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同性婚を誰が望んでいるのか?

2.私の周りの当事者はどう考えているか。後編。

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私がリアルで知る男性当事者たちは、ほとんど政治に興味を持っていない。なので、同性婚について明確な考えを持つ人も少なかった。

一方、ツイッターで知り合った性的少数者たちは、最初から、政治の話をするために知り合ったのだ。

「スペース」を通じ、同性婚について彼らの意見も聴いてみた。

およそ共通した意見は、「同性婚があったらいいな」とは思うものの、「何かデメリットがないか」を考えれば簡単に賛成できない――というものだった。

レズビアンの一人はこう言った。

「私にとって、同性愛者であることと、子供を持つことっていうのは、両立しないんですよね。たとえ子供を持ったとしても、どちらかは必ず他人なんです。成長した子供たちは、『この人たちって誰?』って思うようになると思うんですよ。」

そして、こうも言った。

「例えば『家制度』の問題――女性を家庭の従属物にする人々の意識――であるだとか、女性の人権問題であるだとか、同性婚よりも先に議論すべき問題は山積みだと思うんですね。ましてや、少子化が進んでる今、産めよ増やせよと国は煽ってるわけじゃないですか。女性と家庭の問題を解決できないまま同性婚を通したら、レズビアンにまで子供を産めと言いだすのでは――という不安はあります。」

同性婚よりも優先して解決すべき問題があるのではないかとは、私も常に思っている。このノンフィクションでしばしば精神障碍者の問題を取り上げるのは、「LGBT」という人目を惹きやすい問題から、少しでも関心を持ってもらえればと思うためだ。

また、別のスペースでは、二人のレズビアンの意見も聴いた。

うち、一人はこう言った。

「私も、同性婚は欲しいとは思います。たとえ公正証書を作っても、遺産相続や医療の現場では二人の関係を説明しなければなりませんし、理解してくれるとも限りません。そういった人たちに対して、水戸黄門の印籠のように効果を発揮するのが婚姻なんです。けれども、越境性差トランスジェンダーが戸籍上の性別を変更するときの、未婚要件・未成年の子なし要件が撤廃される可能性などを考えると、今は思い留まらざるを得ません。」

公正証書は、公証人――法務大臣が任命した法律の専門家――に依頼して作る契約書のことだ。これにより、遺産相続や財産管理の問題はある程度は解決される。しかし、あくまでも二人を縛る契約であり、第三者まで縛ることは出来ない。たとえば、住居選びや医療の現場などで、二人をカップルであると他人が認めてくれるかどうかは分からない。

ましてや、この契約によって税制上の控除が発生するわけでもない。それどころか、公正証書を作るときは、三万円から八万円の手数料が発生する。

別のレズビアンはこう言った。

「世の中には、同性婚なんか必要なくて、養子縁組すればいいっていう人がいるじゃないですか。けれども、私が望むのはあくまでもパートナーとして認められることであって、親子や兄弟になることじゃないんです。」

そして、こうも言った。

「レズビアンカップルでよくあるのが、二人で一緒に家を買ってついの住まいにしたいっていう願いなんです。けれど、結婚がないと家を買うにも契約上の関係なんか大変でしょう。それに、もし相方に何かあったらと考えると、やっぱり必要だと思いますね。」

さらに別のスペースでは、恋人と同居中のゲイの意見も聴いた。

「同性婚はあったらいいなとは俺も思うよ。けれど、たとえば、ロリコンとゲイの区別ってどうやってつけるの? って思うわけ。ロリコンの男二人が、ゲイだって偽って結婚して、小さな女の子を養子にすることも出来るわけでしょ? そういったデメリットは全く議論されてないよね?」

また、その場にいた別のゲイはこう語った。

「結婚っていうのは、個人と個人の権利だけの話じゃないんですよ。やっぱり、社会制度ですんで、悪用などのリスクをきちっと考えていかなければならないと思います。例えば、同性婚を利用して怪しい目的で日本国籍を取る外国人が出てこないか――とか。異性結婚でも同じリスクはありますが、男と男、女と女という選択肢が出来るわけですから、一気に三倍になりますよ。」

さらには、「LGBTQ」の「Q」への懸念も語った。

「LGBTQの『Q』っていったら、変人クィアのことですね――複数性愛者とか小児性愛者とか動物性愛者とかもいるわけです。じゃあ、同性婚の次は、複数人や動物と結婚させろって声も出てくると思います。『そんなことはない』という人もいるでしょうけれど、海外の変人クィア連中がやっていることを考えれば楽観視できません。」

事実、欧米のゲイパレードなどでは、「変人クィア」を称する人々が暴れまわっている。彼らのパフォーマンスは年々逸脱してきた――複数人と結婚させろと叫んだり、子供の前でSMプレイを見せたり、陰茎の模型を身体中に貼り付けて公道を歩いたりするなど。

このようなことを彼が言ったのは、LGBT活動家への不信感が強いからだ。

「同性婚に便乗して、結婚制度を破壊しようって言ってる人もいますよね。活動家たちが本当にやりたいことは、結局のところ『社会を変える』ということなんですよ。だからこそ、何かデメリットがないかっていう議論はさせずに、パフォーマンスで『結婚式』を挙げたり、恋愛物語を売ったり、ひたすら『差別だ!』って叫んだりしてるんです。」

同性婚を機に「結婚」そのものを破壊しろと主張する者は実際にいる。

たとえば、ある大学の助教授を勤めるゲイ活動家がつぶやいた次のツイートは、性的少数者たちを唖然とさせた。

「同性婚、僕も応援する!
だから、その後、みんなで、婚姻制度、破壊しようね!
同性婚ができるようになったあかつきには、みんなで、婚姻制度の形骸化と、シングル単位の保障とを同時に目指して舵を切って行こうね!
ぜったい、ぜったい、約束だよ!!」

「僕も同性婚応援するから、兄弟同士で住みたい人、三人以上で結婚したい人、友達同士や、セックスは自由にしたいカップルも見捨てないでね!婚姻概念ガンガン広げて法制化しようね。
lgbtのイシューは同性婚だけじゃないし、同性婚が叶っても全てが解決するわけじゃないって、みんなに伝え続けようね!」

皮肉なことに、性的少数者の利益のために鬪っているはずの活動家が、同性婚に対する懸念を当事者に広めているのだ。

「ひな形がほしいですね」と彼は言った。「同性婚を認める前に、何か問題がないか試すような制度が――」
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