上 下
29 / 41
第1章 イリス大陸編

第27話 初のパーティ

しおりを挟む
「じゃあ、明日からよろしくな、ソータ」
「ああ、よろしくアレン」

 B級依頼「カーバンクルの宝石(青色)採取」の受注手続きを終えた不動颯太ふどうそうたと剣士のアレンたちは、ひとまず解散した。
 依頼は明日から取り掛かり、カーバンクルが生息する地域までの移動に約一日、捜索と討伐に二~三日、ギルド本部に帰るのに約一日という計画となった。
 不動颯太は明日からの遠征のために買い物などの準備に取り掛かかることにした。幸い、この都市は世界中から冒険者が集うため、冒険者の需要に合わせた品揃えの店舗が多い。

「これって……」

 不動颯太は立ち寄った雑貨屋で、望遠鏡が販売されているのを発見し

「すみません、これ手に取って見てもいいですか?」
「うん? ああ、大丈夫ですよ」

 不動颯太は雑貨屋の店主に断って望遠鏡を手に取る。どうやら用途不明の筒として販売されていたようで、部望遠鏡は雑に置かれて埃を被っていた。望遠鏡は不動颯太が持っているものよりも大きく、折り畳み式のもので、収縮によるピント調整もできる。レンズは割れてしまったのか、取り外されていた。

「これってどこで作られたんですか?」
「ああ、それね。実は私もよく分からないんですよ。というのも、昔とある冒険者から買い取ったんですけど、何に使う道具なのかが全く分からくて――」
「これ、予約購入とかできますか」
「予約? 別に構いませんけど」
「ありがとうございます。では、次のB級昇格試験が終わったら絶対、必ず買いにくるので、誰にも買われないようによろしくお願いします」
「そんな念を押されなくてもそんな筒、誰も欲しがらないと思いますけど……」

 不動颯太は壊れた望遠鏡の購入予約を取り、店を出る。
 買い物を終えた不動颯太は、都市内の冒険者専用の宿泊施設に泊った。

 翌日、約束の場所で再会した不動颯太とアレンパーティは都市を東に向けて出発した。カーバンクルは、都市から東に一日ほど歩いた森林に生息している。

「そういや、ソータって凄いよな。そんなに小さいのに、もうC級冒険者だなんて。なんか俺、年下に凄い負けたような気がしてならないよ」
「よく間違えられるんだけど、俺こう見えても15歳なんだよね……」

 草原の中の街道を歩きながら、アレンが不動颯太に話しかけた。アレンは不動颯太を何歳も年下の子供だと思っての発言だが、それは不動颯太にとってはコンプレックスであり、不動颯太は少し落ち込み気味に返した。

「ええ!? 俺のいっこ下!? 俺はてっきり、11か12歳くらいだと思ってた」
「えー15歳? こんなかわいいのに?」

 アレンは驚き、戦士のフレイディースは不動颯太の頭をわしゃわしゃと撫でた。不動颯太は明らかに不機嫌な顔をした。
 アレン達の人種では、不動颯太の身長が十二歳の平均身長に近いのだ。

「ちょっと、二人とも。ソータに失礼だよ……ごめんね、ソータ。この二人お調子者なんだ」

 草の聖法使いヴィンダストルは申し訳なさそうな様子を見せた。

「ごめんごめん。いやあ、それでも凄いよ。15歳でC級冒険者なんて。俺達でも、C級になったのは16歳、ついこの前なんだぜ? 昇格に三年もかかったし……ソータは何歳から冒険者やってるんだい?」 
「俺が冒険者になったのは、ほんの数週間前だけど」
「「数週間前!?」」

 アレン達三人は驚いた。
 それもそのはず。C級冒険者はレベル16~20相当と言われている。つまり、スキルなどを考慮しなければ、C級まで成り上がるには通常なら十数年はかかるということになる。アレンたちですら信じられないほどのスピード出世であるのに、数週間という短さは異例中の異例なのである。

「ま、まさか、ギルマスに賄賂とか送った?」
「そんなことしてないよ! ちゃんと組手して実力を認めてもらったんだよ」

 C級までは各ギルドのマスターや代理の権限で昇格することができる。もちろん非常に稀ではあるが、中にはギルマスに賄賂を贈ることで昇格させてもらう者もいるのだ。

「なんだか凹むな~」
「これでも俺達、地元じゃ神童って言われてたんだけどなあ。フレイディースなんて、S級冒険者の娘なんだぜ?」

 フレイディースとアレンは露骨に凹んだ様子を見せた。ヴィンダストルは黙っていたが、内心は凹んでいた。

「ま、まあ俺はたまたま強い魔物を倒せたから、レベルがめっちゃ上がっただけで……」
「なんだよそれ~」

 不動颯太とアレン達はこのように、歩きながら楽しそうに会話していたが、召喚士のエクスプラだけは会話に参加せず、ただ風景を眺めながらアレン達についてくるだけであった。

「そういえば、エクスプラは冒険者になったのはいつごろなの?」
「そうだよ、エクスプラのこと聞かせてくれよ」

 無口なエクスプラを気にかけて、不動颯太とアレンは彼女に話しかけた。

「……冒険者になったのは、かなり前」
「かなり前? 何年前かは覚えてないの?」
「…………」

 エクスプラは無言でうなずいた。

「国は? どこの国のギルドから来たの? 俺はメイム王国」
「へえ、メイム王国か、随分遠くから来たんだな。俺達三人はクエンダム王国、プレトリウム公国のすぐ隣の国からだ」
「私は……ヒミツ」
「「…………」」

 エクスプラが無口すぎて会話が続かなかった。

「あ、あれ、村が見えたきたぞ。あそこでひと休みしよう!」

 途中で経由する村が見えてきたので、不動颯太たちはひとまず休憩することにした。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

天職が『盗賊』という理由で追放されました。盗みを極めし男はやがて魔王と呼ばれる

こたろう文庫
ファンタジー
王国の勇者召喚により異世界に連れてこられた中学生30人。 その中の1人である石川真央の天職は『盗賊』だった。 盗賊は処刑だという理不尽な王国の法により、真央は追放という名目で凶悪な魔物が棲まう樹海へと転移させられてしまう。 そこで出会った真っ黒なスライム。 真央が使える唯一のスキルである『盗む』を使って盗んだのはまさかの・・・

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

処理中です...