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シャーロット

どうしてこんなことに 5

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「……あっ」

 効果が十分に回り始めた証拠だろう。遮ろうとするのに上手く身体を動かせないウィルフリッドを抑え込む。

「ま、待ってください。姫様何を、なさるつもりですか」

 ボタンを外す行為を止めようと、シャーロットの手首に手が掛かる。けれど力が入らず、うまく掴めないようだ。その大きな手から感じる高すぎる体温に、不安が募る。受け答えはしっかり振る舞っているけれど、もしかしたら見立てよりも効いてしまっているのかもしれない。我慢強いのも考えものである。

「しぃ。熱を発散させるだけよ、少し黙っていて」

 身体を殆ど動かせなくなっているのに、気力で抵抗し続けるので、結局馬乗りになって体の可動部分を押さえながらの強硬手段だ。説得が上手くいかなくて、非常に不本意である。

 ランプの薄明かりでは、ボタンを外すのも一苦労だった。ウィルフリッドの身体は、下敷きにしている脚も、シャツ越しに触れた胸も、どこも硬くて熱いのだけれど、下肢の布地を窮屈そうに押し上げる部分はより体温が高い。
 シャーロットは苦戦しつつようやくシャツを脱がし終えた。露わになった上半身は贅肉などなく、鎧のような筋肉が過不足なく付いている。ウィルフリッドはかなり着痩せして見えるのだと、初めて知った。己と同じ鍛錬をこなすのに、随分と違うのだと純粋に驚く。

 下半身も、全く違うのだろうか。主としての使命感よりも、むくむくと湧き始めた好奇心が上回ってきていることから目を反らしつつ、トラウザーズのボタンと格闘する。

「ダメです、本当に。発散なら一人で出来ます」
「私を押し返す力もないくせに、無茶いわない……ひゃあっ」

 ウィルフリッドの静止も虚しく、窮屈だった場所から解き放たれた雄は、ばね仕掛けのように跳ね上がり、覗き込んでいたシャーロットの頬を打つ。
 初めて目にする雄芯に、シャーロットは目を丸くした。

「え、え。こんな大きいものを、ぎちぎちに収めてて大丈夫だったのかしら。あ、必要な時だけ大きくなるのよね。教わったわ。いえでもこれ、大きすぎない?」

 思わず口走ったシャーロットの所感に、ウィルフリッドは答えてくれなかった。
 船室に沈黙が広がる。


 聞くと見るとは大違い、とはよく言ったものだ。

 シャーロットはちょっとだけ、閨の授業をおこなった母国の教師を恨んだ。簡単なことのように語っていたが、こんな長大なもの、女性に収まる筈がない。絶対。これでは、子作りはある種の拷問ではないか。

 ほんの少しの不機嫌と好奇心を乗せて、頬を打った目の前の雄の先端を、人差し指でつつく。つるりとした先端の、ぷくりと先走りの雫を乗せた部分に爪を当てるようにして。

「ううっ!」
「きゃあ」
 雄芯がびくびくと震え、噴水の様に勢いよく、ゼリー状のものが何度も吐き出された。どうやら、ウィルフリッドが達したらしい。顔や服に散った精液を見て、シャーロットは慌てて旅行鞄から布を取りだした。

 一度達して意識の混濁しているウィルフリッドは、荒い呼吸を繰り返している。いよいよ熱に飲まれて、瞼を開けることも容易ではなくなってきたらしい。それでも剛直は衰えることなく立ち上がり続けている。ずっしりとした幹に浮いた血管も生々しく脈打ち、雄は余韻の様に時折びくりと震える。

「申し訳、ありません。こんな……私は……」

 恥辱と屈辱に耐え謝罪を口にするウィルフリッドは、目のまわりを赤く染め、必死に身体を起こそうとしていた。
 その姿と部屋に広がった独特の匂いに、シャーロットは無意識にこくりと唾を飲み込んだ。
 媚薬程度、効かないはずなのに。まるで授業で受けたような症状。体温が上がり、自分が高揚しているのを感じる。
 それと同時に、何故か胸の奥と胎の奥が、きゅうっと絞られるように疼く。

 そんな初めて尽くしの戸惑いを振り払って、シャーロットは艶然と微笑んだ。ほんの少しでも、王女の威厳を保てていますように、と祈りながら。

「大丈夫。手を使って発散させるだけよ。何の後ろ暗いこともありません。これは、大切な臣下を救うための治療行為です。まさかこんなところで人生を棒に振ると言うの? 剣聖との橋渡しだって、陛下への謁見だってまだなのに。……まだまだこれからも貴方が必要なの。ウィルフリッド――私の騎士」

「――――仰せのままに、我が姫、シャーロット様」

 十年仕えた姫君に真っ直ぐ見つめて命令され、ウィルフリッドの方が折れた。そもそも媚薬のせいで普段の常識が曖昧に揺らいでいた。その上、暴発とはいえ、既に醜態を晒している。

 潤んだ瞳で名を呼ばれ、シャーロットはこくりと頷き、ウィルフリッド自身にもう一度手を伸ばした。
 吐き出された物を塗り広げるようにして滑りを良くし、ぎこちないながらも根元から先端まで射精を促すように扱く。雄芯は喜ぶようにビクビクと震えた。

 空が白みウィルフリッドの熱が収まるまで、シャーロットは手を溢れる白で汚し、実技における器用さと負けん気の強さを、この方面でも遺憾なく発揮してしまった。

 翌日、正気に戻ったウィルフリッドに土下座をされながら、むしろ土下座をしなければならないのは私の方では? と思いつつ、慕う叔母との縁組をセッティングしようとしていた過去の自分を殴りたくなるという、何だか分からない己の思考に首を傾げながら、船程をこなした。

 沢山の土産物と共に、シャーロットがディアドーレの第二王子夫妻の寝室に突撃するのは、これより一週間後のことになる。


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