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第7章

接触

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 レナードは警戒させない様に従魔全員を後ろで座らせ待機させる。そして自身もその場で胡座をかいて座ってジャコウ鸚鵡の様子を観察する。
 しばらくそのまま見つめ合いが続き、ソルが飽きて不貞寝をした頃にようやくジャコウ鸚鵡が枝先の方へ移動してはっきりした姿を見せた。聡いルナが不貞寝のふりをし、他の子達も寄り添う様に集まって寛ぐ姿を見せた。
 それを見てかレナードが立ち上がれば届く位置まで飛んで降りて来たジャコウ鸚鵡に話しかけた。
 《君はここで何をしているの?》
 《ハグレテワナノマホウジンデトバサレタノ》
 本当の事を話されては困るので闇の大精霊が記憶を操作して植え付けたものだ。
 《この森は知らないのかな?》
 《ダンジョンニイタ》
 《そこで家族とはぐれたんだね》
 《ソウ》
 《どうしたい?》
 《ダンジョンハイヤダ》
 《家族に会いたくはないの?》
 《アイタイケドイジワルサレル》
 《家族に?》
 《ホカノコタチ》
 《そうか。でも1人は寂しいだろう?》
 《…サビシイ》
 《じゃあ私と一緒に新しい場所に行かないか?》
 《…イイノ?》
 《もちろんだよ。後ろにいる鷹以外は皆、仲間達のところに居られなかった子達ばかりだから大丈夫だよ》
 《ボクトイッショ?》
 《厳密には違うけど、仲間と同じじゃなくて寂しい思いをした子ばかりだよ》
 《ジャア、イッショ!》
 そう言うと突然レナードめがけて飛んで来たので慌てて左腕を前に出し受け止める。
 《お腹は空いていないかい?》
 《スイテル》
 レナードは用意していた魔性果実をマジックバックから取り出した。小鳥タイプ用の小粒の物を携帯用の鳥類用の餌入れに入れておいたものだ。嘴の前に持っていくと食べ始めた。
 ただ他の子達に比べると、お腹が空いていると言っていた割には遊びがある気がする。
 《この果実は好きではないのかな?》
 《カワニガテ》
 用意したのは小型の野鳥や魔鳥が好きなベリー系だった。実は人間はジャコウ鸚鵡の好物が果実だと思っていて、そのため仕掛け罠も果実を付けていた。本来の生息地は果実の花に豊富な蜜が多い種類だったが、移転先では蜜を主食とする先住の生物が多くて、特定の種類である薬の材料である果実類以外ではあまり食べられなかったため、甘味の強い完熟すると皮が柔らかく剥きやすい果肉を主食にしていた。
 それと人間達が草食系鳥類はベリー系果実が好きだという偏見と、熟した果実を食べた後にベリー系の木に移ってから毛繕いをしている時に捕獲される例が多かった事も誤認させた要因でもあった。
 《じゃあ今持っている果実をちょっとずつ出すね、好きな物だけ食べれば良いからね》
《ワカッタ》
 その結果として手持ちのものでは完熟して柔らかくなった旬の身の多い果物が気に入った様だ。
 同じ空を飛ぶ鳥類系ということもあり、クレドが積極的に接近しようとしている姿が目の端に映る。小型の鷹であるクレドと鸚鵡にしては小型の2羽はそれほど一緒に居ても大きさ的には違和感はない様な気がする。鸚鵡も自分よりも遥かに大きく強そうな四足歩行の生き物よりは、多少大きく種族が違えど同じ鳥類系のクレドのが馴染めるだろう。
 とりあえず目的であるジャコウ鸚鵡を保護出来たので、落ち着ける場所へ移動して休憩するために移動することにした。

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