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院長は15歳

家族になろう

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「今日からここの院長ファザーとして赴任したマーキュリーです」

 生気のない目をした孤児たちを薄汚れた食堂に集めて僕は挨拶をした。

「見ての通り若輩ですが、君たちのとして共に生きていきたいと思う」

 食堂に集めた孤児は上は14才から下は幼子まで、総勢32人にも及んだ。
 この孤児院の規模的に15人もいればキャパを超える。
 建物だってボロボロだ。

「あたしと大して年なんて変わんないじゃん。あんたに何が出来るっての?」

 一番年嵩の少女が冷めた口調で吐き捨てた。

「一緒に生きる。ただそれだけだ」

「はぁ? それってなんの意味かあるの?」

「そうだよ」「なんだよ」「ふざけんな」

 周囲の子たちもその少女に同調するかのように声を上げる。

 それを聞いて僕は少し嬉しかった。

-良かった。まだ、諦めていない。この子たちは生きようとしている!

「僕は1人では生きられない。でも、君たちとなら生きていける!」

 偽善と笑いたければ笑えばいい。

 たった15才の僕なんかが彼らの命を背負うのは無謀だなんてことは、僕が一番良く知っている。
 だけど、 僕がここにいる意味はきっとある。

 それを知るのは、きっとずっと後のことだ。

 今を生きる。

 ただそれだけが、難しいのだから。

 だからって、諦めていい理由にはならない。

 温かいご飯。
 暖かい寝床。

 そんな誰もが当たり前に享受する幸せ。それが、僕らを生かしてくれる。

「先ずは、食べよう。そして、寝よう。そうすればほら、1日生きた! そうしていつか夢を見るんだ! 明日の!」

 僕は無理矢理、笑顔を作った。ここの現状を知れば知るほど涙が零れそうになったから。彼らが泣いていないのに、僕が泣くのは違う。と、知っていたから。

 子どもたちは、僕の声の思わぬ大きさにポカンとしている。

 まぁ、熱が入ってしまったのは勘弁して欲しい。

「君の名は?」

 僕は気を取り直して、一番に反応を返してくれた少女に名を尋ねた。

「サリー」
「サリー。とても良い名前だ!」

 ただ名を褒められただけのサリーが、顔を、耳まで真っ赤にして俯いた。

 それ程までに、彼らは追い詰められていたのだろう。喪ったものの大きさに、不安や絶望といった感情に。

 しかし、彼女のそんな様子を見て、小さな子たちが、本の少し笑顔を見せた。

 まだ、心から笑えていないぎこちなさは拭えないけど、これならきっと大丈夫。

 過去は変えられないけど、未来は描ける。

 偽りだって何だって良い。僕らはここから家族になれる。

 そう思えた瞬間だった。
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