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第9章

確認調査

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 種族毎の契約に相応しいと思われる家族などのリストアップとチェックが終わった。専属と兼業の契約の挑戦時に幻獣の種類が増えていた事もあるが、今度は幻獣士個人だけの契約ではないため、幻獣の能力によって必要な環境などの条件が変わって来る。どの幻獣がどの様な能力や習性を持っているのかをしっかりと把握しておかないと、幻獣士個人の相性が良くても受け入れが出来ない事態も起こりうる。精霊王や幻獣王達に許可を得て、レナードと幻獣士幹部数人で幻獣の種類と能力、必要な環境などを確認するために保護されている空間へ訪れることになった。
 毒のある物を食べて体皮に濃縮した毒を纏い身を守る種族数種
 迷いの森にしか生息しない昆虫類を主食とし、それを濃縮する種族数種
 迷いの森にしか育たない植物を食べ濃縮する種族数種
 薬草以外の薬の原料になる物を食べて材料を作る種族
 はアルバとレナードが前回訪問した際に聞き出した。そしてその際には幼体しか居なかったはずで、その親らしい個体以外に若い成体まで居て驚いた。
《アルバ、元々居た数より種類も数も多くないか?》
《うん、でもリオには言ってなかったけど、幻覚を見せる幻鳥の雛とか直接リオの役に立ちそうな種族以外は隠れてもらっていて教えなかったけど、それでも多いと思うよ》
《あの時隠れていた種族が居たのか。しかもそれより多いという事は?》
《きっとここに居た子が別の場所にいる親達に興奮して話した結果だと思う》
《だからここに居た子の話しを聞いて興味を持った若い個体が増えたのか》
《ボクの知らない種族も居たよ》
 この場に居た他の幻獣士幹部一同はこの機会を作って本気で良かったと思った。ギルド長レナードからの報告より種族が多く、未確認種族さえ居たからだ。急遽空いている穴を借りて協議をした。
「先ずは手分けして能力や食事、環境をそれぞれの相棒達と協力して聞き出そう。その上で現在対応可能な種族のリストを作成しよう。対応出来ない種族は環境など用意出来そうか再検討で」
「自分の相棒と意思疎通が出来ない種族があった場合は?」
「ピュードルに通訳してもらうので、私に知らせてくれ」
「応援を頼んだ方が良いのでは?」
 悩んでいるとピュードルから念話が届く。
《ソノ事デ提案ガ》
 闇の大精霊が移転の協力をしてくれるらしい。ピュードルと手紙を足輪に付けたクレドと共に幻獣士ギルドへ送り、ギルド幹部2人を連れて来てもらった。
既に聞いていた種族は概ね対応可能で、数が多い種族が受け入れ先によっては制限されることさえ幻獣側が納得してくれたら大丈夫だと判断した。どうしても一緒に行きたいと言う幻鳥は条件付きでなら可能ではとなった。
 前回は条件が特殊なため連れて行けなかった種族は想定した最大数までは何とか対応可能だろう。問題なのは前回は全く居なかった能力を持つ種族や、受け入れ依頼先としてリストには入れてはいるものの既に業種として成功しており、受けないだろうとされていた養蜂業者や薬草園などだ。
「どうする?毒花や魔草などから蜜や花粉を集めてくれるのは正直なところ能力的には欲しいが、移動式巣箱で対応出来る数ではないだろう?」
「今まで人の手でしか受粉出来なかった品種を受粉してくれるのもありがたいはずだが」
「それ以前に餌が栽培出来ない、魔の森限定の植物だと幻獣士以外の者でもCランクの冒険者くらいの身体能力がないとついていけないだろう」
それらの素材は最低限 Cランク冒険者パーティ2組はいるとされる採取依頼で、幻獣士がいれば魔の森内は良くても、そこまでに行くのに攻撃出来なくても身体強化や防御出来るくらいの能力は必要なのだ。
「冒険者パーティで討伐はそこそこ出来るが、採取依頼のが良いという者達がいれば、幻獣側が移動式巣箱で良ければ可能ではないか」
 副ギルド長で冒険者ギルドを兼業しているアーウィンが呟く。他にもいくつか問題点のある種族がいるが、ここにいる5人だけで判断出来ないし、時間もあまりかけられない。何故ならすぐ近くで今か今かと連れ出されるのを待っている幻獣達がいるからだ。
《ピュードル、あの部屋を管理しているか、交渉権の有る者を連れて来て欲しいんだが》
《シバシ待テ》

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