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シャーロット

蜜月だから仕方ない 3

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 国王にとって邪魔だった石ころを適当に排除し、その首を手土産にウィルフリッドはシャーロットの護衛騎士であり続けることを望んだ。

「なんだ、そんなことか」
 二人きりで謁見した王は、膝をつくウィルフリッドに面白そうに返した。

「よろしいのですか」

「いいも何も。シャーロットは討伐の褒美に、お前との結婚を許可しろと迫ってきたんだぞ。兄に代わって武力を担う対価に、生涯の片腕と伴侶にお前を寄越せとな」

「伴侶?」
 思わず聞き返してしまい、目の合った王に笑われた。

「あいつはまだ求婚していなかったのか。――忘れておけ」

 結果から言って、求婚の言葉はなかった。
 気が付いたら式は一ヵ月後に予定されていたし、あっという間に流れるように、二人は夫婦になった。

 リースデンは貴族間の婚姻は殆どが政略結婚で、愛人を持つことが当然とされている。
 けれど、厳格な一夫一妻制を布くディアドーレに馴染み、叔母アリアを敬愛するシャーロットは、リースデン貴族のあり方を嫌悪している。
 剣聖となって帰国した途端に近づいてくる愛人志望の青年貴族たちに、嫌気がさしたのだろう。それで、ウィルフリッドが伴侶に選ばれた。
 願ってもない。
 伴侶となってしまえば、シャーロットはウィルフリッドだけのもの。

 おそらく、仕え続けた騎士としての腕を買われて、伴侶に選ばれたのだ。年齢だってもう四十歳を超えた。若く美しいシャーロットが望むのは、騎士としての手腕と知識。
 それならば今まで通り、いや今まで以上に。密やかに敵を排除し、彼女の盾となればいい。

 それだけで良いというのに。

 恋に狂った男は蜜月を理由に、初夜から毎晩気をやるくらい彼女を抱き潰している。
 

 ◆◆◆


 熱く弾けそうな雄芯を蜜口に押し当てる。
 片方の足を跨ぐようにし、もう片方の足を肩にかけ、そのまま最奥まで一気に挿入した。
 一度熱を受け入れており、再度丹念に愛撫を施された膣内は、抵抗なくウィルフリッドを受け入れる。

「あ、あっ、なに……あたってる、これだめぇっ……!」
 側位の一種だが、この体位は初めてだ。ちょうど上手くかみ合い、斜めの好いところを擦りながら、奥の奥まで先端が届く。鮮烈な快感に、受け入れる時は誘い込むようだった膣襞が、途端に強く締め付けてくる。引き込むような動きは、挿れただけでシャーロットが軽く達した合図。

「……はあ。軽くイっちゃいましたね」
「ひゃっ、あん! ま、まって。ちょっとだけ待っ……ああっ、んっ!」

 軽く達した状態で更に追い込むと、シャーロットはもっと高みに上って、乱れる。
 ピンと伸びた片足を更に開かせ、抽挿を始める。埋めた幹に絡みつく肉襞に抵抗するように、くびれの先を膣内に残しつつゆっくりと引いては、奥を穿つように一気に打ち付けることを繰り返した。結合部からは抜き挿しを助けるように、とろとろと愛液が溢れ、二人の下肢を濡らす。

 ぐちゅぐちゅと卑猥な音が溢れる。それすらもシャーロットを刺激するらしい。さらに滑りが良くなり、極上の締め付けは達する前の痙攣を始めた。
 身体を前傾し、シャーロットの細腰を手で支え、真上から突き込むように抽挿を激しく繰り返す。

「おく、……おくが、コツコツってえ! だめ、こわれちゃうよぉ!」
「大丈夫、壊れません。もっともっと、気持ちよくなるだけですよ」

 優しく囁きながら、一段と抽挿を激しくする。幹の付け根が熱い。這い上る射精感を、奥歯を噛んでぐっとこらえる。腰を強く打ち付けながら、下生えの陰で震えてぴょこんと立ち上がる可愛らしい花芯を、身体の間に挟んで圧し潰す。抽挿の度に擦られて、内と外からの刺激にシャーロットが先に音を上げた。

「らめぇ……もう、もう……あ、ああ」
「イってください」
「やあ! ひとりでいっちゃうのやだっ……! うぃる、うぃるぅ!」

 ひとりだけで追い込もうとすると、その快楽の深さがまだまだ怖いのか、ウィルフリッドを求めて、むずがる。
 いやいやと首を振りたて、一生懸命震える両手を伸ばし、共に果てよと願うのだ。

「ああ、可愛いなぁ」
 そうなったシャーロットに縋りつかれるとき、ウィルフリッドは多幸感に満たされる。
 肩にかけていた片足を下ろしてやり、正常位で両足を抱え直す。
 絶頂間際に震える両脚は、すぐさまウィルフリッドの腰に絡んだ。両手の指を絡ませながら、抽挿を再開すると、程なくシャーロットは極みに達した。

「ぃっ……! あ、あっ、あああぁー」

 嬌声が悲鳴のように糸を引く。達した途端に内襞が搾り取るように奥へと蠕動し、ウィルフリッドの雄芯を締め上げる。
 その締め付けに逆らい数度力強く突き上げて、仕上げに先端を最奥にぐりりと押し付け、子宮口を圧し潰しながら、熱い子種を残らず注ぎ込んだ。

「……ロッテ、今度は一緒にイけましたね。上手ですよ」
 達したシャーロットを、ウィルフリッドはかつて剣の稽古をつけていた時のように、褒める。柔らかい髪をすいて、涙を浮かべた瞳の目尻に口づけて、零れる前のそれを吸い取る。

 叔母からの愛が分散したと感じていた幼い頃のシャーロットは、ウィルフリッドの下手な褒め言葉を喜んだ。それは今でも変わらない。

 今では己よりも剣の腕は冴え渡り、剣聖姫と呼ばれ、人々の畏敬を集める王女だというのに。
 褒められた時のはにかむ笑顔は、少女の時のまま。
 外に向けられる完璧な王女としての微笑みとは違う顔。リースデンから出られない今はもう、ウィルフリッドだけが知る顔。

「愛しています、ロッテ。貴女だけを」
 毎晩そう、機会を逃すまいと閨の雰囲気に紛れて告げれば。

「ん……。うれしい、ウィル。……だいすき」
 達したまま追い込みをかけられ、なかなか悦楽の波から戻れないシャーロットが、へにゃりと笑って返してくれる。

 真っ赤に染まった頬と蕩けた紺碧の瞳で、両腕をウィルフリッドの首に絡めて、口づけを強請る。
 そうしてまた、終わらない饗宴がはじまってしまう。

 互いにまだ、閨以外で愛の言葉を口にできない。
 主従の関係が長すぎて、夫婦になった形が強引すぎて、明るい場所で口にする勇気が持てない。

 でも近いうち。口にできる予感がする。
 この毎晩の愛の交感は、それ程までに深くて赤裸々だ。欲を吐き出すだけの行為じゃない。互いの中身を素手で確かめ合う儀式のよう。

 彼女は逃げないと確信が持てたなら。穢れた手に、手を伸ばして捕まえてくれていると思えたならば。
 ウィルフリッドの世界はまた、姿を変えてしまうのだろう。

 シャーロットに力技で破壊され、否応なく日々変化していく世界は、思ったよりもずっと心地がいい。


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