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二人の出立、二人の再会
しおりを挟むヴェティヴィアが検索を終えてフレイミィに他の仲間の居場所を説明する。
「桜はここから遠い森のスリジエの屋敷に、エルは…分からなかった。」
「分からないってどういうこと?」
「エルの体はまあ治療で見た事があるけど、彼女、人間じゃないの」
「え?」
突拍子もない話だ。かなりの間連れ添っていた仲間が人間じゃなかったなんて。
それを彼女は居場所の話の最初に突然言い出したのだ。
「彼女はホムンクルス。誰かが人間を模して作った精巧な人形だったの。」
彼女の話ではエルメスフィールはホムンクルスなので国籍を持っていない。だから検索しても出てこなかったのだという。
「このことは?」
「私とお姉様だけしか知らなかったわ。」
隠し事をされていた、ということにフレイミィは腹を立て無かった。
自分が人間でないなんて、あまりほいほい言えることでもないだろう。そもそもいう必要があまりない。
それを本人が言い出すまでネイルアやヴェティヴィアがばらさなかったのは至極当然のことだったとフレイミィは理解していた。
「ならエルは後回しで。エアのいるアネモスの森の村の方がスリジエより近いから彼から先に訪ねよう。」
「嬉しそうね。」
「どういう意味?」
「べっつに~?」
ヴェティヴィアはあまり人と関わることがなく、人の感情表現に詳しくなかったが、エアの名前を言う時のフレイミィの些細な表情の変化は見逃さなかった。
本当ならこの会話だけで喧嘩(殺し合い)に発展するところだが、今日の2人は再会の雰囲気に多少飲まれているようだ。
「じゃあ支度するから少し待ってて。」
会話を手短に切って部屋をゴソゴソし始めたヴェティヴィアは小さな肩掛けカバンを持ってすぐに戻ってきた。
「……荷物これだけ?」
「まあ、かさばるものは異空間にしまってるからこんなものね。」
二人は、というよりネイルアと共に行動していた全員がネイルアに異空間魔法の手ほどきを受けていた。なんでも
「これは必須魔法よ。これを覚えてないなら付いてこれないと思って。」だそうだ。
実際、ものを仕舞ったりとかなり便利な魔法ではある。
彼女が言うに、この魔法の真価はただの荷物入れではないらしいが。
もっともそう簡単な魔法でもない。
エアやフレイミィは習得に随分手間取ってしまった過去がある。
「じゃあ行きましょう!」
「ちょっと待って!宮医が勝手に旅に出ていいの?」
「大丈夫よ。軽くこの城全員の記憶を改竄して私は長期出張中ってことにしているから。」
恐ろしい医者だ。
「じゃあレッツゴー!」
- - - - - - - - -
エア=ウェントス 【アネモスの森】
桜崎 桜(おうさき さくら) 【スリジエの屋敷】
エルメスフィール=ジリウェーザ 【?】
- - - - - - - - -
ヴェティヴィアはフレイミィと並んで王都を歩きながらメモ帳を見て考えていた。
(分かっていることから検索ついでに色々調べてみたけど……あまりいい噂じゃないわね。)
ヴェティヴィアが城のデータベースで調べたところ、
アネモスの森では、通りがかった国の荷台などが襲われる事件が多発していた時期があるらしい。
スリジエの屋敷の主であるこの世界ではちょっと有名な魔術の一族、桜崎の人間が行方不明になる事件が続発した時期もあったとか。
(桜崎は確か魔術の大家、王崎の分家だったわね。)
まあそれがどうということではないが。
だがこれらの事件はもしかしたら自分達の仲間に関係しているのでは、とヴェティヴィアは考えていた。
「ねえ、このクレープのイチゴってここの特産品なんだって!」
ヴェティヴィアがフレイミィの能天気さに頭を痛くするのは以前からそうだ。
「そんなこと知ってるわよ。あと私の分も残しておきなさいよ。」
「えー、あんたの分?別にいいよー。」
ヴェティヴィアは珍しく素直なフレイミィに眉を潜めながらクレープに手を伸ばすとその手ごとフレイミィにがっちりホールドされた。
「で、何をくれるの?」
「このっ!汚いわね!」
そう言いあう二人は既に王都の通りで相当目立っていた。
その頃……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~???海の海底~
「あら?珍しいお客様ね。」
「幼馴染みにいきなり攻撃する奴があるか」
「ごめんって。本物なら大丈夫だと思って。」
「エリオ、あなたがそういう発言をすると人魚が馬鹿な種族だと思われるわよ」
「信頼してるんだってば。今も……昔も。」
「…………」
「話があるんでしょ。何でも言って。」
「……なら単刀直入に言う。実は……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
王都を出て乗り物を乗り継いで五時間。二人は深く暗い森、アネモスの森に足を踏み入れていた。
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