっかりしていたわ・・・凛太朗、僕だよ!僕・・・」
凛太朗は黒鬼と対峙し威厳のある話ぶりをした黒ローブ髑髏男の死神が、この地に立ち寄った自分達の理由(わけ)を黒鬼に説明しているのを聞いて、最初はカトレーヌから事情を聞いた傘下の死神なのかと思っていたのだが、それは思い違いだった。
死神は大鎌を持ち上げ少し傾ける動作をした。すると驚いた事に不気味な髑髏顔の死神から何時も見慣れているゴスロリファッションに身を包み、手には大鎌の代わりに日傘を持った可愛いカトレーヌの姿に戻ったのだ。
彼女が言うには大鎌を持ち髑髏顔に黒ローブ姿、男性の声音でしゃべる時は戦闘時や仕事モードの時なのだとか・・・。
理由は「僕の様に可愛い少女より、こわ~いオジサンの方が貫録があるし強く見えるでしょう」との事だった。
「凛太朗、あの黒鬼(こっき)将軍の率いる部隊は地獄の最強軍で、嘗て、地獄軍は異次元空間、時間の最果ての地で起きた天を二分した魔族との大規模な戦いで、天界軍に味方し魔族相手に戦い名を轟かした最強の猛者達なの・・・黒鬼は少し鬼に似つかわしくない優しい性格をしているけど先の大戦では魔将軍と戦い大将首を上げた程の剛の者よ!
本気になれば僕と互角、いや、それ以上かも知れない。
今の凛太朗では例え女神の加護を使っても恐らくは十中八九は倒されていたでしょうね・・・。
僕達は数多の異次元に行き魔族の行状をジャッジして邪悪な者を刈るのが仕事、だから何時、何処で、どんな相手と戦う事になるか分からないから、特に日頃から強敵と戦う事になった時の為にレベル上げと特殊なスキルを身に付けるなどは忘れてはならない。それに大事なのはレベル差の大きい敵に出会った時のため対処の仕方も考えて置く必要がある。
死と隣り合わせの世界で生き残るために、心構えも必要かな・・・異次元には上級悪魔や霊長類最強のドラゴンの類なんかもいるから油断禁物、凛太朗、君には、どうでもいい、エロタイガーと違い僕は期待しているから頑張ってね!」
「姉貴、それはないっすよ・・・」
「うふふ・・・黙れ、このタイガー、見ていたわよ!
ここで起きた大乱闘は元をただせば、あんたが投網に掛かったからでしょう・・・運が悪いにしても程があるわ・・・。
ところで、そのエルフの娘は誰なの・・・」
「あの、それって、私の事?ですか・・」
「そうよ、ここに、あなたの他にエルフは何処にいるの・・・」
「まあ、怖い」
「カトレーヌ、この子は腐界までの道案内に頼んだんだ」
「そうなの、凛太朗が頼んだのならしょうがないか、まあ、それはいいわ、僕が近くにいないと、エロタイガーが、また、何をしでかすか、少し、心配な気がするけど・・・これから閻魔大王がいる閻魔宮に来年の死者数を打ち合わせする仕事があるから彼女に案内して貰えばいいわ・・・それに、その子、精霊を使役できる力を持っているから以外に役に立つかもね・・・」
「カトレーヌ、その年の死者数は、閻魔大王とやらと死神が決めるのか・・・」
「いいえ、最終の決定は冥界の女王、ペルセポネー様が決める事だけど、閻魔は地獄に沢山の死者が押し寄せ、地獄の魂を浄化する仕事が機能不全に陥らない様に事前に情報を天界に提供しているの・・・僕の仕事は死神マスターだから閻魔に聞き取り調査して総量を決め天界に上申するのが役割、人間界で言えば官僚みたいなものかな・・・。
凛太朗、自分を失ったドンビ達が沢山徘徊している、この灰色に染まった世界が、何のためにあるのかって思わなかった?
この地は戦争や天変地異で亡くなった人達が一度に地獄に行かない様に調整する役割を担っている。
勿論、生前、人のために尽くした人や神に仕えた聖職者は天国に、逆に欲のまま人生を送った人や極悪人は直接地獄に行くけどね」
凛太朗は、ここに降りてから頭に浮かんでいた、何故、この世界があるのかという疑問に、カトレーヌが答えてくれた気がした。
「本当は地獄の最下層にある汚そうな腐界なんかに行きたくないんだけど、やはり心配、後から追い掛け事にする。
僕は狙った魂のある場所に瞬時に行けるから、きっと直ぐ会える筈だよ。じゃ、行ってくるね・・・」
やれやれ、困ったものだ。
まさか、小競り合いなら未だしも、地獄軍まで引き寄せて大騒ぎになろうとは・・・凛太朗とエロタイガーのコンビは抗魔官という枠に収まらない、何か別のものを持っていると見るべきか・・・死神娘は次元空間を移動しながら、そんな事を考えるのだった。
凛太朗達三人は腐界に向かう前に廃墟の町を物見遊山を兼ねて、出来るだけ情報を集める事にした。
エルフ娘ことチェリーの話では目的場所はギガ王国と呼ばれるところの近くにあって、街外れに腐界に通じる洞窟があると旅人から聞いたという。
その情報だけでは到底行き着く事が出来ない曖昧情報だったからだ。
この世界にも旅人がいるのか?その人は生前、各地を旅した好奇心のある人だったんだろうか?と歩きながら考えを巡らせていたが、凛太朗は、そこで思う事があって立ち止まった。
太陽も星も見えない、この灰色の空と靄に覆われた世界で、東西南北を、その人はどうやって知って旅をしたのだろうか?と疑問が浮かんだからである。だが、その答えは直ぐに見つかった。
この廃墟と思われた町に驚いたことに霧がある薄暗い日に走っている筈がない場所に列車の音を聞いたり、実際に見たりしたという都市伝説に登場する幽霊列車の発着駅があったのだ。
多分、チェリーに腐界が別の世界に繋がっていると教えた旅人は、この列車を使ったんじゃないかと凛太朗は元刑事らしく推理した。
駅舎は古ぼけた建物だったが、駅員らしき制服を着た人が立っていた。
その人の外見は何処にでもいる駅員だったが、顔は影、いや、ぽっかり空いた虚空だった。
凛太朗は腰が抜ける思いがしたが、流石に、ここまで来ると、この世界で、まさかの幽霊列車にお目に掛かったこともあり、思い返せば到底説明が付かない事ばかりだから常識で考えては駄目だと開き直る事が出来た。
その駅員は「乗車するなら早くしなさい、地獄行の列車は間もなく発車するよ!」と優しく教えてくれた。
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